ロボットに育てられた少女

作者 深水映(えいな)

712

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★★★ Excellent!!!

人間らしさについて改めて、考えさせられました。「人間らしさ」と聞くと多くの人が考えるような、常識的な範囲での人間らしさを思い描いてしまいがちだが、本来は各々がさまざまな経験を得て、その結果として「人間をどう捉えたのか」なので、それぞれ違ってそれで良いのだ、と言うメッセージが込められているような気がしました。

★★★ Excellent!!!

ロボットに育てられ、人間との接点がなかった。そんな少女が人間社会に現れたら、というお話。
この骨子で思い浮かべるのは、いくつも事例のある野生動物に育てられた人間の子どものお話。
やはり人間社会へ戻されようとして、なかなかうまくいかなかったという。

本作の少女に対する周囲の反応、存在による影響が詳細だなと感じます。
リアリティーがあって、たしかにこうなるかもと何度も頷きました。


この少女がどうなるのか。というより、この少女はなんなのかというお話なのかもしれません。実はアンドロイドだったとか、ひねった話ではなく。
ただの人間の少女がロボットに育てられて、どんな存在になったのか。
私はまた、たしかにと頷くこととなりました。

★★★ Excellent!!!

 面白かったです。

 少し関係ない内容になってしまうかもしれませんが、あくまで私個人の感想だと思って聞き流して頂ければ幸いです。

 現代アメリカでは人種間対立が深まったことで、その人の属性によってその人の個性を決めつけるような考え方が広く蔓延するようになってきています。つまり黒人差別をやめろと主張しているのに、黒人は黒人らしく振る舞うべきだと。
 こういう社会から個性を強制されるような事態が、なんとなく作中の人間は人間らしく振る舞うべきだという主張と重なって見えました。作中のミライのように自分らしさを見失わないような社会になってほしいと私は考えています。

 長くなってしまいましたが、とても面白かったです!ありがとうございました!

★★★ Excellent!!!

AIやロボットが使用されるようになる昨今、本作の世界観は決してフィクションとは言い切れないのかもしれないな…そう思わされました。

人間が人間としてではなく、ロボットとして生きる。
それが当たり前になる時代が来るのかも…?
もし当たり前になったのなら、私もロボットとして生きてみたいです。

★★★ Excellent!!!

まず全体を通して、これだけの短編にも関わらず細やかな描写かつ物語の流れが自然。物語の発想は勿論、考えさせられるという意味でもとても面白い。

この短編を読んだ今、レビューを書きながら頭の中で色々な思考を巡らせている。

人間らしいとは何か。

感情・理性・知性・欲望…それらを持って行動出来る者を人間と定義するなら、それらが欠損した時に人間らしくはないとなる。

欠損するのはどういう時か。

その多くは己が少数派になるのを恐れる時だと思う。

物語で言うなら影響力の大きいメディアが該当するだろう。
それが当たり前であるかのように周知されると他人の意見、多数の意見に流されていく。

人は自分を「当たり前」という基準にした場合、あまりにもかけ離れた者に対して「違う目」で見る。だがそれは「自分」を「周り」に置き換えた場合も同じで、周りが当たり前に染まる中で自分が染まらないままでいると「違う目」で見られることになる。

「こう在るべきだ」という人間の固定観念はおそらくいつの時代も続くのだろう。
特にこの日本においては国民性とも言うべきなのか、日常的にそれを感じてしまうことが多々ある。

固定観念に囚われて身動きがとれない人間も、そう言った意味ではロボットなのかもしれない。

少女の人間らしさが見える、生き方を尊重してあげられる優しい物語だった。

★★★ Excellent!!!

 古今、獣に育てられた子供の逸話は数多くあるけれど、これは未来においてロボットに育てられた少女の話。
 少女は乳児期から11年間ロボットに育てられ、それから人間に見付かり、人間に引き取られ、人間として暮らし始める。

 人に育てられた獣が野生で暮らすことは難しいと知られているのに、その逆は当たり前に強行してしまうのは、人の傲慢でもあるのだろう。
 エモーショナルな物語を通して、幸福について考えさせるお話。

★★★ Excellent!!!

小説とは、誰もが耳にしたことがある社会問題とか、既存のテーマだとかを取り上げていてはダメで、『作者』自身が、『その人』の視点で感じたことを、読者に『気づかせる』必要がある――


と、いうような文章を読んだことがあり、その時は、なるほどなぁとか思っていたのですが…


この作品の最後の一文は――、
まさに、自分では到底思いつかないような、『新しい視点』に気づかされました。
感動。

★★★ Excellent!!!

人の、人が、人として生きること。電柱が地下に埋められていくように、現在の普遍は変化し続けていくのかもしれない。そして、生き方さえも。

今日、まるで、「正解の生き方」は多くないような、そんな印象を受ける。
時代がそうするのか、はたまた自らがそう思っているだけなのか。

だから僕は、今でもこんな世界が来ても良いと思う。

自分が、自分らしく生きれる世界が。


短編ですが、とても強烈なリアリティを浴びせられましたので、レビュー致しました。このようなテーマが好みで、未読の方は、是非!

★★★ Excellent!!!

涙がでそうになりました。

人間らしさを押し付けるのではなく、その子に合ったその子らしさ、それでいいのだなと思いました。

ミライがロボットに育てられた過去は変えられない。だからこそ、回りも認めて受け止めて、その上の未来を信じてあげるのが良かったのでしょう。
考えさせられるお話でした!

★★ Very Good!!

人間らしさ、という言葉がありますが、それは人間側のエゴによって生まれたものなのかもしれないですね。生まれが人間であること以上の意味は、その言葉に込めるべきではないのかもしれない。

短いながらもまとまった物語であり、人間とロボットの狭間について考えさせられました。

★★★ Excellent!!!

ロボットによって育てられた少女。
狼に育てられた子供の話は有名ですが、この作品も読んでみると実に考えさせられるものが有りますね。
人の生き方として何が「人らしい」ものなのか…。
それは我々が馴染んで来た社会の中で「常識」という擦り込みが為されて持っているだけのものなのかもしれません。
倫理、道徳などといった問題も有りますが、生き方や価値観といったものは他人に押し付けられるものではなく、その人自身のものである…。改めてそう感じさせてくれる、実に哲学的なお話でした。

★★★ Excellent!!!

狼に育てられた狼少女とか、動物が赤ちゃんを育てるというのは現実にも聞いたことがありますが、もし「ロボット」が人間を育てたらどうなるか――というSF短編小説。

その子の感情は? 言葉は? 人間らしい暮らしができるようになるのか? もちろん正解なんてない問題ですが、一つの答えとして、とても面白く読むことができました。

★★★ Excellent!!!

昔、狼に育てられた双子の子供と言う話が世間を賑わせた事があるそうです。捨てられた子供を拾った狼がその2人を大事に育て、暮らし方を教え続けた……やがて狼は人間に殺され、子供たちは人間の生活へ戻った。物語はこう続きますが、果たして本当にそれで良かったのか、親から引き離された双子は幸せだったのか……。

この物語で焦点が当てられている少女も、まさに同じ状況なのかもしれません。無機質な世界は確かに人間にとっては異質極まりないものかもしれないですが、その当事者から見るとどうなるのか……。価値観の違い、思い出、様々な概念に対する疑問を突きつけてくる、良質な短編作品です。

★★★ Excellent!!!

冒頭から面白そうな雰囲気が漂っていましたが、最後まで一気に読まされました。

長編としても、ぜひ読んでみたい作品です。

現代風なSFも僕の好みと相まって、作者の別の作品さえ読んでみたいと思いました。

次の作品に期待を込めて、星3つ送らせて頂きます。

★★★ Excellent!!!

タイトルどおりの内容ですが、その結末に考えさせられます。

狼に育てられた、あるいはジャングルブックなどが有名ですが、これは似て異なるストーリーです。

いずれ、ホームヘルパーなどの機能を持ったロボットが今後出てくるかもしれません。

その時、私たちはどうするのでしょうね。

★★★ Excellent!!!

他の人と違うのは異質、他の人と違うのはダメ。そんな風に思うのが社会だと思うのですが、自分らしさを殺して大勢のなかに混り、自分を殺して生きることは意味があるのだろうかと考えさせられた物語でした。これが自分と胸を張って生きられること、これこそが人としてのあるべき姿なのではないかと希望をくれる物語です。お読みください。

★★★ Excellent!!!

人は12歳までに自転車の乗り方を覚えなかったら二度と自転車に乗ることはできません。何が言いたいかというと成長してからじゃなきゃできない学習と幼少期しかできない学習があるということです。
この話はその特徴をうまく利用していて幼少期のころにだれもが自然と導き出す「人間らしさ」について考えさせられました。アメリカ人が幼少期から英語を覚えたからその人は普段英語を使うのと日本人が幼少期に日本語を覚えたから日本語を使うという差と同じように、育てられた環境によって自らが考える「人間らしさ」は変わってくるのだと思った。

★★★ Excellent!!!

 ごみ処理施設でロボットたちに育てられた少女は、人間らしさを失っていた。周囲の大人たちはそんな彼女を『人間』にすべく教育を施すのだが。

 『人間』という枠組みを超えて、『人』とはなにか『自分』とはなにかという根本的な問いをこの作品は問いかけているように思えます。ロボットのように毎日を淡々と過ごし『自分』を見失っている人にどうか読んで欲しい作品です。

★★★ Excellent!!!

読みやすく、感情移入しやすく、共感しやすい素晴らしい短編でした。
人間の個性について深く考えさせられる話でありながら、ミライがロボットと再会するシーンは震えるものがあり、エンターテイメント的要素も確かにあると思いました。
過不足ない文章で強く引き込む筆力には脱帽です。

★★★ Excellent!!!

普段は短編に星MAX2つなのですが、これは文句無しで星3つだと思いました。それほど完成度が高いと思います。
唐瀬大さんがレビューしていますが、テーマ有りきで、最短距離で結論に至ります。無駄が無く、それでいて無味乾燥ではない。
自分でレビューを書きながら思いましたが、この作品は主人公のような短編だと思います。
そのテーマは「人間とは?」だと私は解釈しました。主人公が自分の道を探り当てられて良かったです。もしハッピーエンドでなかったら、後味が悪かったでしょうから。

★★★ Excellent!!!

まず一つのテーマがあり、そこに向けて物語が進み結実させていく……まさに短編のお手本のように見事にラストが決まっていて、読み終えて気持ちがよくなります。
ここまでテーマが明白で、作者さんの伝えたいことが読み手にしっかりと伝わる作品って、案外少ないのではないでしょうか?
思いついて書いてみた――的な話も昨今では多いですが、この作品のような芯のある短編に出会うと、改めてテーマの大事さを感じさせてくれるのです。

★★ Very Good!!

 SciFi杯1605連動企画としてのレビューです。
 SciFi杯1605についてはこちらをご覧ください:
https://sites.google.com/site/scifihai/home/scifi1605

 狼に育てられた子供が思い浮かぶ。ただし、これはどうやら実際の話ではないようだ。
 そこで他に思い浮かぶものは、「火星の人類学者」(オリヴァー・サックス)に収録されている自閉症の動物学者の症例、逸話、あるいはエッセイだ。どのように似ているという話ではない。ただ思い浮かぶという程度のものだ。

 人間らしさという概念は難しい。私が、あるいはあなたが、誰かを人間らしいと感じるとき、それはどのような基準でそう判断しているのだろう。それはつまるところ、私が、あるいはあなたが、その誰かの言動や思想に共感や理解ができるかというところだろう。それは逆に、私の、あるいはあなたの共感や理解から外れた誰かをどのように見るかという問題にもなる。まずは、自分の理解の範疇に収めようと働きかける。だが、それが機能しない場合もある。その場合、どのように見るかは、簡単な話だ。例外として扱う。例外としてしまえば、それはもはや共感や理解の対象とする必要すらない。その際に使う言葉は、非常識、集団行動ができない、異常者などなどといろいろとある。
 それは、「私は何者か」という疑問にすら適用される。「私自身」すら、実際のところ、理解の範疇の外にある。そこで使うのが、どのようなグループや社会に属し、どのような地位であるかだ。そこには何かしらの人間らしさは微塵も要求されない。ただ、「私」という幻想があるのみだ。
 そうして考えると、この作品の少女は幸運だろう。理解しようという人々に恵まれている。そして、少女自身が「私は何者か」も見付け、受け入れている。
 だからこそ、「あなたは誰なのか?」という疑問を… 続きを読む