【第26回】Small World
タイトル:Small World
発売日:2047/7/12
発売元:Anote
世界のあらゆる低評価なゲームをレビューしていくレビューサイト「The video game with no name」、第二十六回目となる今回は、2047年配信開始、海に沈んだもう一つの地球「Small World」の紹介です。
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記憶を消し間違えたのかもしれません。ここ最近、何をしていても過去の寂しい記憶ばかりが蘇ってくるんです。記憶を消すのは簡単な事じゃない、それはちゃんと分かってはいたんですが…。ゲームの記憶を消したのは、生まれて初めての事でしたから。友人を忘れようとした代償として、自分の記憶が道連れにされてしまったみたいで。楽しいはずのゲームを遊んでいても、突然寂しい記憶が蘇ってくるようになって。うまく、ゲームに集中できなくなってしまって。
「他人の寂しい記憶」を思い出すのが辛くて、それを消してしまったはずなんですけど。その結果として、忘れていた「自分の寂しい記憶」を思い出すようになったというのは…、皮肉な話だとは思いませんか。突然嗚咽が溢れてきたり。突然涙が溢れてきたり。楽になるために縋り付いた人工血液にも、寂しい記憶を抑え込むような効果はありませんでした。仲間外れにされた寂しい思い出が、楽しい思い出かのように錯覚出来ただけのことでしたから。
日を追うごとに、「寂しい記憶」が蘇っているかのようです。あるいはむしろ、「楽しい記憶」を忘れているのかもしれません。さっきもちょうど、自分の行動に茫然としていたところですよ。病院帰り、寂しい記憶が後から後から蘇ってきて…、逃げるように自宅に帰ってきたつもりだったのに。そんな行動でさえも、結局は「家に逃げ帰った過去の寂しい記憶」を思い出していただけだったみたいで。自宅に帰っているつもりでいて、無意識のうちに、実家に帰ってきていましたから。
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こんな場所、実家とは名ばかりの廃墟でしかありません。遊ばなくなったゲームを積み重ね、物置がわりに使っているだけの場所で。ずっと、忘れていたような場所でした。いや、「忘れようとしていた場所」って言った方が正しいくらいなのかもしれませんが。この場所は…、なんとなく好きになれないんです。薄汚れてボロボロになってしまった癖に、姿形だけは昔のまま変わらずにいるのが、どうにも、昔のことばかりを思い出させて。
変わってしまった故郷の中で、この家だけが昔と変わらなさすぎるんです。見渡す故郷の家々は、業者に拡張現実権を売り払ってしまっていて。お隣さんも、そのまたお隣さんも、空家の壁に拡張現実の広告だけが表示されています。新薬被験ツアーに依存性の低い人工肉、よりにもよってお向かいさんには…、激安御葬式プランの広告ときている。狭くて息苦しいばかりだった故郷に、当時の面影は、一つも無くなってしまいました。
お隣さんも、そのまたお隣さんも、昔は拡張現実に否定的で。「我が町から無断美少女を追放しましょう!」だの「表示されていませんか?ARの違法宗教施設」だの、そんなチラシが回覧板でまわってきた覚えがあります。拡張現実に関する権利意識が未成熟だった昔は、他人の敷地に無断で拡張現実を表示しても罰則はありませんでしたから。こんな田舎ほど、そういう揉め事は多かったんです。
それがどうです。時代は変わる。今じゃこの町は、一面の海、海、拡張現実の海。海に沈んでいないのは、最早この家だけになってしまいました。
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ああ、駄目だ。こんな家に帰ってきてしまったがばっかりに、思い出したくもない過去をまた一つ思い出してしまった。そうです、そうだったんですよ。昔このあたりは…、町内一同、ARゲームの反対運動をやったことがありましてね。しかし私の人生には、ゲーム以外の楽しみなんて一つも存在しませんでしたから。近所の人とは分かり合えるはずもなく、次第に故郷の居心地が悪くなってしまって…。私はこの町から、逃げるようにして去ったんです。
驚きました。何の気なしに実家でゲームを遊び始めてみたら。スマートレンズに映るこの家の中が、あたり一面真っ青に染まってしまって。何でこんなものが我が家に表示されるんだ?って、慌てて窓から近所を見回してみたら。最初は、何が何だか分からなかった。お隣さんも、そのまたお隣さんも、家が完全に水没している。一面の海、海、拡張現実の海。小さな小さな自分の故郷が、ゲームの中で勝手に海に沈められちゃっていたんですから!
古い話なんですけど…、2047年に発売された「Small World」って名前のゲーム、皆さんはご存知ありません? 当時は世界的にバッシングされたゲームだったんですが。ああ、そうだそうだ。これは…キリバスの子供が作ったゲームだったかな。いや…、ごめんなさい。駄目だ…、また古い記憶が蘇ってきた…。今はキリバスなんて呼びませんからね…。あれですよ、太平洋連邦はご存知でしょう? あの辺の海のことを、昔はそんな名前で呼んだんですよ。
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Small Worldは2047年発売。値段はたったの1ドルで、「Anote」という開発者が販売していたゲームでした。ゲームとしての本作は、実は特に変わったゲームではありません。この当時から既に「時代遅れ」のシステムとなっていた、位置情報を取得してAR情報を表示するって内容のゲーム。このサイトで紹介したゲームなら「城隍大战」とか、古典の名作で言うなら「PokemonGO」とか。ただ、このゲームには、一つだけ。それらのゲームとは決定的に違う、ある要素が隠されていたんです。
拡張現実を表示するゲームのはずなのに、ゲームを起動しても、拡張現実には何にも表示されなかったんですよ!手抜きで表示するオブジェクトが少ないゲームは珍しくもありませんが、このゲームに関しては頻繁に人工衛星との通信は行なっている形跡はあるのに、表示されるオブジェクトは何もない!ニューヨーク、東京、ロンドン、サンパウロ。世界中のプレイヤーが起動しましたが…、どこの大都市にも、どこの観光地にも、何のオブジェクトも表示されなかったんです!
販売サイトの説明文を読む限りでは…、どうやら世界の名所を実際に訪れて、ポイントを集めるという内容のゲームのようでしたが。そもそも世界中どこの名所を訪れても何も表示はされないんですから、ポイントなんか集めようがない。スクリーンショットを見る限りでは…どうやら世界の名所が、現地に拡張現実として表示されているという内容のゲームのようでしたが。そもそも世界中どこの名所を訪れても何も表示はされないんですから、それも確認なんてしようが無かった。
謎が謎を呼ぶゲームだったからでしょう。リリース直後から、本作はちょっとした話題を呼びました。ゲームに不具合がある事は明白でしたから、「お金を返せ!」と怒り狂った人々がゲームの糾弾を始めたんです。マニュアルもチュートリアルも無ければ、販売サイトにも説明書きすらほとんどない。販売元にメールを送っても…、販売元から返事が戻ってくることは無い。「一体このゲームはどこのどいつが作ったんだ?」と、謎のゲームの謎解きは、こうして始まってしまったという訳です。
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まぁ、バグったゲームも開発者が逃げ出したゲームも、歴史的に見ればたいして珍しい話でもありませんから。当初は本作に怒り狂っていた人々も、「所詮は1ドルを海に捨てただけ」として本作に見切りをつけ、しばらくしてこの話題は終息していきました。しかし話題が終息した後も、一部のマニア達はこのゲームの謎解きに残り続けました。一体何が彼らの冒険心に火をつけてしまったのかは分かりませんが…、彼らはこのバグったゲームで、「宝探し」をしようと考え付いたんです。
自分達が探索した範囲内では、確かにこのゲームは何の拡張現実も表示はしなかったけれど。ゲームがリリースされているという事は…、裏を返せば。この世界のどこかに、開発者がテストプレイで「拡張現実」を表示出来た地域があったんじゃないだろうか。つまりその地域さえ見つけることが出来れば…、開発者がどこの誰なのかを特定することが出来る。それならば、この世界に隠されている財宝をみんなで見つけ出してやろうじゃないかと…、ようは、悪ふざけを始めたんですよ。
宝探しなんて言い繕ったとしても、言ってみれば、これはゲームじゃよくある「バグの粗探し」にすぎません。でも、いくつになっても楽しいじゃありませんか、宝探しは。大海原のどこかに財宝が眠っていて、地図を片手に仲間とそれを探し出す。子供の頃の宝探しなんて、舞台は狭い故郷の町内くらい。冒険仲間と言ったって、見知った地元の友人しかいませんでした。それがこのゲームを遊べば…、宝探しの舞台は世界中になったんです!
ゲームを通じて世界が一つになっていくような感覚に…、私は抑えきれない興奮を覚えました。世界には多種多様な文明があり、それぞれが独自の利害を抱えながら存在しています。文明を超えた相互理解は難しく、対立だって珍しい話じゃありません。しかしゲームを楽しんで遊ぶ私達だけは、「ゲームの攻略」という価値観の下に文明を超えて協力することが出来る。ゲーマーの友人は故郷ではなくゲームの中にいて、ゲーマーの帰属は故郷ではなくゲームの中にある。
当時の私は…世界中の仲間たちと共に、世界を巡る冒険を始めたような気持ちになっていたんです。本当は、狭い故郷で細々とゲームを遊んでいたにすぎなかったんですが。まるで自分が、この飽き飽きした町から解き放たれたような錯覚を起こして。
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開発者の意図しない形になったとは言え、プレイヤーはゲームを楽しく遊んでいました。しかし宝探しは、それでも困難を極めました。財宝は簡単に見つからない方が楽しいに決まってるんですが…、それにしたって、手がかりは何も見つかりませんでしたから。東はニューヨーク、西はロサンゼルスに至るまで、北米の都市部は真っ白。日本も大都市は空っぽで、南米・中東・欧州も全滅。都市部どころか観光名所も空っぽで、探すべき場所の見当すらつかない有様でした。
そうかと思えば… 、役に立たない手がかりはたくさん見つかってしまうのが、この「宝探し」というゲームの面白いところで。実は、オブジェクトが見つかった場所も無いわけではなかったんです。ただ、思わせぶりな「何か」は見つかったんですが…、「何」が見つかったのかまでは、見つけた本人ですらよく分からなかった。一体目の前にあるものが何を意味しているのか、一体表示されているこの場所に何の意味があるのか。まったく、見当がつかなかったんです。
まず最初にオブジェクトが見つかったのは、イギリス北部の海。なんでも戯れに海上でゲームを起動したら、急にあたり一面が血の海になったらしくて。発見者は、「このゲームは呪われている」というタイトルで動画をシェアしていました。次に見つかったのは、アメリカ西部のアイダホとオレゴンの州境。ドローンを飛ばして空撮を行っていたら、スネーク川の中に赤い線が何重にも描かれている地域を発見したとかなんとか。「血濡れの川」というタイトルで、画像は拡散されていました。
発見物が手がかりになるなんてとんでもない。オブジェクトは発見されれば発見されるほどに、ゲームの謎を深めていくばかりでした。インド南部の海岸沿いの町に緑色の棒がたくさん建っている…。エジプトの砂漠に謎の廃墟の幻影が…。ブラックロック砂漠に巨大な石像と思わしきものが…。謎の怪情報は目まぐるしく飛び交いましたが、情報の出どころに一貫性はなく。どこもかしこも辺鄙な場所ばかりで…、他のプレイヤーが確認に行くことが億劫な僻地ばかりでしたから。
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宝探しが難航した理由は、場所の不特定だけじゃありません。独創的と言うか、奔放と言うか、いやいや、この場合天才的とでも言うべきなのか…。言葉を選ばずに言うならば、このゲームで見つかるオブジェクトは何もかも、子供が描いたラクガキみたいだったんです。赤く染まった海だって、血濡れと言うよりは絵の具でただ海を塗りたくったようなもので。川に浮かんだ線だって、血濡れと言うよりは適当に線を引いただけみたいなもんでしたから。
しかし、こういうところが本当に…、冒険心をくすぐったんですこのゲームは…!!発見されたオブジェクトを見た我々は俄然やる気になってしまい、「これはもしやクトゥルー的世界観の作品なのでは…?」とか「これは地球崩壊後の世界を描いたアートなのでは?」などと、各々の願望と何ら変わりない学説を自由に語り合いました。独自の学説を掲げてしまえば、自分の学説の正しさを証明したいしたくなる。このゲームの謎に、我々はまんまと引き込まれてしまったという事になるでしょう。
私だって、馬鹿げた学説を掲げなかったわけじゃありません。私は…おそらくこのゲームは、滅んだ文明を拡張現実で表示しているゲームなのではないかと、ずっと、そう考えていたんです。ホラ、皆さんもこの手の話はお好きでしょう? インド洋に存在したとされる大陸レムリア、太平洋に眠る幻の大陸ムー、大西洋に沈んだ未知の大陸アトランティス…。遥か彼方、海に沈んでしまった伝説の国が拡張現実で描き出されている…なーんて。そんな、夢のある話ですよ。
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驚いたんですよ。何の気なしに実家でゲームを起動してみたら。スマートレンズに映るこの家の中が、あたり一面真っ青に染まってしまって!一体これはどういうゲームで、何でこんなものが我が家に表示されてるんだ?って、慌てて窓から近所を見回してみたら。最初は、何が何だか分からなかった。お隣さんも、そのまたお隣さんも、家が水没している。一面の海、海、拡張現実の海。小さな小さな自分の故郷が、ゲームの中で勝手に水に沈められちゃってたんですから!
思わず、狭い故郷を走り回りました。見飽きてさえいたはずだった故郷の風景を、写真にたくさん収めました。水没した故郷の写真を、喜んでSNSにアップロードしましたよ。「大発見だ。日本のこの位置座標では、Small Worldは大量の水を描き出している」って。私の発見に、他のプレイヤー達も驚きの声をあげていました。「なんてことだ、このゲーム内での日本は、既に海の底に沈没したことになっているのか」って。皆、口々に、そう呟いていました。
その時、はっと気付いたんです。このゲーム内で発見されたオブジェクトは、なんとなくですが、海面に表示されているものが多い。一方で、私の故郷は日本の内陸にあるはずなのに、このゲーム内では水没していました。だから、こう思ったんです。おそらくこのゲームは、海に沈んで滅亡したはずの異文明が、生き残った我々の文明の代わりに、拡張現実の中に存在しているゲームなんじゃないかって。このゲームを通して見える地球は、海に沈んだ文明の視点なんじゃないかって!
既に海の底に沈んでしまった異文明が、突如として我々の文明社会にあらわれ、拡張現実の中で蘇る…!こんなに…こんなに冒険心に火をつける話がありますか!? レムリアも、ムーも、アトランティスも。所詮は作り話なうえに、海に沈んだ文明なんか蘇るわけがないんですけど。拡張現実の中でなら…、海に沈んだ文明でも、海の上に描き出すことが出来る。そんな願いを、開発者はこのゲームに込めたんじゃないか。私は、そんな開発者のメッセージを、ゲームから聞き取ってしまったんですよ!
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私以外にも、同じような学説を提唱している人は少なくありませんでした。海上に表示されているオブジェクトの目撃情報が集まるにつれ、徐々に「このゲームがどこにオブジェクトを集中的に表示しているのか」が分かってきたんです。まずはモロッコ沖、おそらく何か都市のようなオブジェクト群が凄い密度で表示されている。 あとはインド洋、ここも凄い密度で都市が描かれている。あとは太平洋も全域も凄かった。海上全域にまたがって、とても緻密に都市が描かれているようでしたから。
もうここまでくれば、自身の学説を疑うことは出来ませんでした。そんな場所に都市を描く必要は一つしかない。太平洋に沈んだムー!インド洋に沈んだレムリア!大西洋に沈んだアトランティス!Small Worldは、それらを海上に描き出しているゲームに違いない!バグっているなんてとんでもない!伝承に過ぎない水没した文明を、拡張現実の中で復活させようとしているに違いない!プレイヤー達は皆、ゲームちりばめられていた数々の謎に、揃って称賛の声をあげました。
なんてゲームだ。これはゲームの域を超えた、一つの冒険譚だ。もし仮に誰も拡張現実に気付かずにいたら、このゲームの真実は世界に忘れられていたかもしれない。それでもなお、ゲームの中に余計なヒントを入れなかったという作品性の貫徹は驚嘆に値する。これだけプレイヤー達が盛り上がっているというのに、開発者が名乗り出ないのも実にアーティストじみている。なんて末恐ろしいゲームなんだと、プレイヤーは皆、それはそれは大いに盛り上がりましたよ。
ゲームを遊んで盛り上がっているだけで、止めておけばよかったんです。自分達の学説が正しいかどうかを確認しに海に乗り出すなんて、ゲーマーの域を超えて、冒険者のやることですから。実際に海上に出て拡張現実を確認し、そこに一体どんな都市が描かれているのかを確認しようじゃないかって。プレイヤー達の一部が、モロッコから大西洋に船を出す事を計画し始めてしまったんです。まるで自分たちが冒険者で、そこに水没したアトランティスが浮かんでいると勘違いをして。
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帰ってきた冒険者たちは、暗い表情をしていました。
他のプレイヤーは喜々として冒険の結果を尋ねましたが、彼らは当初、「あんまり揉め事を増やしたくない」とかなんとか、よく分からないことばかりを呟いて回答をはぐらかそうとしました。そこに一体何が表示されていたんだ、君たちは一体何を見たんだ。彼らの意気消沈ぶりを見て、もしかしたら自分たちの推理が外れていたのかとプレイヤーは不安に陥りましたが…、冒険者たちが言うには、どうやら「予想が外れていた」と言い切れるわけでもないらしかった。
じゃあ一体、海の上には何が沈んででいたのか。冒険者たちは、「自分たちが思うには」と前置きして、重い口をあけました。彼らが言うには、そこには確かに、都市が沈んでいたらしいんです。子供の落書きみたいなヘッタクソなものだったけど、確かに都市が沈んでいた。しかし、それはアトランティスではなかった。海中にはおそらく、「エルサレム」が沈んでいたっていうんです。ずっとずっと東にあるはずのエルサレムが、そこに沈んでいたって。
エルサレムが存在しているのは北緯31度47分東経35度13分、一方のアトランティス発見地点は北緯31度47分西経13度13分。いくらゲームがバグっていると言ったって、二千キロ以上も東にあるエルサレムの位置を間違えるようなことがあるわけないだろう。最初は誰もが彼らの発見を一蹴しましたが、彼らは目を瞑って首を振るばかりでした。それどころか、早く目を覚ませと言わんばかりに…、海に沈んだ「アトランティス」の映像をアップロードしてくれました。
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海には確かに、私たちの予想通り、都市が沈んでいました。しかし残念ながら、そこはアトランティスではありませんでした。海の上から顔を出している白い物体は…、おそらくは嘆きの壁。その上に見える金色の建物は…、おそらくは岩のドーム。離れた場所にあるのは、まさしく聖墳墓教会。つまりその近くにある山場は…、つまりは、ゴルゴダの丘か。どれもこれもが子供の落書きのような造形をしてはいましたが…、海に沈んでいたのは、我々の知るエルサレムそのものでした。
エルサレムとアトランティスとじゃあ、経度が46度もずれている。普通に考えて、わざと間違えようとしない限りはこんな間違いをする訳がありません。しかし、地球上の全てが全て西に46度ズレているとするなら…、腑に落ちる出来事は山の様にありました。アメリカ合衆国が西に46度ズレれば、そこにはムーがあった太平洋がある。東南アジアが西に46度ズレれば、そこにはレムリアがあったインド洋がある。欧州が西に46度ズレれば、そこにはアトランティスがあった大西洋がある。
中南米は太平洋に沈み、アフリカは大西洋に沈む。全てが海に沈んだ世界では、いくら陸地を探したところで拡張現実が表示するものなど存在するわけがありません。陸地から陸地に移動してしまうのは…、中国の奥地に移動する東アジア、北欧にやってくるシベリア。アフリカの砂漠に移動した中東、アラビア半島南部にずれ込んだインド。どこもかしこもプレイヤー人口と都市の数がちぐはぐで、これまで探索などまったく考えもしていないかった場所ばかりでした。
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イギリス北部の海に浮かんでいた血濡れの海域は一体何だったのか。そこには本来モスクワがあるはずで、真っ赤な海などモスクワにはありません。モスクワにあるのは赤の広場、別に真っ赤な広場というわけではありません。スネーク川に浮かんでいた血濡れの線は一体何だったというのか。そこには本来ボストンがあるはずで、血濡れの線などボストンにはありません。ボストンにあるのはフリーダムトレイル、単なる落書きなどではありません。
海に沈んだエルサレムの発見に、プレイヤー達は大いに反発しました。子供の間違いじゃあるまいし、間違いにしても馬鹿馬鹿しすぎる。アメリカのプレイヤーは「ワシントン記念塔が国道101号沿いに浮かんでいるのを見てみたいよ」と鼻で笑いましたし。インドのプレイヤーは「インドはアラブを制圧しに行くなんて誇らしい限りだ」と信じようともしませんでした。中国のプレイヤーは「日本を我が国の山中いただけたことを光栄に思います」と冷ややかな笑みを浮かべました。
全員が全員、ぞっとしました。いや、だって、そりゃそうでしょ。これがもし本当に、単なる子供の間違いで。拡張現実とは言え、世界が勝手に、他人の土地に移動してしまったとするなら。拡張現実ってのは原則、その土地の所有者に表示・改変の権限があるんですから。いくら、単なるゲームの中とは言え。宗教的に重要な教会や施設。政治的な対立を抱える国の建築物。イデオロギーや戦争の記念碑。そうした全ての建築物が、今や他人の手に渡ってしまったことになるじゃありませんか。
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「海に沈んだエルサレム」の発見の一報が世界を駆け巡るまでに、長い時間はかかりませんでした。所詮は単なるゲーム内の出来事でしたから、大騒ぎにはならなかったのが幸いでしょうが。所詮は単なるゲーム内の出来事とは言え、不快に思う人は少なくはありませんでした。海に沈んだエルサレムに悪ふざけで悪戯をするため、あるいは海に沈んだエルサレムを排除するため。多くの人々がモロッコ沖合に漕ぎ出して、憲兵隊の指示を無視して、そこで小競り合いを起こし始めたのです。
小競り合いは、最初に発見されたエルサレムだけには留まりはしませんでした。「西に46度」という法則性さえ知れ渡ってしまえば、世界中どこでだってオブジェクトの表示位置は予想出来てしまうのです。世界は、ズレてしまった拡張現実の世界への対応に苦しみました。表示されている拡張現実を管理する権限は土地の所有者にありますが、突如として故郷にあらわれた異文明の建築物やらを、一体どう扱っていいのかが分からなかったからです。
自国の宗教施設に上に、別の宗教の施設が覆いかぶさる。反目しあっている国のど真ん中に、自国の政治施設が表示される。自国の大通りの上空に、相容れないイデオロギーの標語が浮かんでいる。拡張現実は一体誰のものなのでしょう。答えは簡単、拡張現実が表示されている土地の所有者です。しかしそこに表示されている拡張現実が…、仮に、本来は別の誰かのところに表示されるべきものであったとするなら? なんとなく、簡単な答えを、出しづらくなってしまうじゃありませんか。
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このゲームの真実が明らかになってからと言うもの、世界では子供じみた揉め事がたびたび発生しました。
東海岸が西海岸に移動する程度で済んだアメリカは、まだまだ救われていた方です。国道101号沿いの山中で発見されたワシントンDCは、アメリカ中から大量の物好きたちを集めました。世紀の大失敗ゲームが表示した拡張現実のワシントン記念塔を見てみたいと、都市部からやってきた観光客たちがドローンを何十台も田舎町に飛ばしたのです。当然地元の人々は降って湧いた騒動に怒り心頭で、州政府に「ワシントン記念塔をで妨害パルスで消し飛ばしてくれ」と乗り込んだと言われています。
自国がスーダン近辺に表示されたインドは、宗教観の違いから現地の人々に「拡張現実のインド風建築を削除してほしい」と要請を受けました。しかし拡張現実は土地の所有者に管理義務があるため、文句を言われてもインド大使館は何をすることも出来ず。とは言え、「建物が不快なら自分で妨害パルスを撃ち込んで対応してください」なんて正直な対応をしたところで、消した方も消された方も、誰もが不快に思うのは目に見えていましたから、いつまでたってもこの問題は棚上げされていました。
我々の住む日本だって世界の一部ですから、当然この問題の当事者です。日本は中国の山奥にそっくりそのまま移動してしまいましたから。法隆寺から歌舞伎座に至るまで、予想通り現地の人々のオモチャになりました。調子に乗った現地の若者は、拡張現実の国会議事堂に「小日本」と落書きするため、他人の土地に超強力な射出機で妨害データを発信。何も知らない土地の所有者の爺さんは、若者が人の家に妨害電波を撃ち込んできやがったと、何度も何度も暴力沙汰を引き起こしました。
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それでも、まだ。これはゲームの中の出来事にすぎないと、私は思っていたんです。
ゲーム内で日本が海に沈んだところで、別に私の生活が変わるわけでも、実際に故郷が海に沈んだわけでもありません。ネットニュースの向こう側で起きていることなんかに、いちいち関心を持っている人間なんかいませんから。
ただ、私が住んでいるこの田舎町も、もちろん世界の一部で。西に46度、おそらくはどこか中国の山奥、西の彼方に移動してしまっていましたから。世界が移動した影響を、受けないわけが無かったんです。
回覧板を見て、驚愕しましたよ。そこには、私がSNSにアップロードした「海に沈んだ故郷」の画像が何枚も掲載されていて。ゲーム内で水没させられた我が町について、市役所が強い抗議を考えている、なんて話が載せられていましたから。
世界に不和の種を撒いたSmall Worldの、日本で唯一拡張現実が表示される町。当時故郷は日本中の注目を集めてしまいましたから、どうしたって、何らかの意思表示をしなくてはいけなかったのでしょう。
「人の故郷を、勝手に海に沈めてもらっては困る」
回覧板には、そんな当たり前の話が、ポップ体で書かれていました。
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Small Worldの開発者が「謝罪表明」を出したのは、海に沈んだエルサレムが発見されてから三か月後くらいの事でした。これくらいの時期になるといくら対応が遅い役所でも非難声明くらいは出すようにっていましたから、開発者の耳にも不評は届いてしまったのでしょう。Youtubeにアップロードされた動画の、泣きそうな表情をした開発者の顔は…。やっぱりと言うか、まさかと言うか。謎は解けてみれば、実にあっけないもので。おそらくは10歳くらいの、涙をこらえた幼い少年でした。
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開発者の少年曰く、Small Worldというゲームは、彼が勉強の一環として開発したゲームだったそうです。彼の故郷であるキリバスは世界でも有数の移民国家ですから、世界の地理を勉強したいと思うのは…、とても立派な話で。彼は数年前からコツコツと、暇を見つけては世界の歴史遺産を落書きし、それを3Dモデル化して保存していました。そしてある日のこと。たまりにたまったコレクションを、位置座標を利用して実際の地球と重ね合わせて表示するゲームを、彼は思いついたんだそうです。
お父さんの協力もあってゲームはすぐに完成にこぎつけましたが、テストプレイの段階で、大きな問題が発生しました。彼が最も描きこんだはずの愛すべき故郷キリバスに、拡張現実が何も表示されなかったと言うのです。彼は何度も故郷の位置座標を確認しましたが、自分の家の周囲にはいつまでたっても何のオブジェクトも表示されることはありませんでした。バグかもしれないと思った彼は、位置座標の計算に、「無理やり世界を西に46度ずらす」という処理を追加しました。
彼は動画内で、しきりに謝罪の言葉を述べていました。ごめんなさい、世界の人たちを喧嘩させてしまってごめんなさいと。「二度とこんなゲームは作りません」と泣いて謝って、この処理を削除するアップデートを行う事を、世界に約束してくれました。しかしながら、一体自分が何故間違ってしまったのかまでは…、おそらくは、分かってはいないように見えました。それを見ていたプレイヤーの全員に、彼が一体何を間違えたのかが、すぐに分かってしまったと言うのに。
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彼が生まれるよりも前、2034年。彼の故郷にあったのは、単なる海でした。何も存在しないただの大海原に、メガフロートの土台を築き上げ、突貫工事の海上都市を作り上げ、世界はそこに「太平洋連邦」と言う名前を付けたのです。ナウルの西、ミクロネシア連邦の南。当時人類が海上都市を建設することが出来た、ニューギニア島からの限界の距離の海域。北緯1度53分東経157度24分。世界はここに、水没するキリバスの国民の移住させることを決定したんです。
キリバスとは、現在太平洋連邦がある位置座標から東に46度、かつては北緯1度53分西経157度24分の場所に存在していた島国の名前でした。正確には、その場所にはキリバスの離れ島である「キリスィマスィ島」という島が存在していて、おおよそ5000人ほどの人々が暮らしていたと言われています。まぁ、私も細かいことまでは知りません。今は政府は太平洋連邦の構成国として吸収されて、制度上の存在でしかありませんし…、ニュースでしか、見たことのない国でしたから。
海上都市の建設が始まったのは…、キリバスの水没が決定的になってから、数年後の出来事だったと思います。海抜数メートルしない国土の全体で、海水が地下水を侵食したとか何とかで…、時代の流れとともに、キリバス本土はあっという間に海に沈んでしまったんです。他国の土地の購入や集団移民、ニュースではいろいろな方法が議論されていたような覚えがありますけど…、正直言って、キリバスという国はいつの間にか無くなってしまったという印象でした。
海上都市という選択肢だって、当時はかなり馬鹿馬鹿しく思われていた選択肢だったんです。誰がお金を出すんだという問題もありましたし、技術的に可能なのかという問題もありましたから。ただ、世界中どこの国であっても、10万人を超えていたキリバスの国民を移民として迎え入れるのは…、難しい決断でしたから。新しく出来る海上都市で「キリバス国民」として生活を続けてもらうことが出来るのなら、それが揉め事を避ける最善の方法だと思われたんです。
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いつまでも変わらない世界の中で、唯一彼らの故郷だけが、昔と変わってしまったんです。海に浮かんでいた島々は、次々に海中に沈んでいって。ギルバート諸島も、フェニックス諸島も、島の残骸だけが水面に浮かんでいます。誰も住まなくなった島々であっても、島民は今も生き残り続けていて、現在に至るまで「島民意識」を保ち続けている。だからこそ開発者である少年は、自分の生まれ故郷が「キリバス」だという事を、ちゃんと理解していたのでしょう。
彼は確かに、キリバス人です。それは正しい。しかし、彼が生まれ故郷だと思っているキリバスと、彼が住んでいるキリバスの位置座標は、残念ながら同じではありません。何故ならかつて世界中が、「あなた達の故郷を維持することはもうできない」と、彼の両親たちに勧告したから。その位置座標が示す場所は…、遥か彼方の海の中。とうの昔に海に沈んでしまった、島々の残骸が眠っているだけの場所。今はもうそこには、キリバスなんて国は存在しません。
キリスィマスィ島 1° 53′ 0″ N, 157° 24′ 0″ W
太平洋連邦 1° 53′ 0″ N, 157° 24′ 0″ E
その差は実に数千キロ。彼が無理矢理キリバスの拡張現実を太平洋連邦に表示しようと思ったら…、世界の大半が海に沈んでしまう計算になります。それは、ダメなんですよ。許されない。現にこのゲームを通じて、世界では多くの揉め事が起きました。こんなゲームさえ無ければ、誰も異文明のよく分からない事情なんかに頭を悩ませずに済んだのにと、迷惑を被った人々は口々に不満を呟きました。当たり前ですよ。人の故郷を、勝手に海に沈めてもらっては困るんですから。
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酷いもんでした。開発者が少年だったこと、その少年が泣いて謝ったこと、揉め事ばかりを引き起こしたゲームの正体が、単なる少年の凡ミスに過ぎなかったこと。Small Worldというゲームの謎がすべて明らかになった時、そこに残ったのは…「バツの悪さ」だけでしたから。人間、自分が相手に無理強いをしてしまった事に気が付いた時、とれる態度は一つしかありません。このゲームについての一切を出来るだけ考えないようにして、早めに忘れようとしたんです。
ゲームを楽しんで遊んでいたはずのプレイヤー達は、自分たちが少年の謎を暴いてしまったことに罪悪感を感じ、いつの間にやら誰もこのゲームの名前を口にはしなくなりました。ゲームに怒り心頭だった反対派の人たちは、自分たちが少年の謎を追いつめてしまったことに罪悪感を感じ、いつの間にやら誰もこのゲームの名前を口にはしなくなりました。過去の寂しい記憶なんて、すぐに忘れてしまうのが人生を楽しく生きるためのコツでしょう?
ただ、残念ながら。今の私と同じで。「過去の寂しい記憶」は忘れることは出来ますが…、消すことは出来ません。世界中の誰もが忘れてしまったとしても、沈んでしまった島はいつまでも海中に残り続けましたし。ご近所の誰もが忘れてしまったとしても、廃墟となった我が家は故郷に残り続けました。そしてこのゲームもまた…、誰もが存在を忘れてしまっても、消えることはありませんでした。しばらくして少年は、世界を正常にするための修正アップデートを行ったんです。
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ただ、それでもなお。本作は、完全にバグが修正されたわけではありませんでした。もしかしたら…、彼もこのゲームの事を早く忘れたかったのかもしれませんし。もしかしたら…、これは彼なりのメッセージだったのかもしれませんが。彼はこのゲームを修正をするのに、単純に「世界を西に46度ずらす」という処理を削除しただけで終わらせてしまったんです。ここを削除しただけでは、世界は確かに元の位置に戻るかもしれませんが…、根本的な問題は、解決されずに残されてしまう。
修正後のSmall Worldを太平洋連邦で起動しても、そこには何の拡張現実も表示されなかったそうですよ。何故なら本作は、その位置座標にあるのは単なる海だと解釈しているから。少年が描いた太平洋連邦の風景は、東に46度ずれた場所にある、沈んだキリバスに重なるようにして表示されている。つまりはまだ、このゲームはバグったまま。バグによって数十年ぶりに地上に蘇ったキリバスは、世界中の総意によって再び、海に沈められてしまったってことになる。
ゲームがアップデートされたという一報が出回った数日の間だけは、少しだけ、みんながこのゲームの事を思い出してくれたような覚えがあります。「これで不和の種は無くなったな」みたいな、そんな反応がほとんどだったような気がしました。それこそ世界中、ありとあらゆる文明圏の人々が、揃いも揃って同じような反応をしていたような気さえしました。あれだけ対立していたくせに、いつの間にやらみんな一つになって、同じことを言うようになったんだなと思いましたから。
世界には多種多様な文明があり、それぞれが独自の利害を抱えながら存在しています。文明を超えた相互理解は難しく、対立だって珍しい話じゃありません。しかしゲームを楽しんで遊ぶ人間たちだけは、「ゲームの攻略」という価値観の下に文明を超えて協力し合うことが出来る。その、はずだったんですけど。ゲームを楽しんで遊ばない人たちですら、「ゲームの攻略」という価値観があれば文明を超えて協力出来てしまうんだなと分かったら、なんとなく、笑いがこみ上げてきてしまって。
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ああ、駄目だ。こんな家に帰ってきてしまったがばっかりに、思い出したくもない過去をまた一つ思い出してしまった…。そうです、そうなんですよ。今このあたりでこのゲームを起動しても、まったく何も表示されないんです。ゲームがバグっているからってわけじゃありません。こんな田舎、世界の誰も興味があるような場所じゃありませんから。正しい位置座標に修正されてしまったバージョンじゃ、何も表示するものが無くなってしまったんです。
故郷が海の底に沈められるなんて気分が悪いって、当時は役場の人もカンカンに怒ってましたけど。いっそ海の底にでも沈んでいた方が、何もない田舎よりはマシじゃないか…、なんて。当時は、そんな事を考えていました。考えていた、はずなのに。不思議なものです。こうしてここにいるだけで、寂しい記憶がどんどん蘇ってくる反面…、帰る故郷がまだ残っていたという安心感もある。「故郷が拡張現実の海に沈まなくて良かった」なんて、そんな気持ちがこみ上げてくる。
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この場所は、どうにも好きになれないんです。ただ、嫌いってわけでもありません。この場所に帰ってくると…、なんだかこう、諭されているように感じてしまうんですよ。お前の人生には、ゲーム以外の出来事も存在していた事を忘れるなと、まるでそう言われているようで。ゲームが無くても自分は故郷で幸せに生きていけたかもしれないし、ゲームが無くても自分は故郷で友人を作ることが出来たかもしれない。もしかしたら今からだって、自分は故郷に帰っても良いのかもしれない。
そう考えると、なんだかバツが悪くて。
2116/1/30 (Article written by Alamogordo)
了
The video game with no name 赤野工作 @Alamogordo
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