協力者

漸く部屋に戻り、騎士の服から部屋着用のドレスに着替えて長椅子に座りホッと息を吐く。そしてアンナさんが入れてくれた紅茶を飲みながらまったりとした時間を過ごしたのだった。






夕食も終わり食後のお茶を部屋で飲んでいた時、執務を終えたジークが部屋にやって来た。




「あ、ジークお疲れ様~」


「ありがとう」




ジークはそう笑顔で言って長椅子に座っていた私の隣に腰掛ける。するとジークの前の机にスッとアンナさんが紅茶の入ったカップを置いた。




「ジークフリード様。お疲れのようですしこちらのお茶を飲まれましたら、『すぐ』お部屋に戻られてお休みになられた方が良いと思われますよ?」


「アンナ気遣いありがとう。だけど俺は『全然疲れてない』から大丈夫だ」


「そうですか・・・」




あれ?お互い笑顔を見せているのになんだか目が笑ってないように見えるのは気のせいだろうか?




私が不思議に思い首を捻っていると、アンナさんから視線を外したジークが私を見てくる。アンナさんの方は唇を少し噛みながら側を離れていった。




「そう言えばサラ、今日魔法省と軍の訓練場で大活躍だったみたいだね」


「うっ!」


「執務をしていた時にルカから報告を受けたよ」


「・・・・」


「それにそれぞれ介抱に当たった者達から、人手が足りないと要請が来たんだ」


「・・・ごめん。ちょっとやり過ぎたかも」


「いや気にしなくて良いよ。むしろ回復したそれぞれの所から出来ればまた是非来て欲しいと要望が来た程だ」


「ええっ!!」




楽しそうに話すジークに対して私は明らかに嫌そうな顔をしたのだ。




さすがにもう勘弁してくれーーーー!!!




うんざりして項垂れていると突如後ろから体を包み込むように抱き締められた。


最初ジークが抱き締めて来たのかと思い、顔を上げたがジークは目の前にいたのだ。そしてジークは私の後ろを鋭く睨み付けている。


私は恐る恐る顔だけ後ろに振り向くと至近距離にあった深紅の瞳と目が合ったのだ。




「ゼ、ゼクス!?」


「サラここにいたのか。そなたの紅茶が飲みたくて、店に行ってみたのだがそなたの姿が見当たらなくてな。随分探したぞ」




そう言ってゼクスは無理矢理ジークと反対側の私の隣に腰掛けた。




「ちょとゼクス!いくらこの長椅子が広いからってさすがに三人はキツいから!」


「だが座れたのだ問題無かろう」


「いや問題ある!・・・サラあっちの椅子に二人で座ろう」




ジークは素早く椅子から立ち上り私の手を取って立ち上がらせようとする。しかしその前にゼクスが私の腰を抱いて動きを止められてしまう。




「ジークフリード、そなたはそのまま一人で座ればよかろう」




ゼクスは余裕の笑みでジークを見ており、ジークはその顔を睨み付けながらもう一度私の隣に座り私の肩を抱いて引き寄せる。


ならば私が一人席を立とうと動くが、両方からの腕の力が強くなり結局身動きが出来なくなる。




・・・何なんだ!この変な構図は!?




私は長椅子で両方から抱き寄せられているこの状況に泣きたくなってきた。




「あ、あの・・・」




近くで声がしたのでそちらを見ると、アンナさんが困惑しながらゼクスを見ている。




ああ、何も無い所から突然ゼクスが現れただろうから普通驚くよね。それにこのゼクスの深紅の瞳・・・。




「そう言えばアンナさんは初めて会うんだったよね。この人?はゼクス。魔族の王だよ」


「ま、魔族の王!?」


「あぁ心配しなくても大丈夫だよ!今は人に危害を加え無い筈だから・・・ゼクスそうだよね?」


「うむ。そなたに嫌われたく無いからな」


「そ、そうなんですか・・・サラお嬢様は本当に色々な方とお知り合いなのですね」


「う~ん、何故か気付くと増えているんだよね」


「それは・・・サラお嬢様ですから」




そうアンナさんに苦笑するとアンナさんも意味ありげに苦笑を返してきた。その後ゼクスにもお茶を出しまたアンナさんは側を離れていったのだ。




「それで、サラはわざわざ店を休んで何故ここにいるのだ?」


「そ、それは・・・」




ゼクスの問い掛けに言って良いのかどうかジークを伺い見る。


ジークは私を見て一つため息を溢しそして頷いた。


私はゼクスに顔を向けこれまでの経緯を説明したのだ。






「・・・なるほど。だからそなたはここにいるのだな」


「うん。だから解決するまでまだ暫くお店に戻れないんだ。ごめんね」


「いやそれは気にしなくて良い。別にサラの紅茶は店じゃ無くても飲めるからな」


「え?」


「それよりもジークフリード・・・サラをこんな事に巻き込まず、そなたがそのクラリスとか言う女と婚約してしまえば簡単に解決する話では無いのか?」


「そんな事絶対するか!!」


「ちょっとゼクス!そんな事言わないでよ!そんなの私が嫌だから今手伝っているんだよ」


「だがサラ、それでもそなたはまだ婚約者になるつもりが無いのであろう?」


「・・・っ!」


「そんな中途半端な関係でいるからこんな事が起こるのだ」




・・・確かにゼクスの言う通りだ。私が迷っていたせいで、ジークの婚約者の座がずっと空席のままだった為今回の事が起こったんだ。




そう思うと気分が落ち込み項垂れてしまった。するとジークが私の頭を優しく胸に抱え込んで来たのでジークを見上げるとゼクスを鋭く睨み付けていた。




「ゼクス!それ以上サラを苦しめるな!私はサラの気持ちがハッキリするまでいつまでも待つと約束しているんだ。私達の関係の事をとやかく言わないで貰いたい」




そうキッパリ言うジークに嬉しさと申し訳無さで胸が痛くなり、そして私は意を決してジークを見て言った。




「ジーク・・・いつまでも待たせてごめんね。この件が片付いたら答えを必ず出すから後少しだけ待ってて!」


「サラ・・・」




ジークは私の言葉に少し複雑そうな顔をして微笑んでくる。




「・・・まあ良い。とりあえずこの件が片付かない事には、サラの身の振り方が決まらんのだろう?ならば仕方がない。我も手を貸してやろう」


「「ゼクス!?」」


「ここで貸しを作っておくのも悪くないと思ったからな」


「ゼクスありがとう!」


「・・・すまない」






そうして私達は夜遅くまで話し合いをし、その後私のベッドで私と一緒に寝ると二人がそれぞれ言い出してきた為、怒り心頭のアンナさんが二人を部屋から追い出したのっだった。

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