RE:ブラコンライフ ~♡♡~

 目が覚めると、二人の女に挟まれ、怒られて・・・このカオスな状況になった経緯を説明しよう。


――――昨夜――――

 帰宅すると、女(妹)が出迎えた。これには徐々に慣れつつあるのだが、その後、リビングから登場した人物がいた。今日一日顔を合わせていたから幻覚を見ているのかと、目をこすって深呼吸をして頭の中を空っぽにして、もう一度目を開けた。これは幻ではなく現実だ。


((なぜ、君がここにいるんだ?))


 俺は、動揺していることを見透かされないように、いつも通りの帰宅ルーティン作業を済ませ、リビングへ入る。

 インターン生と女(妹)が、なにやら話している。


『やっぱり、帰ります・・・』


『えー!なんで!?大丈夫だよー!』


『いや、でも・・・』


『やだ!帰らないで―!』


『・・・あっ、』


 インターン生が、俺に気が付いた。


『おにぃちゃん、この子が帰らないように説得してー!』


((その前に、この状況を説明してくれ!))


『すみません!今すぐ帰ります!あなたが、お兄さんだとは知らなくて、本当に!』


『はぁー!?ちょっとまって!おにぃちゃんと、いつ!どこで!何で知り合ったの!?ねぇ!?聞いてない!』


 女(妹)は、インターン生の両肩をつかみ前後に激しく揺らす。インターン生は、されるがままに揺れている。


「落ち着け、一旦離れろ!」


 俺は、女(妹)を後ろから抑え、インターン生から離れさせる。


『おにぃちゃんも共犯!?ひどーい!』


「そんなんじゃないから。俺は、この状況が全くわからん!」


『はぁ、はぁ。こんな偶然あります?』


『おにぃちゃん!私とあの子、どっちの味方なの!?』


「どっちの味方とかじゃなくて、この子は、今インターンでうちの会社にいるんだよ。」


『インターン?』


「そう。たまたま、今日この子の面倒みるのが俺だったってだけ。で、二人の関係は?」


『友達かな?』


「なんで、疑問形なんだよ・・・」


『ぼくは・・・わ、私は、友達だと思ってるよ?』


『うん、友達!』


 俺は、この女(妹)に友達がいたことにほっとしている自分がいた。


『突然お邪魔して申し訳ございません。』


((会社で接していた時と、少し雰囲気が違うように思うのは気のせいか?))


 落ち着きを取り戻した女(妹)を開放する。


「じゃぁ、二人で楽しんで。」


『何言ってるの?おにぃちゃんも、いっしょにいていいよ?』


 女(妹)が、俺の腕を掴んで引き留めた。


「気まずいだろ・・・」


『気まずい?』


 女(妹)がインターン生に問いかけた。


『えっ?・・・あ、ぼ、ぼくは、別に大丈夫だよ?』


『だって!せっかくだから、おにぃちゃんも一緒に楽しもう?いいでしょ?』


「((会社で接していた時よりリラックスしてるから、相手のこと少しわかるかもな、))わかった。」


『やったー!じゃぁ、今日はとことん付き合ってもらうからね!』


 この後、俺は、二人とゲームをしたり、どうでもいいことをしゃべったりした。今の流行はコレとか、これはおじさん認定とか、そんなこんなであっという間に時間が経っていた。


 いつの間にか寝落ちをしていた。ソファに座る俺の右にインターン生、左に女(妹)がすやすや眠っている。俺は、二人にそれぞれブランケットをかけ、リビングから退場する。

 自分の部屋のベッドに横になる。眼を閉じ、さっきまでの出来事を思い返すと、温かい気持ちになった。疲れもあり、また気が遠くなって、眠り落ちた。


――――――


 意識がぼんやりと戻る中で、まず違和感があった。まだ、覚醒をしていない俺の脳は違和感を違和感としか認識できていない。徐々に手に柔らかい感触が伝わる。決して嫌な感触ではない。むしろ、触り心地は”優”だ。背中に感じる温かさも伝わってくる。

 太陽の光を瞼の裏で感じられるくらいになった俺は、瞬きを数回しながら、柔らかく心地よいそれに顔をうずめた。


『ひゃっ・・・ん・・・』


 耳に風が触る感じが、くすぐったい。


『ん・・・おにぃ、ちゃん、』


 吐息が聞こえた、次の瞬間、


『おにぃちゃん!』


「!!!」


『ん・・・やっ・・・』


 俺は、誰かに何かから無理矢理剝がされた。何が起きたのかわからなかった。


「えっ・・・なに!?な、なんで、俺の部屋にいるの?」


『今、そんなことはどぉーでもいいの!』


「どーでもいいわけ、」


『自分が何したかわかってるの!?サイテーだよ!』


『そんなに、お兄さんのことを攻め、』


『何言ってるの!?自分が何されたかわかってるの!?』


((俺、なにか、したの・・・?))


 女(妹)は、この状況を把握できない俺の顔を見ると、更に顔を赤くして今にも泣きそうにながら言った。


『この子の、胸、さ、触って・・・顔、う、うず、うずめて、たんだよ!変態!サイテー!そんなことするなんて、おにぃちゃんなんか、』


『っ!!!言わないで、よ、余計に、はずかしいよ・・・』


 インターン生は、布団に隠れ、女(妹)の興奮感情は収まらない。

 俺も、寝ぼけていたとはいえ、記憶がなく無意識とはいえ、自分がインターン生にしてしまったことを考えると、この場にいる気まずさが押し寄せてきた。


((なぜ、こんなことに・・・))


 インターン生が布団から顔を出して、女(妹)に言った。


『一旦、落ち着こ?ね?』


『お、お、おおおちつけないわよ!なんで、そんなに落ち着いてられるのよ!あんたバカなの!?』


『いや、だって、こうなったのは、寝ぼけていたとは言え、ここで寝てしまって、自業自得ですから・・・』


『なんで、”妹”じゃなくて、”友達”なの!?あり得ないんだけど!おにぃちゃんのバカ!!』


 俺は、女(妹)が怒っている理由が、怒られている側と内容が食い違っていることに気が付けるくらい脳は覚醒していた。

 インターン生は、自分の体を男に触られたことに対してもっと危機感を感じろと怒られているのだろうと思っていて、女(妹)が怒っているのは、遠回し俺に触られたのがなぜお前なのか、ということに関して怒っている。もちろん、俺に対しても怒っているのはなんとなくわかっている。

 俺は、二人の言い合いの間に入るべきなのだろうが、この状況で俺の立場から何を言っても言い訳にしかならないだろうと思い、俺は黙って傍観するしかない。


 女(妹)とインターン生が、俺の部屋で取っ組み合いを始めた。ベッドの上で。

 女(妹)が攻撃、インターン生が防御の構図だ。


『お兄さんも、言い訳でもなんでもいいから、何か言ってくださいよー!』


『なにが、”お兄さん”じゃ!あんたの”お兄さん”じゃないでしょー!』


「俺が悪かったから、もう、やめ、」


『おにぃちゃんのばか!妹の何が不満なわけ!?だから、友達の、』


「不可抗力だろ!」


『言い訳もサイテー!』


 次の瞬間、


『『あっ!うわぁーー!!』』


「危ないっ!」


 二人は仲良くベッドから落ちた。


『・・・いたい。』


『・・・いったー。』


「二人とも、大丈夫か?」


 気が澄んだのか疲れたのか、女(妹)は落ち着いてきた様子だった。インターン生は、そんな女(妹)に抱きついた。


『ごめんね。痛かったね。』


『私も、ごめんね。』


 二人は、すぐに仲直りをしているようだった。


 この日から、俺、女(妹)、インターン生との交友関係が始まった。


((明日から、会社でどうすればいいんだ・・・))

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