35.少しはこだわりたい「物の数え方」

 先日、カクヨムのとある作品を読んでいて、次のような表現を見かけました。


『そこには、様々な種類の槍が何も立て掛けられていた』


 ……槍を「個」で数えるとは中々に斬新、と思いましたが、その作品では他の部分でも物の単位が微妙におかしな事になっていました。

 恐らくこの作者さんは、「物の数え方(助数詞)」に頓着とんちゃくしない方なのだと思われます。


 言うまでも無いことですが、槍のような棒状のものは、通常「ほん」で数えます。

 槍には他にも「すじ」や「へい」と言った数え方がありますが、通常は「本」で十分でしょう。


 武器繋がりで言うと、刀も「本」で数えますが、「り」もよく使われますね。

 「一本の刀」よりも「一振りの刀」の方が、雰囲気が出る場合も。



 さて、このように日本語では、対象となる物によって実に様々な「数え方(単位)」が存在します。

 「一つ、二つ」や「一個、二個」でも十分に意味は通じますが、「槍一個」「刀一個」等と書かれると大概の方は違和感を覚えるでしょうから、それぞれの対象物にあった数え方を意識しておいて損はありません。

 以下、よく使われるものからあまり使われないものまで、「物の数え方」をいくつか紹介していきます。



ひき

 動物や鳥、虫、魚などを数える時に使われます。古くは反物たんものや貨幣の単位にも使われていたようですが、現代では生き物を数える場合が殆どでしょう。

 鳥や魚には、「匹」以外にも数え方がありますが(後述)、「匹」でも違和感なく使えるはずです。


とう

 主に大きな動物を数える時に使われます。また、変わったところでは蝶も「一頭、二頭」と数える場合があります。


 こちらも魚の数え方ですが、主に売り物や食材としての魚を数える際に使われるようです。

 干物の場合は「まい」が使われているようですね。


 主に鳥を数える時に使われます。ウサギも「羽」で数えることは有名ですね。

 どちらも「匹」でも問題ありませんが、どちらを使うかはご自身の流儀に合わせてどうぞ。


さお

 「竿」とも書きます。

 主にタンスや長持ながもち羊羹ようかんを数える時に使われます。


ちょう・丁」

 主に銃を数える時に使われます。

 元々は長細い物を数える時に使われたようで、槍・くわすき・ろうそくなどに使われることもあります。

 バイオリンも、楽器それ自体を指す場合は「挺」と数えます。オーケストラ等の演奏単位の場合は、「ほん」が一般的のようです。


りん

 車輪や、咲いている花を数えるのに使われます。


はら

 タラコなどの食用とされる魚の卵巣を数える時に使われます。

 筋子すじこも丸ごとならば「一腹」と数えますね。


もん

 大砲を数える時に使われます。

 むしろそれ以外で使われているのを見たことがありません(笑)。




 以上のように、思い付くものをざっと挙げただけでもかなりの「物の数え方」がありますね。

 実際にはもっと多岐たきにわたりますので、興味のある方はご自身で調べてみて、文章力の肥やしとしていただきたいと思います。


 こういった「数え方」は、本来は小学校くらいで習うかと思うのですが、頓着しない方はとことん頓着しないらしく、文章上でも会話上でも「一つ、二つ」や「一匹、二匹」だけで済ませている例をよくお見かけします。

 確かに、それでも伝わると言えば伝わるのですが、場合によっては作品の雰囲気を壊しかねません。


 例えば、戦艦同士の迫力ある戦いの場面で、

「十六門の大砲が一斉に火を噴いた!」

と書くべき所を、

「十六個の大砲が一斉に火を噴いた!」

と書かれたら、やはり多くの方は脱力してしまうのではないでしょうか?


 ぜひとも、「物の数え方」を意識しながら文章を書いていただきたいと思います。


 もちろん、「物の数え方」には少々マニアックなものもあり、完璧に使い分けようとすると、むしろ伝わりにくい文章になってしまう場合も考えられますので、「適度に」ですが。

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