甘柚

春の港街・はるまちに住む少女はるこ。 おむすび、たまご焼き、さといもの煮ころがし――彼女がつくるおべんとうは、たいせつなひとの門出を送るためのものだった。 『はるのあけぼの』（…

冬が散るころに子を喪ったわたしは、それからというもの、寝たり起きたりをくりかえしていた。 そんな奥方の前にあらわれたのは、はるまち唯一の〈春医者〉だった。 明治～昭和初期ごっち…

とある水族館に夏の日から展示され始めた「人魚」。 彼女は、他の水族館にいる人魚のように話をしたり踊ったりしない人魚だった。 分厚い水槽の向こう側にいる彼女の声を聴くことを許された…

美しい女子中学生が転校してきた。 スーパー美少女転校生はクラスの人気者。 クラスの端っこにいるイイダとキクチ。 どうやらその美少女は、ちょっと変わっているみたい？ ※コメディ要素…

明治時代のはじめ、ふたりの少女はお祭りの夜に赤いドレスの金魚と出会う。 見えない金魚が寄り添う沙子と、見えないはずの金魚が見える文子。 文子は、金魚に選ばれたいと願っていた。 …

夜空の瓶詰売ります。夜空が恋しい方、ぜひどうぞ――。 その小さな村は夜空の瓶詰の産地。 十歳になれば、やっと瓶詰作りに参加できる。 ジェールは初めての瓶詰作りに『夜空の泉』と向か…

時は大正十年（1921年）。東京府の高等女学校に通う文学少女の澄子は、没落する家の再興のために成金御曹司との望まぬ縁談を強いられていた。そんなある日、旧校舎の機械室を占拠して怪し…

なにかを食べると涙が出てしまう私と、どこまでも損で優しい彼と、自分勝手でサイテーな世界のお話です。

僕は、夕暮れどきの駅のホームでその静かな男と出会った——。 医学生の「僕」、佐々山譲（ささやまじょう）と十九世紀イギリスの湖水地方に住む「私」、レヴィン・アンドリューズ。二人の…

1985年の空気は冷たい。1995年の僕が、初恋の女の子を救いに行く。代償は「必ず発砲される拳銃」と「ペンギンを燃やすこと」。煙突からもうもうとすす立ち上る煙。空気の中に変なもの…

☆ビーズログ文庫にて書籍化、単行本発売中です！ https://kakuyomu.jp/publication/entry/2020051501 「失恋した。この気持ちは聖良ち…

お嬢様育ちの「わたし」は教育意識の高い母親に育てられ、友達もいない世間も知らない内気な女の子でしたが、中学にあがると、母親の束縛は少し緩まってちょっぴり自由が生まれました。そんな…

「どうだった？」そう尋ねる母に、「ごめんなさい、盗まれちゃって」沙也香は頭を下げた。母が大切にしていた、ダイヤモンドの指輪が偽物だったが、それを告げることができず、嘘をついた。 …

確かに恋をしていたと気がついた時、 彼女の恋は終わりを告げた。

誰もが感じたことのある「ノスタルジー」をテーマに、失われた初恋とその顛末、そしてはじまりを書きました。掌編連作。

過去の記憶が変異し、やがて患者を蝕んでいく病『精神癌』にかかった恋人と過ごす、平成最後の夏の話。

西瓜の種を飲み込むとお腹で西瓜ができる

南国の珊瑚島。人魚に呪われ洞窟に籠められた少女・シギラは、右半身に鱗を纏う青年・カナサに助け出される。龍神の寵愛を身に受けたカナサに思慕と羨望を抱くシギラ。カナサの付き人・ユルも…

　幼いころの不幸の記憶を理由に、町に駐留する憲兵隊を苦手に思っていた十七歳のリュンヌ。彼女はある日、あたらしく町にやって来た憲兵隊の大隊長エルネストと出会う。彼にたすけられるごと…

平凡で退屈な日常に生きる僕。だけど、桜が満開のこの季節になると、どうにも落ち着かなくなってしまう。原因はきっと幼い頃に過ごした、あの懐かしい思い出の場所にあるに違いない。どうして…

　突如観測された、ヒトが本になってしまう『本化現象』。初観測からわずか半年で多くの人々は本となり、世界は緩やかな終末を迎える。残された人々は自衛隊の指示の下いくつもの共同体を形成…

付き合いたての彼女の香菜と一緒に台湾旅行に出かけた時のこと。そこで入った一軒の古びた食堂。魔法のスパイスとともに、魔法の夜が始まる――

僕と会社の先輩八尾さんは、蝉時雨に降られ、浮かされた。 短くない時間を過ごしながら、しかし予定通り別れはやってくる。 だけれど、夏は永遠に巡る。彼女が仕組んだ通りに――

『カクヨムやグーグルアナリティクスを使ってみて気がついたこと』というエッセイのコンテスト情報や解析を独立させようかと思い新たに作成しました。 カクヨム内で実施されているコンテス…

鯨が空を飛ぶようになった理由を知るさかな。 鯨のお世話をする少年。 かみさまに囚われた少女。 鯨の最後を見送る人びと。 窓硝子に映る鯨と出会った少女。 空を優雅に泳ぐ白い鯨に纏…

北の民の少女リムセは、シラカンバの森カントコトロへ足を踏み入れる。彼女をいざなうのはシラカンバの化生、月神の御使いである青年。リムセは彼に、胸に秘めていた希いをうちあけるのだが—…

国を鎖していた時代は終わり、外つ国の文化が流れ込んできた時代。 外つ国の文化に囲まれた女学校と寄宿舎のなかで、少女たちは生活を営んでいた。 親愛なるあなたへ これは、どこか…

江戸時代が終わりを告げ、新しい時代が始まった頃、 女学生だった”わたし”には大切な人がいた。 大切な彼女の、話をしよう。

恐ろしき悪魔が、人間に復讐を誓うまでのお話。 我々は今現在も、奴らとの戦いのまっただ中にいる。 ※プロの声優さんの朗読で動画になりました。こちらもぜひ。 ＜朗読＞かわいいの刑に…

【『5分で読書 驚愕のミライ』収録作】今よりも少しロボットが普及した近未来の日本。親に捨てられ、ロボットによって育てられてきたという『ロボット少女』のミライのニュースがセンセーシ…

【続編連載中・第一部完結済み】 お人好しパティシエがお客の悩みを癒す、おいしいヒューマンドラマ。 中部地方にオープンした『魔法菓子店　ピロート』は、お人好しのパティシエ・蒼衣と…

「きっと誰かも同じことを考えている。」 それが確信に変わるのって、誰かが同じ考えを、力強く言ってくれた時だと思うから。 私は自分の仲間を探すために、この小説を書きました。

白い部屋で、『世界のため』に監禁されている少女は、小さな窓から誰も見つけていない星を探すことにしました。 誰も見つけたことがない星には、自分の名前がつけられると知ったからです。 …

「夢を」の書き直しです。だいぶ変わってます。「夢を」は非公開にしましたが、またいずれ公開します。 〉追記：プロローグ消しました。（9/10） 不況の煽りに職を失った私は、心機…

交通事故で両親を亡くした朔と律。引き取られた祖父母の家で二人は、平穏な日々を過ごす。——————あの瞬間までは。

大学の部誌に載せたもの。「彼女」と「彼」、「僕」と「私」の物語。

【電撃の新文芸より、書き下ろし章多数を含んだ全6巻発売中です。書籍3巻の80%くらいまで掲載】 ―― 全ては書き換えられる、無数の、そして無名の物語だ。 「俺の達成者としての…

魔性に堕ち、封印された神。人々への恨みだけで生きていた彼女は、白装束の男に解放される。 恩讐の魔性。 対魔の大刀。 復讐に燃える魔性の行き着く先は。

「戦争」と「平和」を描く社会派群像劇。 長年にわたり紛争を続ける二カ国の国境線――通称ブラッドラインで、世界的歌手である「Ｍ」の射殺体が発見された。 アメリカ、ロシア、日本―…

煉瓦工場で働くわたしは、錆びついたバルコニーの手摺の上にジャコウアゲハの幼虫を見つける。わたしは彼女にエマと名付けた。きっと美しい蝶になるだろう。 夢と現実の融け合う幻想掌編。

男は高層ビルの屋上から下界を見下ろす。 女はフェンス越しに男と対峙する。 人はなぜ生きるのか。 なぜ生きねばならないのか。 これは、それを問うだけの物語。

君は僕を連れてきた。暗影が踊る海辺へと。 「こんな私でも、好きでいてくれる？」と、君は問う。 僕は答える——。

自殺を決意した横澤夏恋は屋上に足を運ぶが、「哲学の議論をしたい」と怪しげな男に呼び止められる。男の真意がわからないまま、哲学について話して——彼女は「恋」心を抱いていた。

俺の本山川小説をくらえ

　2078年、東京。 　少子高齢化に伴い、ヒト型他律ロボットhIE(humanoid Interface Elements)が普及した近未来。 　戦闘サイボーグの少女、シロガネは…

今日は死んでしまった君が帰って来る日だ。だから、僕は部屋を掃除して、料理を作り、ゲーム機を引っ張り出して、そして、夜の営みの準備をする。 僕は君が帰ってくるこの日を、本当に心待…

突然、「死ねばいいのに」と言われて、「よし、死のう」となる人間は居ないと僕は思うので、つまり、君が言う「死ねばいいのに」という言葉には、きっと何の意味もないんだよと、僕は極めて論…

初めての告白、初めてのキス。 時々、心の状態とはちぐはぐなことを考えている、高校生の初恋。

子供の頃に拾ってきて、実家で飼っていた猫を思い出しながら書いた短編です。