22.時折間違えて使われる「閑話休題」

 「よく間違えて使われる言葉」を扱う本作ですが、今回はまだカクヨム内では誤用を見かけた事がない言葉を扱いたいと思います。とは言え、それはカクヨム内での使用頻度が少ないだけで、世間で出回っている文章では時折間違えて使われているものなのですが……。


 「閑話休題かんわきゅうだい」という言葉があります。

 これは、『文章で、余談をやめて、話を本題に戻すときに、接続詞的に用いる語』であり、『それはさておき』とほぼ同じ意味で使われます。


 文章を書いていて、ついつい余談部分に筆が乗り、本題からかけ離れてしまった覚えのある方は少なくないのではないかと思います。「閑話休題」は、そういった際に余談を打ち切って本題に戻りますよ、という事を明示する為に使用される言葉です。


 「新明解四字熟語辞典」の語釈には、


「閑話」は暇にまかせてする無駄話のこと。「休題」は話すことをやめること。また、話題を転ずること。


とありますので、つまりは「無駄話はやめて話題を変えます」という意味ですね。


 ところが時折、この閑話休題という言葉を「一旦、話を本筋から脇道へ逸らす」というの意味で使っている方を見かける事があります。

 ちょっと作品名は思い出せませんが、以前に読んでいた少年漫画で、いわゆる「番外編」のタイトルが『閑話休題』となっていて、疑問符が浮かんだ覚えも……。「本筋から逸れてるのになんで閑話休題?」と思ってしまいました。


 一部の人間が間違えているだけかもしれない、等と思った事もありますが、平成十四年度の文化庁「国語に関する世論調査」では、「閑話休題」の意味を正しく答えられた率は、三割を切っていたのだとか。正答率としてはあまりにも低すぎるように見受けられます。


(参考URL:http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/h14/)


 更に同調査には、43.8%の方が「閑話休題」の意味を「分からない」と回答した、ともあります。間違える間違えない以前に、言葉自体を知らない方が五割弱いらっしゃった、という事になりますね。

 

 冒頭でも書いた通り、私はまだ、カクヨム内で「閑話休題」の誤用を見かけた事がありません。ですが同時に、使用頻度も低いと感じています。

 ただ単純に使用頻度が低いだけならば良いのですが、文化庁の調査にもあるように、……。


 近い将来、「閑話休題」が「死語」となっていない事を祈るばかりです。



【今回のまとめ】

・「閑話休題」は、余談を止めて本題に戻す際に使われる。

・「少し話がそれます」という使い方は、本来の意味とは正反対。

・平成十四年の段階では、三割の人間が意味を取り違え、四割が言葉の意味自体を知らなかった。



 日本語に「正解」はありません。日々刻刻ひびこくこくとその意味やニュアンスが変わっていきます。

 本稿の内容を踏まえて、今回取り上げた言葉が様々な出版物でどのような使われ方をしているのか実際にチェックして、常に「生きた日本語」を意識しましょう。

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