28.現在進行形で変えられようとしている「忖度」という言葉の意味

 昨今、やたらと「忖度そんたく」という言葉を目にするようになりました。

 国会でも、テレビでも、新聞の紙面でも、web上でも。一時期はみんながみんな「忖度」を連呼しているような印象さえありました。

 そしてその多くは、「忖度」をで使っています。

 ですが、「忖度」という言葉が持つ本来の意味は、決して悪いものではありません。


 そもそも「忖度」という言葉の歴史は古く、古代中国に由来します。

 意味としては、『他人の心をおしはかること』であり、例えば『相手の心中を忖度する』のような使われ方が本来のものです。

 他人の心を推し量ることが良い事か悪い事かと問われれば……ケースバイケースである、としか言えないでしょう。その行為自体には善悪などなく、状況によって意味合いが変わってきます。


 ところが、最近の報道や政治家の発言などに注目すると、「忖度」という言葉を「相手の意向を察して便宜を図る」という、悪い意味で使っている例が多く見受けられます。

 上記の通り、「忖度」という言葉自体は『他人の心をおしはかること』以上の意味を、本来持ち合わせません。推し量った上で何をするか、というのはまた別のお話になります。


 例えば、「社長の真意を忖度する」と言った場合、本来的には「社長の真意について推し量る」という意味になるはずですが、昨今のマスコミや政治家の用法に沿うと、「社長の真意を察して便宜を図る」という意味になってしまいます。

 まるで全く別の言葉のようですね。


 「言葉は生き物」であり日々の変化が避けられないとは言え、一部の方々の偏見の混じった用法で、一つの言葉に悪いイメージだけがついていく光景は、見ていてあまり気持ちのよいものではありません。

 しかもそれが、言葉に重い責任を持たなければならないはずの、政治家やマスコミによるものとなれば……何ともやるせない気持ちを隠せませんね。

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