触れあうことができなくなった世界、それが近作における近未来の設定ですが、決して他人事ではなく、今を生きる人間にも通じるところがあると思います。特にSNSやマッチングアプリを使って仮想空間で恋人を探す出会いの場所、合わなければブロックすればいいというお手軽な人間関係は、近未来でありながら現代的なものに感じました。
そういった血の通った交流を必要としない世界で、それでも伸ばされた手に触れることをためらわない相手がいるとしたら。それはまさしくつがいとなるべき存在なのでしょうし、触れ合わない世界だからこそ、触れることでわかることがある。ロボット化や完全管理社会は近未来のイメージとしてよく取り上げられますが、その管理からの反逆が接触によって産み出されたというのも、感慨深いものがあります。
冗談ではなく、三度読み返してしまった。
一度読んでレビューを書きたいと思ったが、上手く言い表せなくて保留してしまったくらい考えさせられる何かがあった。
正直な話、2050年の世界は想像つかない。
あらゆることが、どこまで進歩しているのか。
今出来ることが、どう出来なくなっていくのか。
今でさえたった一年もあれば目紛しく世界は動いて変わる。
変わらないものなんてきっとないと思ってしまうのも無理がない。
この物語ではそれを覆してしまうような「感情」が表出しているから面白い。
現実離れした世界が現実でもあり、適応していく人々に違和感を覚える少女。
どちらかと言えば小生も適応出来ずに孤独を好む性分だからなのか、とても共感してしまった。
簡単に繋がって、簡単に切れる「細糸」のような人間関係が当然となる時代になったとしても、人間本来の温もりを感じれば求めてしまうのだろう。
求めてはいけない温もりのために行動を起こせる。
そんな人間らしさにものすごく惹かれた。
オススメです。