隠岐島戦士の不完全燃焼

 その時が来た。


 隠岐島の選抜兵、約200名。この中には明の人達も含まれている。


 私はウィスキー型ロングビンに乗っている。場所は中ノ島の私と彦太郎で作った港だ。


 「フッ フッ テスッ・・・ついにこの時が来た!この世は弱肉強食!弱者が敗れるのは当たり前の事である!」


 拡声器にて私は挨拶をしている。なんとまぁ厨二クサイ言葉だと思う。だがこれには理由がある。


 昨夜、真白に言われた事だ。


 「島の人間は戦自体初めてだから美幸っちの激に掛かっている!強いのガツンッと頼むぜ〜!」


 「そんな言葉だけで大丈夫なの?」


 「強いリーダーが居れば充てられていつも以上、訓練以上のポテンシャルを発揮できるものだ!」


 と言われたので私は普段なら絶対に言わない言葉を使っている。


 「もしかすれば隣の誰かが倒れるかもしれない!けど安心しなさい!この私、リズと横にいる松、竹、梅が絶対に死なせない!みんな!頑張りなさい!」


 「「「オォォォォーーーーー!!!」」」


 凄まじい咆哮だ。本当に士気が高くなったように見える。それにリズにはお願いしてなかったのに激を飛ばしてくれた。後でお礼を言っておこう。


 「よし!じゃあみんな!出発!明日の夜明けに攻撃開始するから!」


 そんな長期間遠征するわけではないが、一応私のインベントリーにもロングビンにもご飯はかなり用意した。敦賀の領民や金ヶ崎の城詰めの人を皆殺しにするわけではないからね。


 私達は18時に出発した。最大速度なら夜中には到着できるが、夜戦は危険だ。まして、みんな初陣だしね。


 行きの船内は様々な感じだ。主に私に近かった中ノ島の西面武士の子孫の山田さんなんかはかなり士気が高い。ちなみに血筋が本当に関係あるのかは分からないけど剣、刀の適性はこの人が1番高いと思う。


 彦太郎が直々に剣、刀の基本や技を教えこんでいた。飛ぶ斬撃は当たり前。突きもただの突きではなく、地を這うような衝撃波を軽く出すような突きもマスターしている。


 後は私達が居る島の各地の村長さん達だ。竹蔵さん始め、幸次郎さん、正竹さんなんかはやはり士気が高い。


 知夫里の雷蔵さんには今回の戦で出番があるかは分からないけど、射撃が1番上手だったのでバレット M82を渡している。所謂・・・スナイパーというやつだ。


 本当なら野戦とかで遠くから指揮官を狙ってもらいたいが城攻めだからどうなるかは分からない。バレット M82は対人ではなく対物ライフルだ。


 12.7ミリの弾から放たれる一撃はもし人間に当たれば肉片になってしまう事間違いなしだろう。


 ちなみに、ゲーム内でもかなり人気の武器の一つだった。有効射程距離が2000メートルと長く、実際では分からないがゲームでは威力減衰がなく弾速も早いため偏差撃ちも容易だったからだ。


 「雷蔵さん?バレットで人を狙う場面があるか分からないけど構いませんか?」


 「え!?ワシは出番なしですかぃ!?」


 「う〜ん・・・野戦とかなら出番ありありなんですけどね・・・どうしよう・・・」


 「美幸様?どうせなら雷蔵殿に開戦の合図をお願いしてみてはいかがか?」


 「うん?彦太郎どういうこと?」


 「いや、開戦するには合図がいるでしょう?このバレットで金ヶ崎の城に向かって1発斉射するだけで相手も意味が分かるかと」


 「おっ!!さすが彦太郎!よし!雷蔵さん!そういう事だなら開戦の合図よろしくお願いしますね!」


 「ま、任せてください!」


 「まぁ、そう気負わなくてよい。某が横に居る」


 「彦太郎様すいません!」


 今が1572年5月10日・・・本当の歴史ならこれから三方ヶ原の戦いが起こるところだろう。けど、それは既に決着が付いている。暁君がヒャッハーしてしまったからだ。


 しかも上杉というオマケも同時にだ。これから史実にない戦いを・・・私が・・・。


 そして・・・日付けが変わった5月11日、時刻は早朝の5時・・・少し明るくなり始めたくらいだ。


 ロングビンの後方に私の名前の船を操船する真白が居る。運営がなんのために装備したか分からない龍のモニュメント・・・それが初めて役に立つ!


 「艦内放送します。上陸目標 敦賀が見えてきました。これより浮上して始めます。まずは敦賀の占領を目標に!時間は2時間の予定です!では!各々の励んでください!」


 「「「「オォォォォーーーーー!!!!」」」」


 続いて私は電話で真白に伝えた。


 「私が浮上した後、1発水平線にミサイルを放つ!それから小舟に乗り上陸開始!私が20号拠点をあるだけ出すから領民はそこに避難させて!反抗的な人や規律を乱す人、犯罪者は要らないから!」


 『任されたし!』


 私は一気に浮上した。肉眼からは分からない。そもそも私達に気付いている人が居るかも分からない。だがそんな事お構いなしに私は・・・とうとうミサイルのボタンを押してしまった。


 ブシュュゥゥゥゥ〜〜〜〜ンッ!!!!


 「上陸開始ッッッ!!!!!」


 っていうか・・・今思い出したんだけど・・・いつかのテレビで見た記憶がある・・・確か織田が金ヶ崎の撤退をした以降・・・この金ヶ崎城って廃城になったって言ってたっけ!?


 それならこんなに武士が少ない事に納得できる。できるけど・・・


 「うらぁ〜!!朝倉がなんぼのもんじゃ!!隠岐島、中ノ島幸次郎!只今参上!!」


 うん。こんな士気が高くなってるとは思わなかった。これ・・・敵が居なかったら完全に不完全燃焼よね・・・。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る