3.「わ」と「は」の微妙な関係


 女性的な口調を表す為に、語尾に「わ」を付ける事がよくあるかと思います。例えば、

 

「私は煙草を吸いません」


という言葉の最後に「わ」を付けると


「私は煙草を吸いませんわ」


と、どこか女性めいた言い回しになりますよね。


 また、女性的なニュアンスでなくとも「君、凄いわ」「君、面白いわ」のように驚きや感動を表す意味で語尾に付けられる事もありますね。


 この「わ」は元々、係助詞の「は」から生まれた終助詞であるらしく、その成立は中世末期とかなり古いのだとか。


 

 さて、上記を踏まえてのお話ですが、先日カクヨム内で次のような文章を見かけました。


『真冬の只中に湖に落っこちて、もう寒いは冷たいはで散々だった』


 『寒い冷たい』と書かれていますが……恐らくは「寒い冷たい」の誤用であると思われます。この場合、「寒い」と「冷たい」という感覚に伴う驚きや強い感情を表す為に、わざわざ終助詞を付けている訳ですね。だから正しくは、


『真冬の只中に湖に落っこちて、もう寒い冷たいで散々だった』


となるはず。恐らくは助詞の「は」と混同して使用されたのでしょうが、上述の通り終助詞としては「わ」を使う方がより適切(主流)とされているようです。


 また、上記とは逆に助詞の「は」が「わ」と表記されてしまっている有名な例として「こんにちわ」が挙げられると思います。言うまでもなく「こんにちは(今日は)」が正解である訳ですが、「こんにちわ」と書かれると何だか可愛らしい雰囲気があるのも事実。誤用と理解しつつも意図的に「こんにちわ」を使っている作家さんもいらっしゃるのだとか。

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