ラウンド1-2


 予定通りリハビリが終わり、無事に帰宅。


『お疲れ様でした。では、失礼します。』


「ありがとうございました。」


 玄関のカギを開ける。


「ただいまー・・・」


 そこに妹の姿はなく、シーンとしている。

 俺は、靴を脱ぎ、荷物はその場に残し洗面所へ向かう。

 手洗いうがいをしっかりする。

 荷物を取りに玄関に戻り、そのまま自分の部屋へ行き、荷物を片付け、携帯と今読んでいる文庫本を持ってリビングへ行く。


「腹減ったー・・・」


『あぁ!!おかえりーーーー!』


 妹が勢い良く俺に抱きつく。


「ぐはっ・・・た、ただいま・・・((はぁ、コレ、どうにかならないかな・・・))」


 妹は、俺の胸に顔をうずめ、「すりすりー」と言いながら顔を左右に振っている。


『お疲れ様ぁー、今日はどうだったー?」


「((その動きを止めろ・・・))うん、順調だよ。」


『一緒に行けなくて、ごめんね・・・』


「大丈夫だよ。」


 さて、今俺の眼に映っているこの部屋は、これからパーティーを始める気満々の模様替えがされているのだが、これは夢を見ているのか、それとも現実なのか。

 もちろん、これは現実だ。


「あの、今日は、何かのお祝いですか?」


 妹は、顔をこちらに向け、ぱぁぁぁぁぁっとすごい嬉しさ全開の笑顔で言った。


『”おにぃちゃんの退院おめでとうパーティー!”だよぉー!!わーい!』


「なるほど・・・それは、お気遣いいただきありがとうございます・・・」


『この準備をするために、今日一緒に行けなくなっちゃって・・・』


 妹はニコニコしながら、俺の右手を両手で引っ張って、ソファのほうへ誘導する。


『最後の仕上げがもう少しで終わるから、それまでここに座って待ってて!』


 そう言って、俺をソファに座らせると、パーティーの準備の続きを始めた。


((張り切ってるなー・・・))


 俺は、一緒にやった方がいいのか迷ったが、ここは大人しく待っていることにした。読書をしながら、女の様子をうかがう。不意打ちに何かされるのが、怖いからだ。


『よし!・・・うん、我ながら完璧!』


「すげぇーな・・・」


 部屋の装飾も、料理も、全て一人でやったとは思えないほどのクオリティーだ。


『おまたせー!どう?気に入ってくれた?』


 妹は、すごいドヤ顔をこちらに見せる。


「うん・・・ありがとう。((これは、驚きを隠せない・・・))」


『やったー!頑張ってよかったー!』



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 妹には楽しく嬉しいパーティーの時間となったが、俺にとって、複雑な時間が時折流れる、なんとも言えないパーティータイムの思い出となった。


 今、俺は泥酔した妹の下敷きになっている。


『おにぃちゃん、むにゃむにゃ・・・えへへへへ。。。すーぴーすーぴーzzz』


「・・・コイツ、いつの間に酒を飲んだんだ。」


 俺は、一刻も早く、この悪夢から覚めたい・・・


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