10.「バトルロイヤル」が「バトル・ロワイアル」に殺される!?

 以前、とある格闘技系のノベルを読んでいた時に、次のような台詞が出てきて一瞬ぎょっとなった覚えがあります。


『決勝戦はバトルロワイアル形式! 最後の一人になるまで戦いぬきます!』


 いきなり「今日は皆さんに殺し合いをしてもらいます」展開か? と思わず身構えてしまったものの、もちろんそんな事にはならず、普通に命のやり取りが伴わない試合が行われほっとしました。


 言うまでも無い事でしょうが、上記の台詞は恐らく「バトルロイヤル」と書くべき所を間違えて「バトルロワイアル」と書いてしまったのでしょうね。

 実は最近、同じような間違いをされている方をプロ・アマ問わず多く見かけるようになってきました。


 まず「バトルロイヤル(battle royal)」を「デジタル大辞泉」で引くと、


"

プロレスリングで、多数のレスラーがリング上で戦う試合方法。

"


とあり、更に「ランダムハウス英和大辞典」を参照すると、


(3人以上が互いに戦う)大乱闘,乱戦;(最後まで戦う)大格闘,死闘.


とあります。つまり「複数人が一度に戦う(試合形式)」という意味ですね。



 対して、「バトルロワイアル」――正確には「バトル・ロワイアル」は、1999年に刊行され、後に劇場映画化もされた人気小説のタイトルです。中学生達が突然に殺し合いを強いられるという荒唐無稽な設定と、「誰が生き残るのか?」という緊張感のある展開が人気を博しました。

 いわゆる「デス・ゲーム」作品の先駆けとして、後年多くのフォロワーを生み出し、更には一部の中高生等が「自分達のクラスメイトでバトル・ロワイアルをやったら」という仮定で二次創作する事が流行った等とも言われています。その影響力の強さから、「デス・ゲーム」系の作品自体を「バトル・ロワイアル系(バトロワ系)作品」と呼ぶ向きも。


 ただし、作者氏ご自身も明言されているようですが、この「バトル・ロワイアル」というのは「バトルロイヤル(battle royal)」の「ロイヤル(royal)」だけをフランス語読みしたもので、全くの造語。初期タイトルは普通に「バトル・ロイヤル」だったのを友人のアドバイスで変更したという経緯があるのだとか。つまり、本来は単語として意味を成さないものなわけですね。


 ですから、『「バトル・ロワイアル」のようなデス・ゲーム』という意味で「バトル・ロワイアル形式」と表記する分には問題ないのですが、ただ単純に複数人が同時に戦う試合形式を指して「バトルロワイアル形式」と書いてしまうのは間違い、という事になります。


 しかしながら、上述の通り最近は後者の方の用法で「バトルロワイアル」という言葉を使っている方が多く見受けられます。最早「バトルロワイヤル」は新たな日本語――いわゆる「和製外来語」になりつつあるのかもしれません。「バトル・ロワイアル」がそれだけインパクトの強い作品だったという事なのでしょうが……「バトルロイヤル」がこのまま、無事に生き残れる事を願うばかりです。


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