38.「割愛」されたものには価値がある

 久しぶりにおすすめレビューを頂き、その中で「貴方のこの表現は誤用では?」とのご指摘がありましたので、お返事代わりに更新したいと思います。



30.に「割愛します」

とありますが、文脈から察するに作者様の使い方はもしかしたら誤用しているのではと思われます。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881006064/reviews/1177354054885244188


 上記は、蒼唯 冬夏(@aoi-touka)様から頂いたおすすめレビューの一節、誤用を指摘する件の冒頭部分です。

 こちらによると、どうやら『30.決してネガティブな意味だけではない「批判」』の中に「誤用」があったようです。

 「はて、何か微妙な表現があったかな?」と思いつつ、読み返してみますと……どうやら次の一文へのご指摘だった模様。


 3については哲学用語ですので、ここでの説明は割愛します。


https://kakuyomu.jp/works/1177354054881006064/episodes/1177354054883496039


 蒼唯 冬夏様のご指摘は、こう続いております。


割愛は、度々「省略する」と同義で使われますが本来は違うものです。

本来は、「惜しいと思うものを思い切って手放す、または省略する」というものであり、単に省略するという意味では使わない言葉です。


 こちらのご指摘の通り、「割愛」はただ単に「省略する」という意味ではなく、次のような意味を持つ言葉です。


1 惜しいと思うものを、思いきって捨てたり、手放したりすること。「紙数の都合で割愛した作品も多い」


2 公務員が、他の自治体や民間企業などへ籍を移すこと。また、大学の職員が、他大学へ籍を移すこと。手続きの形式上、移籍先が「人材を割愛してほしい」と申請することから。「割愛願い」「割愛申請書」


3 愛着の気持ちを断ち切ること。恩愛や煩悩(ぼんのう)を捨て去ること。


 一般に使われているのは、1の意味ですね。

 「大辞林」では、『惜しいと思いながら、捨てたり省略したりすること』と説明されています。

 時間や紙面の都合等で、ある話題について省略せざるを得ないことを表す際にも、よく使われますね。


 ただ単に「省略した」と書くと、「その部分が不必要だった」というような意味で受け取られかねませんので、「割愛」という言葉を使うことで省略された部分にも価値があることを、暗に示しているわけです。

 日本語らしい、奥ゆかしい気遣いの表現ではないかと思います。


 私が上記の一文で使った「割愛」も、そういったニュアンスのもとで使ったものでしたが、蒼唯 冬夏様にはそのように伝わらなかったようです。

 確かに、「割愛」という言葉の誤用は有名であり、文化庁が発表した平成23年度「国語に関する世論調査」でも、七割近い方が「不必要なものを切り捨てる」という意味で使っていると報告されています。


(参考:http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/index.html)



 誤用が多い言葉だけに、「本来的な意味」のニュアンスが強く出ているような使い方をしないと、上手く伝わらないのだな、と。

 色々と勉強になるご指摘でした。

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