RE:Company slaver ーrank Sー

『おはよう、ちょっと今いいか?』


「おはようございます。はい。」


『復帰早々悪いんだが・・・』


 先輩の様子がおかしい。何かトラブルでも起きたのだろうか。


『インターンシップで来てる子の、面倒見てくれないか?』


「僕がですか!?」


 驚いて、心の声が漏れてしまっていた。慌てて小声に戻す。


「教育係は、他の方だったのでは?」


『それがさぁ、相性?が、悪かったみたい。』


 先輩は、困っているのかいないのか、まるで他人事のような素振りだ。


『おっ、いたいた、コピー機の前にいる子。』


 視線を先輩からコピー機の方へ移して、その人物を見た。


((どっかで、見たような気がする・・・))


『仕事はきちんとやってくれるみたいなんだけど、対ヒトになると問題ありって感じみたい。俺も、話したことあるけど、ちょっとコミュニケーションが苦手なのは感じたかな。』


「あの子の教育係をしていた方は?」


『もう、3人も変わってる。最後の希望がお前しかいないんだよ・・・』


「3人・・・俺、自信ないっす、」


『今日だけでもいいから、頼む。仕事はできる方だと聞いているから、きっと、お前ならなんとか、あの子を良い方向に引っ張ってくれると、俺はお前を信じてる。』


 俺は、教育係になるのために、この役職を引き受けたわけじゃない。俺にもやるべき仕事がたくさんある。教育係を務められるほどの余裕が、今の俺にはない。でも、心の中で何かが引っ掛かっている。このモヤモヤするこの感情は何だ。どうして、断り切れない自分がいるのだろう。

 俺は、悩みに悩み、答えを出した。


「わかりました。とりあえず、今日一日だけ、引き受けます。」


『本当か!?有難い。』


「今後どうするかは、また改めてご相談させてください。」


『おう!もちろんだ!じゃ、よろしく。』


 あの子の教育係を引き受けた俺は、きっと、過去の自分と重ねてしまっているのかもしれない。そのことに気が付いたのは、割とすぐだった。


 先輩から、話を聞いたのだろう、その子が俺のデスクに来た。


『はじめまして、インターンシップでお世話になっております。本日から、教育係の担当者が変わると言われました。よろしくお願いします。』


「こちらこそ、よろしくお願いします。」


 礼儀が良いのか悪いのか、感じ方は人それぞれだが、きっと、前の教育係をしていた方々は、この子の接する態度が気に食わなかったのだろう。

 自分もビジネスマナーが身についたのは、社会人なってからだ。それは、日ごろから行っているからであって、社会に出始めたばかりの頃なんて、思い返すと恥ずかしいくらい、何もできていなかった。

 インターン生相手に同じことを求めるのは、少し厳しところもあるのではないかと思っている。もちろん、彼らのためではあるが、それ以外にも大事なことがあるのではないかとも思っている。


 彼女は、こちらからの何かアクションを待っている様子で、その場に立っている。

 俺は、自分が誰かの教育係をやるなんて、想像もしていなかった。だが、今はその立場になったのだ。


「今、頼まれている仕事は、どこまで進んでいるかな?」


『あ、えっと・・・わからない部分を調べながら作業しているので、まだ、ここまでです。』


((この進め方だと、効率悪いな・・・))


「先にこの作業を進めて。その作業が終わったら一旦確認させてくれるかな。」


『はい。わかりました。』


「よろしくお願いします。」


 俺は、自分の仕事をしながら、インターン生の作業チェックをして、今日の勤務は終わった。

 インターン生の第一印象としては、可もなく不可もなく。一日接しただけでは何もわからなかった、というのが正直なところだ。


 久々に、仕事ができた俺は気分が良い。

 帰り道、俺は、女(妹)に連絡をする。


俺>今コンビニ

  何か買ってくるものある?


妹>いつもの


俺>了解


 頼まれた物を無事購入し、家に着いた。


「ただいまー。」


『おにぃちゃん!おかえりー!』


『お邪魔、して、ます・・・』


「えっ・・・」

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