34.漢字表記を間違えると締まらない「たとえ~としても」
「たとえ~としても」という表現があります。
この言い回しは、
「たとえ明日雪が降ったとしても、予定は中止しない」
のように、仮にある事柄が成立したとしても、結果はそれに影響されない事を表します。
以下、いくつか例文を挙げてみましょう。
「たとえ足が折れたとしても、走り続けてみせる」
「たとえ天地がひっくり返ったとしても、君には従わない」
一つ目の例文は陸上選手の言葉のようですが、走っている最中に(万が一)足が折れたとしても諦めない、という不退転の決意が感じられるのではないでしょうか?
二つ目の例文は、「天地がひっくり返る」というまず絶対に有り得ない事が起こったとしても、「君には従わない」という、絶対的な拒絶の意志が伝わってくるかと思います。
意味としては「仮に~としても」や「もし~としても」とほぼ同一ですね。
その事からも分かるように、この「たとえ」は「仮に」や「もし」とほぼ同義の「たとい」から変化した言葉だと言われており、漢字で表記した場合は「仮令」や「縦令」、もしくは「縦」と書きます。
最初の例文の「たとえ」を漢字表記にしてみると、
「
のようになります。
ところが常用漢字表には、この「仮令」「縦令」「縦」を「たとえ」と読ませる例の記載がありません。
その為か、PCやスマホの多くの日本語入力システムでは、上記三つの漢字への変換優先度が低くなっています。
……ここまで書けば、私が何を言いたいか、もうお分かりかもしれません。
先日、昔書いた文章を整理していてこんな一節を見付けてしまいました。
”
例え拳が砕けようとも、お前はここで倒す!
”
「仮令」や「縦令」、「縦」もしくはひらがなで「たとえ」と書くべき所を「例え」と書いてしまっています。
「例え」は『たとえること』もしくは『同じような例』という意味ですから、上記は中々に意味不明な文章になってしまいますね。
恥ずかしいぐらいの熱血台詞なのに、別の意味でお恥ずかしい事に……。
WEB上を少し検索してみると、似たような表記をしている例が多く見受けられますので、こちらも「間違えやすい」表現だったようです。
ただし、気を付けたいのは「例え」という言葉も、「例えば」という形になった場合は仮定を表すので、「仮に」と同じような意味を持つ、という点。
最初の例文を「例えば明日雪が降ったとしても、予定は中止しない」と書き換えても、意味は殆ど変わりませんね。
「仮令」と「例えば」に共通する意味があるからこそ、「仮令」を「例え」と誤変換しても気付きにくいのかもしれません。
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