リズの野望
「これは美味い!!城の料理人には悪いがこれほどの食い物は食べた事がない!いったいこれはなんなのだ!?うどんではない。少し前に明の者からラーミェンという物を食べさてもらったが全然違う!」
へぇ〜。中国・・・今は明だけど既にラーメンはあるんだ?初耳だ。
「これはパスタと言いまして南蛮・・・イタリアと呼ばれる国の料理です。味付けは色々ありますが私と苦楽を共にしてきたリズに作ってもらいました。お口に合ったようでよかったです」
「うむ。おいは毎日このぱすたとやらでも良い!上井!お主はどうだ!?」
「はぁ〜・・・今生味わった事のない味で大変美味にございまするが・・・如月殿?申し訳ない・・・ちと辛うございます・・・」
シュババババ
「上井秀秋様とお見受け致します。私は美幸様の家政婦・・・リズと申します。お口に合わない物をお出ししてしまい申し訳ございません。こちらは辛味を省いた物になります。こちらをお食べください」
「あ、いや・・・すまない」
「リズとやら?上井に作った物はおいどんが食べよう。せっかく作ってくれた物をおいの家臣がすまない」
辛い辛くないは人により違うからね。けど、義弘さんは本当にペペロンチーノが好きみたいね。元々の上井さんの分もすぐに平らげてしまったよ。
「こんな透明なビードロを見たのは初めてだ。明から高値を払い買った物もあるがこんな精巧な作りではない。それに・・・」
ゴグッ
「殿はビードロで酒を飲むのが好きですからな!如月殿?この酒はなんという酒か?甘いし美味い!飲みやすい!」
「はい。これはワインというお酒になります。酸味の強いお酒になりますが本日の料理と合うお酒です。お代わりもございますのでどうぞ。リズ〜?お酒お願いできる?」
「はい!お待たせしました!!」
ここにきてリズの動きが半端ない。先回りしたかのような動きだ。しかも樽ごと持ってきたんだけど!?
「ほう?これはパオンか?柔らかい!?ほのかに甘い!?おいが知っているパオンとは大違いではないか!?」
「直答お許しください」
「うむ。好きに喋りなさい。リズとやらよ?」
「はい。島津様は恐らく南蛮から持ってこられた水分を抜いた硬いパンを食べたのだと思います。作り方によっては色々な物が作れるのがこのパンの強みです」
リズは何を言ってるんだろう?何か考えがあるのかな?
「うむ。続けよ」
「はい。その一つがこの私が作ったパンです。先程のパスタの残り汁を掬うようにして食べるように焼きました。そしてこちらはデザートのフワフワ、スフレになります。材料は違いますがパン作りの応用にてこのように変化させる事ができます」
リズは島津さんや上井さんに物怖じせず確かに何かを伝えようとしている。その真意が私にも分からない。
「なに!?こっちは甘いパオンか!?上井も食べてみよ!信じられぬ美味さだ!」
「これは・・・某の口では上手く言い表せませぬ・・」
リズは真っ直ぐ島津さんの方に向いている。島津さんも何かを感じとったのかリズの方を向いている。
「なにか・・・なにか伝えたい事があるのか?」
「はい。私は美幸様の家政婦にすぎません。ですが誰よりも美幸様の事を思っております。美幸様がされる事を自由にさせていただきたく」
「ちょ!リズ!?何言ってるの?私は別にーー」
「如月は静かにしなさい。この者の胆力は本物だ。今にも年端のいかないこの女子に斬られそうな気分だ。先に言おう。おいは如月を縛るつもりはない。自由にさせるつもりである!」
「ありがとうございます。お礼と致しまして、許しを得られるならここ飯野城を薩摩よりも発展させる事を美幸様がお約束してくださる事でしょう」
勝手に色々言ってるけど本当になんだろう?私は何も聞いてないんだけどな〜。まぁけど、発展はさせたいよね!九州だからって田舎なんかじゃないし!戦は私ができなくてもチートみたいに強い人ばかりだしね!
「ふむふむ。兄者の治世を超えるか。それはそれで楽しみである。好きにしてよい。足りない物があれば言いなさい。できる事は何でも致そう」
難しい話はここまで。これ以降は私の故郷の話や未来から来たとはどういうことかなど、ゲームの事、このようなご飯の事、明の事、直近の私の知ってる歴史を言い、島津さんは疑うわけでもなく静かに聞いてくれた。
上井さんも島津さんほどではないにしても信じてはくれているようだ。
「では、その尾張国に居る暁と申す者に会いに行くのか?」
「はい。お許しを得られるならそうしたいです。そしてもし私がその暁君と出会えるなら・・・常勝軍になれるとお約束致します」
「おいはその者を見ていない。もしその者が畿内を制しここ薩摩に押し寄せる事になればどうするのだ?おい達、島津家は誰の下にもつくつもりはない」
「あ、多分そこに関しては大丈夫かと思います。暁君は島津様の事、薩摩の事を大変褒めていた方ですので」
「なんか気持ち悪いのう。おいが知らぬ者が向こうは色々知っているとはな」
モグッ モグッ モグッ
「それにしてもいい食べっぷりですね!」
「うむ。リズとやらが作ったこのヒョコレイトだったか?このけいきなる物は美味いな!」
「チョコレートケーキですね。これ美味しいですよね!リズ?褒めてくれてるよ!!」
「はっ。ありがとうございます。これもどうぞ。同じ物になります。城に居る皆様にお振舞いください。そして、こちらの方は少し装飾を豪華にしてあります。奥方様にお渡しください」
お土産を渡す事は最初から決めていた事だ。これでリズのも厚遇されるはず!!リズの料理はこの世界では1番だ!!
「土産までくれると申すか・・・これではあべこべのようだな・・・」
「いえいえ。気にしないでください!後、こちらもお持ち帰りください。もう1人の家の者が今しがた作りましたお召し物になります。南蛮服のような作りの和服になります。伸び縮みするので着やすいかと思います。奥様達の物も用意しておりますのでどうぞ」
島津義弘さんは非常に愛妻家だからね。お土産は全て奥さん達のも一緒だ。
ご飯の後は今後の事を教えてくれた。まず戦傷を癒した後・・・完璧に日向を取りに行くと。
多分手出ししなくても負ける事はないはず。そして日向が島津領になれば、豊後の大友宗麟が島津を脅威に感じ、耳川の戦いになるのだったよね。この戦で島津が勝ち、九州統一に向かって突き進む。けど、志半ばで秀吉の治世になり、夢破れるのだったのよね。
けど、暁君が居るから秀吉の世にはならないと思う。まぁ何にしてもまずは地固めをしよう。屋久島に行って杉の葉を取って世界樹の涙をストックしておく事が先決だ。
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