蝉時雨に沈む

作者 坂水

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★★ Very Good!!

定められたタイムリミット。蝉の羽化に例えるには、あまりにもがんじがらめな未来。
息詰まるほどの蝉時雨に浮かび上がる、一人の男と一人の女の一瞬を、よろめきの底に流れる感情を、恋や愛と呼ぶのはおそらく間違いなのだろうけれど。
その最後に、彼女が何を思い仕掛けたものか。蝉時雨に浮かされた彼へ刺した棘は、いつか彼の致命傷となり得るもので……。
息詰まるような大人たちの物語。

★★★ Excellent!!!

まとい付くように夏の暑さを感じる文章。本当に聞こえてくるような蝉時雨。不穏で、どこか居心地の悪くなるような、不純物めいた記憶。主人公の人生に、静かに楔が打ち込まれていくようにも読めました。

これほどまで生々しい夏は、なかなか描けないと思う。

★★★ Excellent!!!

アマチュア作品にはアイデアや着想が作品の骨に上手く繋げきれてない『とりあえずこんなん出来ました☆』な作品も多い中、この作品は蝉時雨というシンボルを多面的に各所各所にいやらしくなく巧みに織り込んでいて非常に技巧が感じられる作品でした。

また、ほんの一言、ほんの数瞬にその人のなりや本心をさり気なく印象的に表現するというのも滅茶苦茶高等テクニックだと感じました。

キャラにもラノベ的な魅力があって読みやすくていいです。

くそぅ、こんな短編書いてみたいなぁ…

★★★ Excellent!!!

蝉は必ずどこかにいる。でも、見つけられない。

特にこの言葉が胸に残ってます。
淡々とした一人称の語り口のおかげで、盛況な夏ではなく、陰りある哀愁の夏の雰囲気が引き立つ。

先輩がどんな人だったのか。掴み所のない人って魅力的ですよね。でも、小説という文字だけが頼りの作品では、そういった人物を描くことが難しいんです。
ただ、この物語では、先輩のミステリアスな雰囲気がちゃんと醸し出ていた。

蝉、という夏の一大風物詩を使った、少しだけ大人の夏物語。

素敵な物語をありがとうございます。


にぎた