国王様と私

黒装束達の首領が魔族で、さらに逃げてしまった事もあり他の黒装束達は戦意を無くして大人しく捕縛された。


クロード王子も信頼していた首領が、実は魔族で自分を利用しようとしていた事実に愕然とし項垂れ、不正をしていた他の貴族と共に連れて行かれる。


私は慌ててクロード王子の元に行き、怪我をしている腕に治癒魔法を掛けて傷を治した。




「クロード王子・・・」


「・・・すまなかった」




クロード王子はそう私に言い残し会場から出ていった。




あんな騒ぎだったのに、怪我人は多数出たが奇跡的に死者は出なかったらしい。この国の兵は結構優秀な様だ。


私は怪我をした人の治癒に周りながら当事者だったので色々と事情を聞かれ、ジークフリード様達は事態の後始末に奔走して暫く忙しい日々が続いた。






その間にクロード王子の処罰が決まり、処刑は免れたが王子の身分を剥奪され下級貴族となり辺境の地の屋敷で監視されながら暮らす事となった。


クロード王子の母親は不正には関わっていなかったのだが、責任を感じて側室を辞し息子と一緒に屋敷に行くことになっている。


そして不正をしていた他の貴族達は皆身分を剥奪され家財を差し押さえられる事となった。


クロード王子の離宮で働いていた人達は、それぞれ新しい仕え先に行くか家に戻るかに別れた。


ちなみに大変お世話になったアンナさんは、私がジークフリード様に頼み込んでジークフリード様の侍女にしてもらえる事になっている。


私は当事者である為事態が落ち着くまで帰れず城の一室に住まわせて貰っているので、その間の世話役をアンナさんが買って出てくれて今はまた私のお世話をしてくれている。


アンナさんは舞踏会での事件を知って私の無事を泣いて喜んでくれた。


そして、アンナさんが用意してくれたドレスの二つの仕掛けによって凄く助かったとお礼を言ったら、本当にあの短剣を使ったのかと微妙な顔をされてしまった。






漸く事態が落ち着きそろそろ店に戻ろうかと思っていた矢先に、私は国王様に呼ばれる事に。






────国王の私室。




私は何故謁見の間でも会議室でも無く国王様の私室に招かれているんだろう・・・。


そもそもあの事件についてはもう既に全部担当の人に話してあるし、その担当から国王様に話は行ってるはずだろうから、わざわざ私から聞く必要は無いと思うんだけど・・・。




目の前に座っているのは威厳溢れるシグルド国王様と優しい微笑みを浮かべるセーラ王妃様。


そして私の隣に何故か座っている困惑気味のジークフリード様。


その様子からジークフリード様も何故一緒に呼ばれたのか分からない様だ。




「まずサラ嬢、今回の事件での活躍感謝しておる。だが我が息子の事で大変迷惑を掛けてしまった。国王としても父親としても申し訳無いと思っている。すまなかった」


「あ、いえ・・・そんなに気にしていませんので大丈夫です」


「だがしかし・・・」




さすがに国王様に謝って貰うのは気が引けるから。




「それにあの舞踏会場からクロード様が去る時に、直接謝ってもらってますのでそれで私は全部許してます」


「そうかそなたがそう申すのなら・・・ありがとう」




そう言って、国王様は金色の瞳を細めて微笑んでくれた。




・・・やっぱり二人の父親だ。笑うと目がそっくりだ。




ジークフリード様は金色の瞳が父親譲りで、蒼色の髪は母親譲りなのが親子で揃うとよく分かる。




「して話は変わるが、あの事件の日にこの目で見てもまだ信じられない思いなのだが、サラ嬢そなたのその力は一体?」


「・・・あ~努力の結晶?」


「何故疑問系なのだ?」


「剣は本当に努力して得たものなのですが、まあちょっと魔法で能力を補っていますけど、魔法は・・・元々魔力が強かったのもあり独学で勉強したらあんな魔法が使える様になったとしか・・・」


「全て独学で!?どこかに師事したわけでも無く?・・・まあ、だからあんな不思議な魔法や威力の凄い魔法が使えるのか・・・ふむ・・・これはやはり・・・」




なんか国王様一人でブツブツ言いながら自分の世界に入ってしまったよ・・・。




私は困惑して隣のセーラ王妃様を見た。


王妃様は私に微笑み返し、そして自分の息子を見て爆弾発言をする。




「ジーク、貴方このサラさんが好きなの?」


「なっ!は、母上何を!?」


「だって貴方、最近このサラさんのお店に頻繁に通ってるそうね?」


「・・・・」


「今まで全く女性に興味の無かった貴方が、好きな女性が出来てくれてわたくしとても嬉しいのよ?」




顔を赤くしたジークフリード様は王妃様に何も言い返せないでいる。




しかし王妃様、一体どこから私が店を経営している情報を?




「そう言えばサラさん、あの舞踏会の時の貴女だいぶ気品と教養をお持ちの様にお見受けしたわ。・・・そう、まるでどこかの貴族の例えば『公爵』ぐらいの令嬢の様に」


「!」




王妃様は含みのある微笑みを向けてきた。まるで何もかも知っているかの様に・・・。


私はジークフリード様が話したのかとチラリと横を見ると、私の視線の意味に気付き小さく首を横に降った。




ただの優しい王妃様だと思っていたけど・・・恐ろしい人!




もう私は引きつった笑みを浮かべるしか出来なかった。


そこに、自分の世界に篭っていた国王様が現実の世界に帰ってきた。お帰りなさい。




「よし!サラ嬢褒美の件なのだが・・・」


「そんな、褒美なんて頂かなくても結構ですよ」


「いや、そんな訳にはいかぬ!・・・そなたには、相応の身分と領土を与えようと思う」


「え?身分?領土?」


「そして我が息子、ジークフリードの婚約者の地位を与えよう」


「なっ!?」


「父上!?」


「あらとても良いことね」


「ジークよ、お前は今まで公務にばかり力を注ぎ女性に興味が無く、これと言った婚約者を持たなかったお前だったが、どうやらサラ嬢に気がある様だし良い話だと思うのだが?それに、サラ嬢の力を王家の血に取り入れるのも国家の為だと思ってな」


「・・・・」




ジークフリード様は黙って考えに更ける。


ジークフリード様がこの場に呼ばれていたのもこの為だった様だが・・・私はそんな事を気にしている場合では無かった。




いやいや、また王太子の婚約者とか無いから!身分や領土なんて欲しく無いから!




「国王様・・・さすがにその褒美は受け取れ・・・」




私が断りを入れようとしたら、いきなり隣から腰に手を回され引き寄せられジークフリード様に寄り添う形となる。


寄り添った事でジークフリード様の顔が近く、更に至近距離から私に微笑みかけられドキッと心臓が跳ねた。


近くに感じる温かい体温に私は何故かドキドキして頬が熱くなる。




「父上、俺はその話を受けようと思います」


「そうか」


「ちょっ!私は受け取るとは答えてません!」


「だが息子はその気だぞ?」


「そうよサラさん、貴女が息子と婚約し将来は結婚してくれればわたくしに娘が出来るからとても嬉しいわ」


「いやいや、そんな褒美欲しく無いです!褒美なんて要らないので私は帰ります!では、さようなら!」




私はまだドキドキする心臓を無視しジークフリード様から離れ、さっと席を立って勢いよく頭を下げ後ろも振り返らずに国王様の私室から飛び出していった。


急いで部屋に戻り部屋にいたアンナさんに事情を説明し、さっさとドレスからワンピースに着替えて帰り支度を済ませ、扉から出ようとして廊下に沢山の警備兵が居る事に気が付き部屋に戻った。


どうやら国王様の命で私を逃がさない様にしているもよう。


心配したアンナさんに大丈夫だと告げベランダに出る。


ここは3階で下を覗くと外にも沢山の兵達が・・・。


私はアンナさんに笑顔で手を降り、上を見て足に風の魔法を掛けて一気に城の屋根まで跳躍した。


この際スカートなのは気にしない事にする。


屋根に立ち、誰も私に気が付いていないのを確認して目を閉じ意識を集中して、誰も見付からない位置まで空高く飛び自分の店に帰るため飛び去ったのだった。






────ある闇に覆われた深い森にある城の一室。




部屋には椅子に座った男とその側に立つ男が居る。




「・・・様、また人間にやられた者が帰って来ました」


「・・・・」


「どう致しましょうか?」


「・・・仕方がない、そろそろ人間達に一度我らの力を見せ付けるか」


「御意」




椅子に座った男は立ち上り、黒いマント翻して側に居た男を引き連れ部屋から出ていった。

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