ブラコンライフ ー番外編 承ー
<妹のHBD>
『誰と電話してたの?』
寝ていたと思っていた妹は、寝たフリをしていただけだった。
いつから起きて、どこから聞いていたのか、あえて聞かない。
俺は質問に答える。
「例の先輩だよ。」
『ふーん。先輩も、おにぃちゃんのこと大好きだよね~。』
「いや、どうだろうな(苦笑)」
『まぁ、妹からすればまだまだって感じだけど、大好きについては話が合いそうね。』
「(恐怖交じりの笑い)((妹と先輩は合わせないほうが身のためだな・・・))」
妹は大きな欠伸をひとつして、伸びをすると、キッチンへ行った。
「この後の予定は?」
『んー・・・イチャイチャしてー、愛を深め合う予定だよー。』
「・・・そ、それは、具体的にどういうことをするのかなー?」
妹が、冷蔵庫からワインを取り出して、グラスに注いでいた。
「ちょ、何してるの?それ、未成年はまだ飲んじゃダメな飲み物って、わかってるよな?」
『飲むのは、おにぃちゃんです。(にやり)』
まさか、昼間からワインを飲む羽目になるとは、さすが恐るべし妹よ。だが、今日は断れない。なぜならば、今日は妹の誕生日だからだ。理由はそれだけだが、それで十分な理由なのだ。
妹は、俺がアルコールに弱い体質だということは知っていて、あえて、飲ませようとしている。まったく悪魔女め。反撃できない自分が情けないと思ってはいるが、たとえ反撃したところで、余計に妹からの要求はエスカレートすること間違いなし。これ以上に、要求されないためにも、従順にしていることが唯一、難を逃れられる方法なのだ。多分。
「飲まないとダメか?」
俺は、念のため、確認をする。
『ワインの味を教えてほしいから、お願い。』
((いや、そんな理由で飲まないといけないってことが通用すると思うな。))
「俺が、苦手なの知ってて、どうして、イジワルするんだ?」
『じゃぁ、未成年の妹に自分で飲めってこと?飲んでいいなら、飲むけど?』
((あぁ、そうきたか。それは、ズルくないか。))
断るに断れなくなって、俺は仕方なく飲むことにする。
「あ、でも、その前に確認させて。」
『なに?』
「これ、いつ買ってきたの?((未成年じゃ買えないはずだが・・・))」
『もらったの。』
「誰から?」
『それは・・・言えません。』
「どうして?」
『誰にも言わないって、約束しちゃったから。』
「俺の知ってる人?」
『さぁ、どうでしょう?』
「教えてくれないなら、飲むのやめようかな。」
『はっ?え、あっ、そ、それは、ズルい・・・』
「飲む代わりに、教えて。」
『・・・じゃぁ、自分で飲む!』
そう言って、グラスを奪い取ろうとする妹からグラスを守る。
「あぶない、こぼしちゃうよ・・・あっ」
時すでに遅し。ワインは俺の服を赤くじわじわと浸食した。
『わあーお・・・』
「あぁ・・・」
もう、笑うしかない。
『ごめん・・・てへ。』
「てへっ、て・・・着替えて、」
妹が俺の言葉をさえぎって言う。
『あっ!待って!いいこと思いついちゃった!』
「?」
だめ、動かないで。と、言って俺の服を脱がし始めようとする妹。
なんとなく、予想していたことが起こった。
妹の本当の目的は、これだったのかもしれないとも思った。
この状況を作り出すのが、全て計算だったら、この女かなりやり手だ。もし、妹に恋人ができたら、その相手に忠告しておいてやろう。ワインには気をつけろ、と。
『あーぁ、ベトベトになっちゃったね・・・』
そういうと妹は、手慣れたように俺のカラダを舐め始めたのだ。
「ちょっ、なにしてんだよ!未成年とかの問題以上に、別の問題・・・」
全く聞く耳を持っていない妹は、俺の鎖骨あたりをペロッと舐めた。
『えー、だって、おにぃちゃんのカラダが、ワインで濡れちゃったから、責任取ってキレイにしてるの。』
”シャワーで流してくる”という文が、喉元まできていたが、間一髪、俺は飲み込んだ。危うく自ら命を差し出すところだった。危ない、危ない。
さて、この状況をどう軌道修正しようかと考えていた俺の耳に違和感しかない単語が入ってきた。妹が言い放った言葉が、俺の聞き間違いでなければ、妹はこう言った。
『おにぃちゃん、(”ピー音”)しよ?』
「・・・・え?」
俺は、自分の頬を思いっきりつねった。イタイ・・・。つまりこれは現実。
「・・・あ、えっ、ん?な、なんて?」
『だから、(”ピー音”)しよ?だめ?』
「いや、その、えっと、は?」
急な展開過ぎて、思考が追い付いていない。いや、この妹に常識は通用しないことはわかっているが、もう、対処の仕方のマニュアルが通用しないどころか、何をやってもエラーが出てしまい、思考回路もショートしている。
「ナ、ナニヲ、イッテルノ?ワカラナイ・・・」
片言で喋る外国人よりヒドイ聞き方になってしまう。俺は、目の前にいる妹に、性行為をしようと提案された、この大変おかしな状況に困惑している。動揺ではなく、もはや、恐怖である。
そんな俺をよそに、妹はどこか楽しんでいる。
『ねぇ、いいでしょ?』
((できるわけないだろ。))
『心臓がバクバクしてるの、聞こえるよ。』
((もう、誰か助けてくれ・・・))
『ほら、ホンモノの胸の触り心地の感想は?』
((だぁぁぁぁぁぁぁあぁ!!!!うわあぁぁぁぁぁぁぁ!!もう、やめてくれ、妹よ。これ以上は、俺の気力が、持たない・・・))
『下着も、ほら、ちゃんと見て。オトナぽくセクシーだけど、エロ過ぎないの。どう?』
((ぁーぁ・・・何も考えられない、何も感じない、あれ、なんか、意識が遠くなってきた、あれ・・・))
『おにぃちゃん、気持ちいい・・・』
俺の意識はとっくの前に飛んでいたようだ。
遠くの方で、妹が「おにぃちゃん」と呼ぶ声が聞こえてきた。視界がぼやける中で、妹の泣いている顔が見える。
((なんだ、この全身の倦怠感と疲労感は・・・))
俺は、キャパオーバーしたようだ。こんなこと、初めてだ。今まで一度も、どんな妹のワルフザケにも、途中で気絶するなんてことなかった。
俺は、ワインをこぼして、服を脱がされた後から記憶が曖昧で、その後は全く覚えていない。
だが、今、俺の目に映っている妹が、下着の上に俺のパーカーを羽織っている破廉恥な姿でいる、この状況が理解できないわけもなく、血の気が引いていく感覚がした。俺は、怖くて何が起きたのか、そんなこと聞く覚悟があるわけもなく、ただただ、魂がどこかへ行ってしまわないように、必死でとどめることしかできなかった。
((まさか・・・な?いや、ありえないだろ。))
絶対に認めないが、信じてもいないが、多分、いろんな意味で終わった・・・?
だがしかし、妹の誕生日は、終わっていない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます