反撃開始
私は準備が整い部屋で迎えを待っていた。
コンコン
ノックの後部屋に入ってきた白い正装姿のクロード王子。
うっ、さすがに美形は正装が良く似合う。確かユリウス殿下の正装姿も私はちょっとときめいていたな~。
私は前世から正装姿が大好きで、乙女ゲームとかで正装姿が出ると一人悶えていた程なのだ。
一瞬見惚れそうになってしまった自分を叱咤し、クロード王子を真っ直ぐ見る。
クロード王子は私の姿を見て一瞬目を見開き、直ぐに目を細めて薄く笑った。
「美しいな」
「あ、ありがとうございます」
「その姿なら私の隣に立っていても問題無いだろう・・・どうだ?やはり私の妾にならないか?」
「結構です!」
「王太子になった暁には身分を与えて側室にしてやれるぞ?」
「お断りです!」
「ふん、欲の無い娘だ」
欲の問題では無いんだけど・・・。
「さてそろそろ時間だ、行くぞ」
「・・・はい」
私は差し出された手に自分の手を乗せ舞踏会場に向かった。
────舞踏会場入口前。
私はこれから起こる事にドキドキとしながら表面上平静を保っていた。これは長年体に染み付いてしまっていた淑女令嬢としての立ち振る舞いだ。
「・・・お前、やはりただの庶民では無いな?」
「・・・・」
「やはり答えないか、まあ、そのうち必ず答えてもらぞ」
その言葉を無視してクロード王子の腕を取る。
そして扉が開かれいよいよ舞踏会場へ。
会場内は沢山の人で華やいでいた。
ただ、クロード王子が見知らぬ女性と一緒に入って来た為、好奇の視線に晒されているがそれは無視。
「さてサラ、まずはパートナーと一緒に入場した者は、一度ダンスを踊らなければいけないのだがダンスは出来るか?」
「・・・一応」
「なら行くぞ」
そうして会場の中央に立ち、お互い一礼をしてダンスを踊る。
久し振りだったけど体は覚えており難なくダンスを踊る事が出来た。
「ダンスも問題無く出来るとは・・・ますますお前の正体に興味が沸いた」
「出来れば興味を無くして下さい」
そんな王子にうんざりしながら、私は目的の人を探していると向こうからこちらに向かって来た。
「サラ!」
「ジークフリード様・・・」
ヤバイ!黒い正装姿格好良すぎ!!いやいや落ち着け私・・・。
普段と違うジークフリード様の姿に一瞬見惚れてしまい、ドキドキとする心臓を落ち着かせ様と必死だった。頬も若干熱いのは気のせいだと思う様に。
ジークフリード様は私を見ると無事な姿に安心したような心配しているような複雑な表情をしている。
ジークフリード様の少し後ろを見ると、ユリウス殿下、ヒューイ、壁際にアラン様が心配そうに立っているのが見えた。
さすがに心配かけちゃったみたいで悪かったな~。
そう思い、ジークフリード様に近寄ろうとして後ろから腰に手を回され引かれる。
「これは兄上、折角の舞踏会なのにパートナーはいらっしゃらないのですか?」
「クロード・・・!」
クロード王子は余裕の笑みで私の腰に手を回して密着し、髪を一房すくってそこにキスを落とす。ジークフリード様は凄い形相でクロード王子を睨み付けている。
だ~離れてくれ!後ろの三人の表情も凄い怖いんだけど!
「兄上、私からの手紙は読んで頂けましたか?」
「・・・・」
「では、今ここで手紙のご返事をお聞かせ下さい」
「・・・っ!」
「良いのですか?貴方の大切な方がどうなっても?」
そう言って私を抱く力を強くする。
あまりの強さでちょっと痛くなり少し顔を歪めると、その表情を見たジークフリード様が焦り出す。
「わ、分かった!彼女に手を出すな!」
「要求を飲んでくださりありがとうございます。では父上達もいらっしゃる今ここで声高々に宣言して下さい」
「くっ・・・」
ジークフリード様は辛そうに暫く俯き、そして意を決した表情で顔を上げた。
「俺は!・・・」
「はーーーい!!皆さん注目!!」
「なっ?」
「はっ?」
私はクロード王子が油断して緩んだ腕から逃れ、声高々に叫んだ。
突然大きな声を出した私に王子達は勿論、会場中の視線を集める事が出来た。
「え~ここで、クロード王子の不正を告発します!」
「なに!?」
そう言ってドレスのレース部分を一ヶ所剥がし、中から複数の書類を取り出して高々と持ち上げた。
アンナさん良い仕事しました!バレませんでしたよ!
「何故それがここに!?」
私から書類を奪おうと必死に向かってくるクロード王子をひらりとかわし、私は書類の内容を読み上げる。
「え~クロード王子が次の王になった暁には、沢山の謝礼と相応の身分を約束するものとし、その変わりクロード王子の為にどんな事でもする契約です。そこには沢山の人達のサインと血判が押してあります!さらに、こちらの書類にはお互いに贈りあった賄賂の品書きと国庫から不正に抜き取った金額が書かれていて、最後にクロード王子の直筆のサインと血判が押されています!」
私の発言に辺りはざわめき騒然となる。
中には顔色が真っ青になりあたふたしている貴族達が居るので、多分この書類にサインした人達だろう。
「・・・クロード、どう言う事か説明して貰おうか?」
「・・・っ!父上」
今まで王座で成行きを見守っていたジークフリード様とクロード王子の父親、シグルド国王が険しい表情で後ろに兵を連れて近付いて来た。
私は持っていた書類を国王様に渡し、書類を読んだ国王様が近くの兵に何か言ってクロード王子と真っ青な顔をしている貴族達の元に兵を行かせる。
兵に取り囲まれたクロード王子はガックリと俯き、そして肩を震わせ始めた。
「・・・くっ、くくくふはははは」
突然笑いだしたクロード王子に周りの兵は驚きの表情になる。
「もう茶番は終わりだ!父上も兄上も殺してしまえば私が王になれるんだ!私の不正だと?そんな物この場に居た者全員殺してしまえば誰にも知られないで済む話だ!・・・やれ!」
クロード王子の合図と共に黒装束の男達が会場の至る所に現れた。
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