森の奥深くにある古城には魔女が住んでいる。そんな噂が囁かれる森で道に迷ってしまった盗人の少年アルテは、古城で無機質な少女と出会う。黒髪が印象的な少女は作り物めいており、感情をほとんど表に出さず自らを「魔女の所有物」だと答える。名前を持たない彼女にアルテはティアと名付け、友達になろうと気まぐれな交流を始めた。ティアは少しずつアルテに心を開いていくが、魔女の呪いと通り魔の噂が二人の関係性に影を落とす。
ボーイ・ミーツ・ガールを丁寧に緻密に描いた物語だと思います。アルテとティア、二人の境遇はいずれも恵まれたものとは言えませんが、心に傷を持ち、過酷な環境に生きてきた二人の交流に焦点を当てて展開されていきます。そういった意味では、この小説はミニマムなものだとも言えます。人々が怯える魔女の存在も、街を脅かす通り魔の存在も、アルテとティアの関係性を描くための乱暴に言ってしまえばサポートでしかない。それはとても贅沢でありますが、だからこそ二人の物語をより深く、徹底して読み解くことができるのだと思います。個人的には非常に効果的に作用していると思います。一本筋が通っており、その筋が非常にわかりやすい。そういった意味でも読みやすく没入感がありどんどん引き込まれてしまいます。
緻密な描写でかつ、一話当たりの文字数も多めですが、冗長とは少し毛色が異なります。
改稿を目的とした自主企画に参加し現在も改稿途中ではありますが、改稿済み部分に関してはその成果を見て取れるでしょう。
苦心して直しただけに以前より風景を思い浮かべ易く、心情も分かり易く主人公は年齢相応の言動を取れるようになったこと。
不自然さも無くなり分かり易さもあります。
企画参加時には無かったサブキャラも追加され、それがまたいい味を出し、重苦しい雰囲気の中の緩衝材の役割を果たしています。
単に重いだけの作品ではなくなり、息抜き出来る部分もあり、緊迫する部分もあり、山と谷ができることで飽きの来ない作品になって来ていると思います。
一方の主人公アルテ、そしてヒロインでもう一方の主人公ティア。
このふたりの邂逅から物語は動き始めます。
テンプレファンタジーに飽き飽きした方には強くお薦めいたします。
まだ、改稿途中なので☆はふたつとします。
この作品においては、削ることばかり考えるのではなく、むしろ話を膨らませることを考えたほうがよろしいかと。
この作品の魅力はプロローグだと私個人は思いましたので、プロローグのような短い(拷問話)話と長い話を織り交ぜながら文章に緩急を出したほうがいいと思います。
プロローグのような話は、どこか特定の場所に出すのではなく、物語が進むごとに頻繁に出しながら、伏線を混ぜれば、より一層面白い作品になると思います。
あと個人的に気になったのが、話のタイトルがいまいちどういう話なのかピンとこないので、「魔女の所有物であるということ1、2…」というように魔女の外道さを描きながら、盗人みたいな青年や各種モブの情報をこれでもかというくらいにぎっしり詰め込んでほしい。
あとダークファンタジーで残酷な描写が入っている割には、すこし残酷描写が物足りないので、少女に対する魔女の仕打ちをひどくして、それに対して、青年が徐々に正義感に目覚めやがて二人は結ばれるという感じにすれば面白くなるし、伏線としてなぜ、魔女が美しいものを憎むようになったのかとかを描くとより一層光る作品になると思います。
削れば、確かに読めはしますが、何よりも小説を書くものとしてのサービス精神を読み手に感じさせた方が、小説としてのクオリティは上がると思います。
これからどんな風になるのか期待大。
あと、個人的に閑話多すぎないかと思いました。
古城に引き籠る少女──ティアの心は邪悪な魔女や奴隷としての記憶に囚われていた。しかしある日、古城に忍び込んだ盗人の少年──アルテとの出会いによって冷え切った少女の心情は大きく揺さぶられることとなる。
奴隷である自分には価値がないと卑下し続け、魔女の言いつけを守り続けるティア。まだまだ彼女の物語は始まったばかりですが、読んでいて思わずストーリーにのめり込んでしまうような力作です。
丁寧な描写。魔女や吸血鬼、そして街で必死に生きる人々による重厚かつ残酷な世界観。企画に参加した作品の中でも「一番面白い」と言っていいほど気に入っている作品となっています。是非読んでみてください。