簡潔に表すと「純愛さの滲み出る素敵な物語」。
冒頭は「これは何を示しているのか」とページを捲りたくなるシーンから始まる。
すぐにタイムリープの物語であることが発覚し、同じ部類の物語を書いた身としては「なるほど、タイムリープものか」と薄べったい反応になるのは仕方の無いことなのだが、だからこそとも言えるのか「どんな結末になるのか」が物凄く気になった。
中盤は学生の生活をメインに進行する。
「あぁ、懐かしいなあ」と自分の過去と重ねたり、「よく観察してるんだろうなぁ」と作者の蒼山さんの観察力に瞠目させられたり、穏やかに読み進められる。
そうして終盤に差し掛かるまでは日常が描かれるのだが、物語の真実を知った時に思わず「……ん??」となる。
たしかに所々で「ん?」と気になる所はあったのだが、まさかと思わせられた。
最後まで緻密に練り込まれており「この描写はこういうことだったのか!」と冒頭部分から既に散りばめられている。
こう言うと上から目線で非常に申し訳なくも感じるが、回収出来ていない描写は1つたりともなく、それどころか自然。
映像では難しいが、小説ならではの面白みを存分に活かした作品。
物語としては切なくもあり、構成としては面白くもあるもので、感情が複雑に乱れた。
一味違うタイムリープ物語を、ありがとうございました。
ここからは完全に自分の世界に浸るものとして綴る。
もし自分が登場人物の立場だとしたら、そこまでのことが出来る「純愛さ」はあるのだろうか。
読了して暫く考えているが分からない。
分からないが、この物語を生み出せるのは「純愛」を知っている方のみ、いや蒼山さんだからこそだろう。
今後自分がもし人を愛することがあれば、いつの日かこの物語を思い出して自分を刺激してくれるような気がする。
間違いなく心情に変化を齎す作品だった。
時間を巻き戻して、最愛の人を救う。
そこにどんな犠牲が支払われることになろうとも、悩み、考え抜いても、やはり、誰もがそうすると信じている。
この愛に見返りはない。
献身とも、自己犠牲とも、或いは自己満足でしかないかもしれない。
しかし、やり遂げたその過程で、身を焼き心を裂くような思いを隠し持っていたことは想像に難くない。
ストーリーを追うごとに、胸が締め付けられるかのようだ。
ミステリー部分の導入とキャラクター配置の妙は、自然で好感が持てる。
それ故に、ミステリーのタグはこの作品にとって足枷ですらある。
是非、読者には、驚いて欲しいからだ。
そこにカタルシスを得て欲しい。
もう一度言おう。
この愛に、見返りはない。
だが、しかし。
その無償の愛を救うものは、やはり愛であると、信じている。
最後に。
私は、ハムスターがとても好きだ。
最愛の妻が亡くなった。その悲しい運命を変える為、ある力を使って十一年前にタイムリープすることを決意する主人公。だけどそのタイムリープは、大きな代償を伴っているのです。
そして時は遡り十一年前。未来で死ぬ運命にあった彼女は、何も知らずに中学校生活を送っていた。そして彼女は、恋をしていく……
愛する人を助けたいという想いが、たくさん詰まったお話。
自分はこの話を読んでいて、悲しい結末しかないのかもと思っていました。多くを語るとネタバレになってしまうのですが、タイムリープすることで発生する代償が重すぎて、覚悟して読まないとショックで押しつぶされてしまうと危惧していました。
だけど読み終わってみると、そこにあったのは誰かを愛することの温かさ。辛く切ない部分は多々ありましたけど、それ以上の愛に溢れたお話でした。
少し不思議な、切ない愛の物語。感動で心を満たしたいという方にお勧めです。
突然最愛の人が命を落とした場合、あなたはどうなるでしょうか?そんなあなたの前に一つの可能性が提示されたら、あなたはどうしますか?
愛をテーマにした本作ということで、最初から最後まで愛がこれでもかというぐらい散りばめられています。しかも、ただ愛を綴っているのではなく、途中途中で別の登場人物の視点に変わり、それぞれの人物が抱くリアルな心情を描くことで読み手を惹き付け、共感または微笑ましい心の動きが垣間見えます。
恋愛ものをまったく読まない僕ですが、恋愛のなんたるかを知ることができ参考にもなりました。こう、心の内を綴るだけじゃなく、目の動きやら仕草とかホンの些細な動きを入れることで恋する女の子を描けるのか、とか。
そして、個人的な一番の見所はやはり最後に迎える「ミステリー」の覆し。おそらく誰もが読み進めて騙されるかと思います。僕も騙されました(笑)
愛を求めている方、そして驚きを味わいたい方には是非オススメです。
なんてことをしてくれたんだ……!
……というのが、とある箇所まで読み進めたときの素直な感想。
リアルタイムで更新を追っていましたが、おかげさまでその日は動揺して腑抜けになっておりました。くそう。
そして、その後は、とにかく祈るように読み進めるしかありませんでした。
この作品の魅力を伝えるのには、ひどく難儀します。
彼女を救うため、リスクを負ってタイムリープする彼。
危険を回避した過去から紡がれていくのは、あの絶望が嘘のように爽やかでみずみずしい青春。
そしてその向こう側に、あまりに深い愛が見えてくる、とだけ伝えておきたい。
読了後は、このタイトルが二重三重に染み渡ります。
第4章3話まで読了したレビューです。
『愛』と『生死』をテーマに扱う作品はごまんと存在し、そこにタイムリープなるものを含めた物もご多聞に漏れないと思います。
読者としての私の好みは圧倒的に、生き生きとした『愛』と『生』を描いた後、登場人物たちにおよそ受け入れがたい『死』をぶつける手法です。
『死』という厳然たる喪失を前に、哀しみに打ちひしがれる彼らとともに失意のどん底まで落ちる苦痛は小説の最たる醍醐味であると感じています。
しかしながら、この作品は逆の手法を取られています。
物語の冒頭、最愛の人の『死』を突きつけられた主人公がもろ刃の剣であるタイムリープを頼りに彼女を救いにいきます。
肝要なのは、救われる側の彼女目線で物語が進んでいくこと。
彼女の目に映る世界にはそう遠くない未来の『死』など思いもしないことであり、読者は彼女の生き生きとした『愛』と『生』を儚さを交えずに読むことができません。
私にとってその『儚さ』が『死』よりも受け入れがたい苦痛なのです。
良作です。ご一読ください。
読了済みです。
タイムリープは恋愛ものとしてはありふれたギミックとなっていますが、だからこそ作者方の表現次第でいくらでも化けるんですよね。
前述にタイムリープと挙げましたが、二章以降は時々片鱗を感じさせるのみで、主軸は恋愛です。甘酸っぱくももどかしい青春の一片一片が澄んだ言葉と共に胸の内にするりと潜り込んできて、脳裏上に物語の情景を幻視させてくれます。
タイムリープものってハッピーエンドが少ないですよね。時間遡行という神業に相応な対価を求められるから。今作でもその手の設定は健在なわけでして、そこはこれから読まれる読者様の目でご確認をば。
甘い青春の中で、大切な人のために文字通り死を覚悟して奔走する彼と物語に色を添える彼らの未来に幸があらんことを切に願いながら、読んでいたいと思います。
最後に、筆下手な私の文章をここまで読んでくださった方に感謝を、ありがとうございます。