越前 最前線の城 杣山城攻略戦

 「えっと・・・これはどういう事かな?」


 「某が言いましょう。端的に言いますと・・・守備隊と申しますか・・・それが10名居ただけですな。あ、幸次郎殿達が捕らえております。処刑致しますか?」


 「いやいや、石垣とか使わせないようにか、使えないようにか壊されてはいるけど、まさか本当に破却してるとはね。その守備隊の人達は逃がしてあげて。こんなところ守らされるくらいだから左遷された人達でしょう。要らない」


 「はい。畏まりました」


 「美幸様ッッ!!どうしましょうか!?殺りましょうか!?」


 「はいはい。幸次郎さん?無駄に殺すのはよくないよ!この人達は抵抗って抵抗すらしてこなかったでしょう?ここで殺すはただの殺戮!絶対にだめよ!」


 「チッ。お前らは運のいいやつだ!」


 パシュ パシュ


 「どこへでも好きに逃げるといい」


 彦太郎がカッコよく縄を解き、私達は金ヶ崎城を難なく落とした?制圧した?でいいのかな?


 「おーい!美幸っち!どうする!?あーしの部下は血の気が多い奴ばかりでな!このまま一乗谷に乗り込まないか!?」


 「さすが真白様ッ!!俺は真白様に着いていきます!」


 「オラも!」「ワシもです!」


 ったく・・・こうなるよね・・・。完全に燃焼不足・・・。


 「あぁ!もう!やるよ!やってみせるよ!」


 「そうこなくっちゃな!おい!野郎共ッ!!このまま朝倉を滅亡させるぞ!!」


 「「「オォォォォーーーーー!!!」」」


 「とりあえず、艶!リズの20号拠点をここに移して!田尻、阿曽を抜けて南越前に侵攻する!杣山城を速攻で落とし、南越前を制圧!そこで今日は終わりにする!明日には松山城、三峯城を落とす!そこから真白達は東の亀山城を攻めて!」


 「別行動か!?」


 「そうそう!電撃作戦だから朝倉は確実に退こうとするはず!亀山城を落とすと後は北の波多野城のみ!だけど、多分波多野城に向かう前に私が乗り込むからそこで決着!明後日は一乗谷で祝杯よ!」


 「よっしゃぁ〜!任されたし!」


 こうしてなし崩し的に始まった一乗谷の戦い。結果は火を見るより明らかだ。だが、そのプロセスが重要である。まず隠岐の人達の自信を取り戻す。威厳を取り戻す。


 なにより・・・織田信長に私のやり方を見せる。



 まだ時間は昼前。金ヶ崎に誰かが潜んでいたかは分からない。一乗谷本拠に誰か走ったかも分からない。もし朝倉が気付いたとしてももうみんなは止められないと思う。そのくらい士気が高い。


 一乗谷へ続く木の芽峠を進む。でもさすが朝倉といったところだろうか。他国なら間違いなく整備なんかされてないただの山道だと思うけど、少しではあるが均してあるような気がする。


 だからか、私達は全員SL250s 自衛隊モデルのバイクで進軍しているが、元々悪路に強いバイクだとは思うが難なく走れている。


 「み、美幸様!も、もう少しゆっくりでお願い致します・・・」


 私の後ろに彦太郎を乗せているが、どうもバイクも怖いらしい。


 まずは最初の目標である杣山城だ。杣山城とは杣山の山頂に築かれた山城で、自然の要塞を有している城だ。


 そしてここを治めるは・・・


 「美幸ちゃん?ここを治めるのって河合吉統って人だよね?結構武闘派の人だよね?」


 「艶のいう通り!史実では刀禰坂の戦いで討死する人だよ。崖を利用した本当に堅城だからね。まっ、それは従来ならね?まずは一応降伏勧告でも出そうかな?一当てすらしてないからまず降伏するわけはないと思うけど」


 標高約500メートルのところに本丸がありその両隣に、東御殿、西御殿と呼ばれる曲輪がある。その山麓に確か城主館があるはず。


 まぁ普段からあんな山の上に居るのは不便よね。それに今は織田家に攻められそうな中、越前の前線の城だしね。


 「美幸っち!あーしが口上出してこようか!?」


 「いや真白が行けば確実に争うようになるから私が行く!少し待ってて!」


 

 それにしても自然豊かな場所だ。あまりこの地に興味はなかったけど欲しい。ここをもっと栄えさせる事ができれば・・・。


 一応、それらしい装備で赴いた。麓にある村・・・。その最奥に一際大きい館が見える。


 「あれが城主館かな?彦太郎?ちゃんと守ってね!」


 「はっ!お任せくだされ!」


 今回の護衛は彦太郎だ。みんな順番にしてもらう事になっている。


 村々の人達は戦なんてどこふく風のような顔をしている。呑気に私達に挨拶してくるくらいだ。


 「こんにちわ。見ない顔だね?なにか用かい?」


 まさか宣戦布告こそしてないし、かなり無礼だとは分かっているつもりではあったが、本当に攻められていると分かっていないようだ。


 「杣山城の城主 河合吉統様は居ますか?」


 「城主様ですか?城主様ならあの向こうの館に居ると思いますが?まさかお武家様でしたか!?これは失礼を・・・」


 なんか調子狂うな。


 そのまま注目を浴びながらSL250sに乗り館の前に到着するが・・・


 「ど、どこの者だ!ここをどこか分かっているのか!?」


 4人の長槍を持った兵に止められた。まぁさすがに串刺しにされたくないしね。彦太郎は後ろでブルブルしてるし。


 「杣山城 城主に告ぐ!即刻私と対話せよ!さもなくばこの地はすぐに焦土と化すぞ!」


 「うん?ははは!どこの家中の者だ?それにその馬?はなんじゃ?見た事もない!」


 はぁ〜。思わず溜め息が出る。こりゃだめだ。


 私は確信した。滅ぶべく滅んだのだ。朝倉家とは。一乗谷城ではないにしても越前最前線の重要な城の門兵だろう。それがこんな呑気な事言ってるようじゃダメだ。


 私が最初の門兵と話していると、他の門兵がSL250sに跨ろうとした。だが、すかさず彦太郎の峰打ちだ。


 ゴツン


 「勝手に人の物に触るとは怖いもの知らずだな」


 「っいてぇ〜な!少しくらいいいではないか!」


 「お主等は本当の馬鹿なのか?それともこれは演技なのか?」


 「彦太郎?これは演技じゃない。本物よ。城主もこんなだったらーー」


 「貴様等は何をやっておるか!!!」


 私が呆れていると1人の老人が歳に似合わない速さで走って、門兵の人達を殴った。


 「客人!いや孫が相すまぬ。某、河合安芸守吉統と申す。姉川にて一度"その手"のものを拝見した事がある。たしか夢幻兵器と・・・まさか織田の者がもうここまで・・」


 いやこの人話の分かる人か?武闘派かと思えば知的な人にも見える。


 「出所は織田家かもしれませんが、私は別。如月美幸と申します。こっちは配下の彦太郎。まず単刀直入に。織田軍に見えるかもしれませんが私達は独立軍。あなたの勇猛なのは知っています。それを知って今から宣戦布告をしましょう。一撃でここを焦土と化せますがどうしますか?」


 「なっ、なんだと!?まさか敵か!?織田か!?皆の者出合え!出合え!」


 「馬鹿者ッ!静かにせい!攻めるならもうこんなところ落とされておるわ!それをせず対話に来たという事を考えぬか!」


 「だから何回も言うけど、織田家と誼はあるけど私は本当に別だから。この地が欲しい。元々は隠岐島と言えば分かるかしら?その島民にて構成されている軍。数は任務上言えないけどここは本気を出せば半刻も掛からず落とせますよ」


 「う〜む・・・まずは・・・館に上がらぬか?実は美濃方面から何も物が入ってこず、久々に畑を耕したのだ。ちょうど良い大根が入った。まずは飯を出す」


 なんだろうこの人・・・本当に調子狂うな・・・。


 だがこの河合吉統・・・本当の策士とはこの人の事を言うのだろう。そして根っからの朝倉家の忠臣だ。


 その事を私が知るのはこの後すぐだ。

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