無機質な世界で熱を求める。

 触れあうことができなくなった世界、それが近作における近未来の設定ですが、決して他人事ではなく、今を生きる人間にも通じるところがあると思います。特にSNSやマッチングアプリを使って仮想空間で恋人を探す出会いの場所、合わなければブロックすればいいというお手軽な人間関係は、近未来でありながら現代的なものに感じました。
 そういった血の通った交流を必要としない世界で、それでも伸ばされた手に触れることをためらわない相手がいるとしたら。それはまさしくつがいとなるべき存在なのでしょうし、触れ合わない世界だからこそ、触れることでわかることがある。ロボット化や完全管理社会は近未来のイメージとしてよく取り上げられますが、その管理からの反逆が接触によって産み出されたというのも、感慨深いものがあります。

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