人を忘れた少女は自らを機械のように扱った。心はなく涙を流すこともない冷徹な機械のように。
そして、ある組織はそれを是として少女を使う。
だが、そんな彼女の心を照らす光があった。でもそれは人のよってもたらされたものでも、ましてや彼女を使う組織からもたらされたものでもない。
それは人を模倣しながら人の心を持たぬただ機械からもたらされたものだった。
百合×SF×アクション
この作者さんの作品は以前から追わせてもらっていますが、文章・演出・構成と以前に比べても上達しているように感じました。
今作は現在アニメが放送されている『BEATLESS』の設定を一般に開放したアナログハック・オープンリソースから作られていますが、短編だということを意識してか、オープンリソースとして開示されている膨大な情報の中から読者が理解するための最小限情報だけをうまくピックアップして、埋め込めれていました。
文章も主人公の心情がストレートに書かれており、後半の戦闘シーンではそのストレートな文体がスピーディーなアクションを非常にマッチしています。
ラストの終わり方は映画の終わりというよりは走りの部分を想起させる内容でしたが、その描き方によって逆に頭に強く残りますし、落とし所としても安定しているなとも思いました。
この調子で次回作も期待してます(・ω・)ノ
この物語は『アナログハック・オープンリソース』という、作家・長谷敏司氏の世界観を自由に使えるソースをした物語です。今度アニメ化する『BEATLESS』の世界観というと分りやすいかもしれません。
僕は不勉強で長谷敏司氏の作品を読まずにこの物語を読んだのですが、その世界観をしっかりと理解することができた上に、その設定や世界観が作り出す面白さをしっかりと堪能することができました。
物語のキモとなる『アナログハック』――ヒトと同じような形をし、ヒトと同じように振る舞うことで、モノである機械に意味を持たせ感情移入させるというもの――がしっかりと物語の中で機能し、長谷敏司氏の世界観でありながら、作者の世界観としてもしっかり描かれています。
物語は、一人の少女が、一体のアンドロイド『シオン』と出会い、その出会いによって心を通わせていくというものです。少女は少しずつシオンに心を許し、失っていたものを取り戻していきます。アナログハックされていると理解していながら。
少女の二人の物語でありながら、全体に漂う雰囲気はハードボイルドで、文体はとてもスタイリッシュで渇いています。まるで洋画を見ているように。アクションシーンも力が入っていて、かなり痛そうだったりもします。とにかく読みはじめたらいっきに読まされます!
百合×ハードボイルド×アクション×SF。
美味しいものが全部詰まったこの物語に、アナログハックされてみてはいかがか?
※微ネタバレ注意※
主人公のシロガネは全身のほとんどをサイボーグ化された少女。超人的な彼女の視点で物語が進んでいくのですが、私たちには体験できないようなサイボーグの見る景色がリアルに描写されていて、アニメ映像が浮かんでくるようでした。
特にアクションシーンはとても迫力があって、本作の魅力の一つだと思います!
物語のエンディングはもしかしたら感想が割れるかもしれないですが、個人的には好きです。不憫な少女がダークサイドに堕ちる結末は悲しいけれど、どこか痛快でもある。
組織の背景やシオンとの生活など、たぶん裏設定が色々あるんじゃないかなーという気がしたので、長編化しても面白い作品かもしれないですね。