33.「ぞっと」の意味が異なる「ぞっとしない」と「ぞっとする」

 「ぞっとしない」という言い回しがあります。

 これは、『おもしろくない。あまり感心しない』という意味の言葉で、例えば下記のような使い方をします。


「最近、うちの子供が夜遅くまで遊んでいるんです」

「それはぞっとしない話だね」


 このように、「(子供が夜遅くまで遊ぶのは)感心しないね」という意味で使われるのですが……最近では、この「ぞっとしない」を「ぞっとする」の否定形だと思いこんでしまっている方も多いのだとか。


 「ぞっとする」は『寒さや恐怖などのために体が震える』という意味。

 その否定形という事は、「寒さや恐怖で体が震えない≒恐くない」と言ったところでしょうか?


 これを上記の例文に当てはめると……何だか「夜遊びくらい大した事ない」と言っているようなニュアンスになってしまいますね。

 言葉の意味の取り違えが、思わぬトラブルを招いてしまうかもしれません(苦笑)。



 確かに、「ぞっとしない」は一見すると「ぞっとする」の否定形に見えてしまいますから、間違えてしまうのもやむなし――というか、実際「ぞっとしない」は「ぞっとする」の


 そもそも、「ぞっと」とはどういう意味でしょうか?

 おなじみ「デジタル大辞泉」では、以下のように説明されています。


寒さや恐怖などのために、また、強い感動を受けて、からだが震え上がるさま。


 上記のように、「ぞっと」には『寒さや恐怖』だけではなく『強い感動』を受けて『からだが震え上がるさま』という意味もあるのです。

 つまり、「ぞっとしない」の「ぞっと」はこちらの意味である、という事になるようですね。


 「ぞっとしない=強い感動を受けない≒おもしろくない、感心しない」と言ったところでしょうか?


 近年では、『感動で体が震える』という意味で「ぞっとする」を使っている方は殆ど見かけませんので、「ぞっとしない」の意味を取り違えてしまうのも仕方のない事かもしれませんね。


 とは言え、伝統的な表現である「ぞっとしない」がこのまま「誤用の海」へと流れていく現状は、それこそ「ぞっとしない」のですが……。

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