RE:ブラコンライフ ~♡♡♡~
社畜の本気を発揮し地獄だった激務が無事に終わり、今日は1か月ぶりの休日だ。先輩の謹慎も今週で解除され、明日から戻れるとのことだった。
今日は、謹慎解除のお祝いをすると先輩自ら提案し、俺は強制的に付き合うこととなり、急遽先輩宅にいる。
「謹慎解除、おめでとうございまーす。」
『ありがとうございまーす。』
「謹慎理由聞いて呆れましたよ。心配した俺がバカでした。」
先輩が謹慎になったのは、職務放棄をしたからだった。職務放棄をした理由が妹だと聞いたときは、改めて心の底からこの人はガチでヤバイ”世界一のシスコン拗らせバカ”だと改めて思った。
「今回は謹慎で済みましたけど、自分の立場も考えてください。妹さんのことになると何もかも放り出して突っ走る癖、マジでどうにかした方が良いですよ・・・」
『俺は、妹のためだったら解雇上等だ!妹がいれば、この地位も名誉もどーでもいいんだよ!』
先輩はすでに酔いが回ってきているのか、調子のいいことを言っている。
「はいはい、そーですか・・・・というか、野郎2人だけでなにを?」
先輩は、時計を見て、
『あー、そろそろかな?』
すると、インターフォンが鳴った。
先輩が何かデリバリーしたのかと、気に留めないで待っていた。
『お邪魔します・・・あっ、おにぃちゃーん!』
俺は、飲み込もうとしていたお茶が気管に入り咽る。
「ゴホッ・・・ゴホゴホッ・・・ゲほ、な、なんでっ?ゲホゲホ・・・」
現れたのは、【俺の妹】だった。
『いつも兄がお世話になってます!』
『こちらこそ、お世話になってます。』
その後にすぐ、もう一人訪問者が現れた。
『兄貴・・・』
((え?妹さんまでどうして!?))
『あー!やっと会えたー!はじめまして!妹同士、仲良くしてくださーい!』
『誰?・・・こ、後輩さん!?』
「どうも、」
『あいつの妹さんだよ。なんだ、もう友達みたいな感じにみえるぞ!よかったな!』
『後輩さんの妹・・・今出会ったばかりで友達じゃない!離れてください!』
【俺の妹】はお構いなしに妹さんにハグしている。
『これから、仲良くなりましょーねっ!』
『仲良くなれる気がしない・・・』
『えー!ひどーい。』
『大丈夫だよ、妹は照れてるだけだから、な?』
『照れてない!バカ兄貴!嫌い!』
『わー!お兄さんと、仲良しなんですね!』
『は?これのどこが!?』
このカオスな状況を作り出した首謀者である先輩と、この計画に誘われ共犯となった【俺の妹】は声高らかに笑っている。一方、被害者側である俺と巻き込まれた妹さんは、このカオスな状況に唖然としていた。
『兄貴・・・私の事、騙したの?』
「ちゃんと、説明してください・・・」
『違うよ!サプライズだ!』
『サプライズだよー、おにぃちゃん!』
『・・・サプライズ?』
「なんで、先輩と【俺の妹】が?グルだったのか・・・・」
『ごめんね、おにぃちゃん・・・でも、私が愛してるのはおにぃちゃんだけだから!』
そう言って、【俺の妹】は俺に抱き着く。
『見せつけてくれるねー!羨ましいぜ!』
『私は、いったい何を見せられているんだ・・・帰ろ、』
『ちょっと待てって、お前、あいつに会いたがってただろ?』
妹さんは先輩の問に戸惑いながら、俯いて答える。
『・・・それは、ちがうの、そうじゃ、なくて、』
俯いている妹さんの態度に【俺の妹】が動いた。
『私のおにぃちゃんに、会いたい?はぁ?何様のつもり?寝言でも言わないで、』
「おい、やめろって・・・」
今度は、止めに入った俺に【妹】が迫ってくる。
『おにぃちゃん!どういうことなの!?』
「えっとー・・・会う約束は、まぁ、してたけど、それはその、」
『・・・イヤ!嘘よ、そんなの・・・イヤ、』
【俺の妹】が気を失い、倒れそうなところを先輩が支える。
妹さんは、部屋から出て行ってしまった。
『馬鹿!本当のことだったとしても、妹の前で言っちゃダメだろ!』
「・・・すいません、((俺が悪いの!?))」
『お・・・お、おにぃ、ちゃん・・・私、の、おに、ちゃんが・・・うあぁぁぁ・・・』
『大丈夫だ!兄ちゃんはここに居るぞ!ほら、自分の妹支えろ!』
「あ、はい。」
『俺は妹を探してくるから、お前は妹さんに謝れ!』
「はい。気を付けて・・・」
取り残された俺は【妹】と二人きりになった。
『お、おにぃ・・・おにぃ、ちゃん・・・だあーめぇーーーーー!!!!!いやだいやだいやだいやだーーーーーー!!!!』
「おーちーつーけー!!!俺はー、ここにいるぞー!!」
俺と興奮していた【妹】が落ち着き、その後、しばらくして先輩と妹さんが帰ってきた。
『妹さん、大丈夫ですか・・・』
「あ、うん、驚かせてごめんね。」
『いえ・・・妹さん、後輩さんのこと、本当に大好きなんですね。・・・私達兄妹とは、違いますね・・・』
((あれ?もしかして、妹さん、先輩のあんなに重たいシスコン愛に、気が付いていないのか!?嘘だろ!?))
「妹さんも、あぃ・・・先輩は、妹さんの事、大事だっていつも言ってるけどなー、」
『やめてください、気持ち悪い。』
真顔で答える妹さんに、俺は苦笑いをするしかなかった。
『妹さん、落ち着いたみたいだな。』
「ご心配おかけしてすみません。」
『ごめん、なさい・・・』
『ショックで倒れるなんて、かわいいじゃないか!』
『・・・兄貴?後輩さんの妹に手出したら、勘当するから。』
『そんなことしねぇーよ。俺にはお前だけだよ。』
先輩は、妹さんの髪をわしゃわしゃしながら頭を撫でた。妹さんは、嫌がりながらも、表情はどこか嬉しそうにしていた。
その光景を見て、今までずっと解けなかった謎が一気にスルスルと解けていく。
((あれ?まさか!えっ!?・・・俺は、ずっと勘違いしてたのか!!))
この後、夜まで4人でパーティーをした。
『気を付けて帰れよー、』
「はい、お邪魔しましたー、」
『楽しかったー!またねー!』
『・・・またね、』
――――――自宅
『サプライズ大・成・功!わーい!』
「先輩の妹さんと仲良くなれそうか?」
『うん、きっと仲良くなれるよー。だって、私と、同じな気がするんだよねー、えへへー、』
「((やっぱり、そういうことだよな・・・))友達になれるといいな、」
『うん!』
【妹】は、パーティーで飲んだアルコールがまだ抜けていないのか上機嫌だ。
俺は、あのツンツンしている妹さんが”ブラコン”だという衝撃的な事実に、やっと気が付いた。その事実を【俺の妹】は今日初めて会っただけでわかったのかもしれない。
『類は友を呼ぶ』とは、まさにこれだ。
だんだん眠気が襲ってきている【妹】は、俺に抱きつき、
『おにぃちゃん・・・今日は、泡のお風呂だよー?・・・一緒に、あわあわに、なろ~ね・・・』
【妹】は、もう限界のようだ。
「((なんだかんだ、今日は楽しかったな。))・・・ありがとな。」
『んー・・・おにぃ、ちゃん、だぃ、すきぃー・・・』
「やっと寝たか。・・・おやすみ。」
俺は、すやすや眠っている【妹】を抱えたまま、今日までの沢山の出来事を懐かしく感じながら思い出を振り返る。
人生最大の”まさか”から5年が経つ俺は、気が付けば【妹】の記憶を取り戻していた。
ただ、一つだけ解けない謎がある。
【妹】は、何故これほどまでに異常なブラコン・モンスターになったのか、これは永遠の謎だ。
【妹】に関する記憶が戻った俺は、もちろん、あの事件の記憶も思い出した。
「俺と妹は、血が繋がってない・・・ん?なんで、俺は妹と、」
((なんだこの記憶・・・嘘だ・・・嘘だ・・・俺は、認めない!!絶対に、認めない!!・・・妹と、ピーしたなんて、絶対に、認めない!!))
「・・・悪夢だ、」
<妹のブラコンが異常な件について、ちょっときいてくれないか。 完>
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