平凡な男の子、人気者の女の子。
物語はこの二人の高校生をメインに綴られている。
物語の展開は伏せるが、テンポが良く、スラスラと読み進められる。
男の子の感情の描写が丁寧に行き届いていて、より身近に感じられた。
漠然とした「死にたい」想いを抱える者が、明確な「死にたい」想いを抱える者を前にした時の感情。経験なしでは語ることも難しいだろうが、リアリティがあってとても良い。
個人的には出逢う場所も、行く場所も、現実味があって好き。
作者の飴月さんが「リアリティ」を意識されているのかは分からないが、そのような細やかな部分にも気を遣われているように感じた。
男の子と女の子の掛け合いの描写も上手で、特に女の子のツッコミに関しては、飴月さん自身が「読者ならこうツッコむだろう」と考えているのが感じられるほど正確。笑
「君のせいで今日も死ねない」なんて、いつか言われてみたい。
(大切な人の死ねない理由になりたいものですね……。)
高校生の男女と言うと青春というジャンルに括られがちだが、本作は身近な「死にたい」を取り入れられた、青春の一歩向こう側の物語だとも思う。
是非読んでみてください。
物語は、主人公とヒロインの初めての出会いからの一週間を描きます。
他に特に目立った登場人物はいません。主人公の視点で語られる物語の中で、
ヒロインの心境の変化を感じさせる細かな描写や会話のやり取りが垣間見えます。
彼らの会話は、今どきの若者という感じの、どこかふわふわとした、心の表面だけをなぞるような言葉で交わされますが、それと対比して冷静と情熱の入り混じった主人公の静かな想いが綴られていきます。心をくすぐる作品だなと私は感じました。
主人公、ヒロイン、学校と海。こんな簡単な舞台装置だけですが、心をくすぐる青春小説に仕上げてしまう作者様の次回作に期待します。
ただ、少しヒロインの行動原理や行動理由にもう少しだけリアリティがあると良かったかなと思います。生い立ちや、家庭での立場、努力のエピソードなど…ヒロインを応援する気持ちがもっと生まれると思います。
面白い小説をありがとうございました。