ロボットという括りでは、人間もそうなのかもしれない

まず全体を通して、これだけの短編にも関わらず細やかな描写かつ物語の流れが自然。物語の発想は勿論、考えさせられるという意味でもとても面白い。

この短編を読んだ今、レビューを書きながら頭の中で色々な思考を巡らせている。

人間らしいとは何か。

感情・理性・知性・欲望…それらを持って行動出来る者を人間と定義するなら、それらが欠損した時に人間らしくはないとなる。

欠損するのはどういう時か。

その多くは己が少数派になるのを恐れる時だと思う。

物語で言うなら影響力の大きいメディアが該当するだろう。
それが当たり前であるかのように周知されると他人の意見、多数の意見に流されていく。

人は自分を「当たり前」という基準にした場合、あまりにもかけ離れた者に対して「違う目」で見る。だがそれは「自分」を「周り」に置き換えた場合も同じで、周りが当たり前に染まる中で自分が染まらないままでいると「違う目」で見られることになる。

「こう在るべきだ」という人間の固定観念はおそらくいつの時代も続くのだろう。
特にこの日本においては国民性とも言うべきなのか、日常的にそれを感じてしまうことが多々ある。

固定観念に囚われて身動きがとれない人間も、そう言った意味ではロボットなのかもしれない。

少女の人間らしさが見える、生き方を尊重してあげられる優しい物語だった。

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