「純愛」の一言に尽きる。

簡潔に表すと「純愛さの滲み出る素敵な物語」。

冒頭は「これは何を示しているのか」とページを捲りたくなるシーンから始まる。

すぐにタイムリープの物語であることが発覚し、同じ部類の物語を書いた身としては「なるほど、タイムリープものか」と薄べったい反応になるのは仕方の無いことなのだが、だからこそとも言えるのか「どんな結末になるのか」が物凄く気になった。

中盤は学生の生活をメインに進行する。
「あぁ、懐かしいなあ」と自分の過去と重ねたり、「よく観察してるんだろうなぁ」と作者の蒼山さんの観察力に瞠目させられたり、穏やかに読み進められる。

そうして終盤に差し掛かるまでは日常が描かれるのだが、物語の真実を知った時に思わず「……ん??」となる。

たしかに所々で「ん?」と気になる所はあったのだが、まさかと思わせられた。

最後まで緻密に練り込まれており「この描写はこういうことだったのか!」と冒頭部分から既に散りばめられている。
こう言うと上から目線で非常に申し訳なくも感じるが、回収出来ていない描写は1つたりともなく、それどころか自然。

映像では難しいが、小説ならではの面白みを存分に活かした作品。
物語としては切なくもあり、構成としては面白くもあるもので、感情が複雑に乱れた。
一味違うタイムリープ物語を、ありがとうございました。


ここからは完全に自分の世界に浸るものとして綴る。
もし自分が登場人物の立場だとしたら、そこまでのことが出来る「純愛さ」はあるのだろうか。

読了して暫く考えているが分からない。

分からないが、この物語を生み出せるのは「純愛」を知っている方のみ、いや蒼山さんだからこそだろう。

今後自分がもし人を愛することがあれば、いつの日かこの物語を思い出して自分を刺激してくれるような気がする。

間違いなく心情に変化を齎す作品だった。

その他のおすすめレビュー

楪 一志さんの他のおすすめレビュー15