死を描くか、生を描くか

第4章3話まで読了したレビューです。

『愛』と『生死』をテーマに扱う作品はごまんと存在し、そこにタイムリープなるものを含めた物もご多聞に漏れないと思います。

読者としての私の好みは圧倒的に、生き生きとした『愛』と『生』を描いた後、登場人物たちにおよそ受け入れがたい『死』をぶつける手法です。
『死』という厳然たる喪失を前に、哀しみに打ちひしがれる彼らとともに失意のどん底まで落ちる苦痛は小説の最たる醍醐味であると感じています。

しかしながら、この作品は逆の手法を取られています。
物語の冒頭、最愛の人の『死』を突きつけられた主人公がもろ刃の剣であるタイムリープを頼りに彼女を救いにいきます。

肝要なのは、救われる側の彼女目線で物語が進んでいくこと。
彼女の目に映る世界にはそう遠くない未来の『死』など思いもしないことであり、読者は彼女の生き生きとした『愛』と『生』を儚さを交えずに読むことができません。

私にとってその『儚さ』が『死』よりも受け入れがたい苦痛なのです。

良作です。ご一読ください。

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