37.「平謝り」の意味を間違えると「平謝りに謝る」ことになる

 久々の更新です。

 今回は、先日Twitter上で見かけた「平謝り」という言葉の誤用について解説していきたいと思います。


 さて、先日いつものようにTwitterのタイムラインを眺めていた所、次のようなツイートがリツイートされてきました。


最近、自分が謝るときに「私のミスです、平謝りする他ありません」と発言したら、「君、平謝りは謝らないことを言うんだよ、言葉には気をつけなさい」と言われて、(中略)そのあと国語辞典みたら平謝りは、土下座レベルで謝るという意味で合ってた……

https://twitter.com/hiroko_TB/status/840053536306155520


 このツイートを見た瞬間、私の中では「???????」と疑問符が飛び交いました。

 本作を執筆するにあたって、「よくある言葉の誤用」についてそこそこ以上に調べたつもりでしたが、「平謝り」を「謝らない」という正反対の意味で使っている例には出会ったことがありませんでした。


 ところが……くだんのツイートへの反応やWEBでの検索結果を眺めてみると、実は「平謝り」も、そこそこ間違われて使われている言葉、つまり「間違えやすい日本語」だったようです。

 「謝らない」と同じように、「適当(いい加減)に謝る」「嫌々謝る」等、「ちゃんとしていない謝罪」を表す言葉だと取り違えられている例を多く見かけました。



 以下、改めて「平謝り」という言葉の意味を解説していきたいと思います。


 おなじみ「デジタル大辞泉」によれば、「平謝り」とは『ひたすら謝ること』という意味の言葉であり、主に『平謝りに謝る』のような形で使われます。

 戦前の文学作品などでも、多くは「平謝りにあやまった」という形で使用されています。


 頭についている「ひら」は、この場合『動作性の意の名詞に付いて、ただひたすらに…する、の意を表す』接頭語です。

 現代ではあまり使われませんが、『一気に押し進むこと』を意味する「平押し」や、『ひたすら攻めたてること』を意味する「平攻め」で使われるのと同じ「平」ですね。

 古典などでは「平に」の形で使用されることもあります。



 さて、問題は何故「平謝り」が「ちゃんとしていない謝罪」と誤用されるようになったのかですが……残念ながらはっきりしたことは分かりませんでした。

 WEB上での誤用例を検索している際に、「平社員」等と同じ「平」という字が頭についているから「平凡な謝罪≒適当な謝罪」という意味だと思っていた、という声を見かけましたが……「平凡」は「並」という意味でしかなく「普通」を指す言葉ですから、その方は二重に言葉を間違えていることに……。


 少なくとも、まだ出版物上などでは見かけたことが無い誤用ですので、このまま広まらずに静かにフェードアウトしてくれるよう祈るばかりです。

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