新たな味方、ミノタウロスの彦太郎君
「これは自分の容姿を好きに変える事ができるアイテムなの!ランダムだから作り直す事はできないけど上手くいけば・・・だから彦太郎さん?防御しないでね!」
このエディターボールとは相手に投げるとランダムで容姿を変えられるアイテムだ。当初このゲームは容姿を変えられない事によって使えないアイテムが多数あったのだがこのアイテムで少し解決したのだ。
例えば髪の毛が生える薬。あれなんかもアバターを元からスキンヘッドにしていれば生えてこないっていう不具合があった。他にもスキンヘッドキャラは使用不可という兜なんかも多数あった。
かなり運営に文句が入ったようだが頑なに運営は無視していた。何でアバターを変えられる物をすぐに出さなかったのかは不明だ。とにかく運営の偉い人はハゲが嫌いな人ではないかと言われていた。
そして、私は希望を込めて彦太郎さんにエディターボールを投げる。
チャポンッ!
「よし!成功!男だよ!」
ちなみにこのアイテムは一つリアルマネー100円で売られていた。私も念の為とリズの容姿を変えたい時のために10個持っている。ただ成功率は85%・・・まぁほぼほぼ成功するがたまに失敗するのだ。今回は成功したみたい。
「成功した時のエフェクトだね!」
シュゥ〜〜〜
彦太郎さんが煙に包まれ徐々に煙が晴れる・・・
「おぉぉ!!中々いいんじゃない!?」
「美幸様!?これはまさか・・・」
「我が・・・我が人間になったのか!?」
その姿は筋肉隆々マッチョ、身長も2メートルくらいある!しかも運良く男顔だ!見た目の年齢は30歳くらいかな!?かっこいい!!
「彦太郎さん!それでいいですか!?カッコイイですよ!!」
「すまぬ!ありがとう!ありがとう!!ウォォォォォォーーーー!!!」
いやいやなんちゅう泣き声よ!?泣いて喜んでくれるのは嬉しいけど大袈裟すぎじゃない!?
「良かったね!これから私と一緒に来る?もし、嫌ならあなたなら優しそうだし他の人間の人と一緒に住めるかもしれないよ?」
「一緒に着いて行ってもよろしいか?」
「やったぁ!!オッケー!オッケー!でも杉の木は大丈夫なの?」
「我はそんな柔ではない。過酷な環境でもこの地に根を張り生き続ける」
あっ、そうですか。さすが屋久島の杉の木の化身ね。
「あなたは私より下ですわよ!つまり私の子分ですわよ!いいですわね!?」
「相分かった」
「荷物も重い物も率先して運ぶのですよ!いいですわね!?」
「相分かった」
「美幸様をちゃんと御守りするのですよ!これが1番の任務ですわよ!」
「この身尽きようとも美幸様を御守り致すと誓う。美幸様これを」
なんか凄い重い事を言われ、艶は艶でさっそく先輩風吹かせ偉そうに言ってるけど・・・。
「うん?くれるの?」
「この身には少し重く振れそうにない」
彦太郎さんが持っていた斧を渡されたけどドーピングしてる私ですら重たく感じるからこれは使えそうにないね。
「よし!ならこれを彦太郎さんにあげるよ!じゃじゃーん!!」
私が渡した物は艶と同じ12属性剣の一つ・・・【幻闘剣】だ。これは雷鳴黒刀を引いた時、1発で当たりを引いて、せっかく3回分引くために入金したので引いて当たった1振りだ。
この剣は見た目は西洋の剣サイズだが、実は持ち手により最適な大きさに変わる、その名の通り幻の剣だ。固有技は一振りすれば相手には至る方向から斬られているような幻覚を見せ混乱させる技がある。
12属性には「冥」 「日」 「月」 「火」 「水」「木」「金」 「地」 「風」 「霧」 「幻」「雷」
とあるが、私は雷と幻の二つが当たった。そしてこの中で最強と言われるのがこの幻闘剣だ。直接的な能力変化は起こらないがプレイヤー対プレイヤーには非常に強力な剣だ。ただ、私には合わなかった。そもそも手数で勝負するタイプではなかったし私は遠距離チクチクが好きな卑怯なタイプだ。
「これを我にいただけるのか!?」
「いいよ!いいよ!好きに使っちゃってくださいね!よーし!さぁ!帰ろう!」
私がそう言うと彦太郎さんが『ハッ!』と言って外に出れた。そして、彦太郎さんはジャンプしたと思えば自分で龍神杉のてっぺんの葉っぱをゴッソリ切った。最早、剪定の域を超えてるレベルで切った。
自傷行為よね!?痛くないの!?これが素直な感想だ。
「これを貴方様の忠誠の証に。それと今後は呼び捨てで良いです」
「分かったよ!ってかこんなにも大丈夫なの!?痛くないの!?」
「気持ちいいくらいです。頭が重く陽の光が当たりにくく辛かった苦行の毎日でした」
ドMですか!?苦行ならパッと夜中にでも出て自分で切ればよかったんじゃない!?
まぁ目的の物も貰えたし、これは有効に使おう!
「艶!彦太郎!帰ろう!!」
私は彦太郎の手を引きながら走る。ドーピングしていない彦太郎だけど普通に私達に着いて来れる。やっぱ能力値おばけのミノタウロスだわ。多分、真白や艶といい勝負するのじゃないかな?
山を降りて、船の近くになると人集りを見つけた。しかもみんなお粗末ながら武装している。
多分来る時に斬った人の関係かな?けどあれは私のせいじゃないし。
あっ、それと彦太郎の服は【アラクネのメンズ和装服】を着てもらっている。アラクネという幻の蜘蛛の糸でできた伸縮性、吸水性にすぐれた軽くて丈夫な素材の和服だ。実は私の普段着もこのアラクネレディース和服を着ている。
防御力もそこそこ高い。ミノタウロスさんが居るならアラクネもどこかに居るような気がする。ゲームではランダムで現れ、アラクネの大好物なチョコレートを渡せば服を作ってくれるんだよね。
確かアラクネの設定もあったような気がする・・・まぁそんな事は今はいい。この人達をどうにかしないと先に進めそうにないな。
「美幸様、少しお下がりを。相手は少し気が立っているようで。風のざわつきにて分かります」
「風のざわつき?」
「はい。我はこの地に生まれ1500年・・・風を友として悠久の時を生きて参った」
いやいや、風を友としてって・・・どんな技よ!?教えてほしいくらいだよ!?
「なに奴だ!?」
「伊地知様!あいつです!あの真ん中の男のような女です!」
「止まれ。領内にてワシの配下に刀傷を負わせたな?」
相手がそう言いながら近付いて来ると彦太郎は明らかに相手を斬るように見えたので止める。
「彦太郎、待って。私は大丈夫。信じるかどうかは分からないですが、その横にいる男の人が鉄砲を向けながら男のナニを出して来ましたので私の護衛が斬りました」
「おい!伊介!?話が違うではないか?」
「そ、そんな事ないです!こいつらに急に襲われ身ぐるみ剥がされ気付けば大事な大事な・・・」
「何か証拠でもあれば分かるのだがなにせお主1人だったからな・・・」
「まず・・・私達にこの人を襲うメリット・・・襲う意味がありません。これだけで分かりませんか?」
「確かに此奴の言う通りならば身ぐるみ剥がされなにも持っていないからイチモツを斬る意味は分からんな。無防備に晒していたならば・・・」
「伊地知様!?俺よりこんな奴を信用なさるのですか!?あんまりです!!」
よくもまぁ、嘘を平気で言えるよね。スパイバードカメラで撮っておけばよかったと思う。
「まぁ部下の手前、なんぞ落とし前を付けねばならぬ。この意味が分からないわけではなかろう?」
「はい?こっちはやられた側なのに何かこっちもしろって事ですか?」
「それが礼儀だ」
「話にならないですね。まぁ極力騒ぎは起こしたくなかったし彦太郎も居るからもういいかな。彦太郎!艶!下がりなさい!私が殺る!私は平和主義だけど欲望に任せた男は本当に反吐が出る。あなたは歴史上の名前で知らないけどここで終わりね」
「皆の者!殿を守れッ!!!」
私は意味の分からない事は嫌い。それがしかも私の嫌いなレイプ紛いの事をされて私が詫びをしろとか話がおかしいを通り越して死に値する。この世界は弱肉強食。
素早くクレオパトラ剣を抜いた。そして、固有技を使う事もなくゲームの時・・・幾度となく動いた動き・・・不思議と当たり前のように動ける。火縄銃を構えている人も居るが撃たれる前に素早く・・・
シュパッ シュパッ シュパッ シュパッ
周りに居る人は3秒足らずで全員斬った。
正直技を使うまでもない。3秒足止めさせずとも殺れる。
すると海の方に居た一段がこちらに気付き走りながらやって来た。
「殿ぉぉぉ!!伏せてください!!」
その一段の1人が叫ぶと聞きたくない音が聞こえた。
パンッ パンッ パンッ
以前にも聞いた間近で聞く銃声・・・油断してしまった・・・。
けどここで彦太郎が私の前に現れ私を守るように両手を広げる。
パシュ パシュ パシュ
肉に弾が入り込む音だ・・・前の木崎原でも聞いた聞きたくない音・・・。
「彦太郎ッッ!!!!」
「我思う故に我あり・・・我の存在意義が今分かった。我は美幸様を待っていた。美幸様を御守り致すためだと!効かぬ!効かぬよ!!!我の地から生命を消せッ!!破断ッ!!!」
ズシャァァァァァァァーーーーーーーーッ!!!
それは圧倒的な武だった。幻闘剣の固有技?修練した技?全然違う。ある意味反則だ。だって・・・
「彦太郎!?それってミノタウロスの固有技の破断でしょ!?持ってる得物が違うのに出せるの!?」
「いえ、初めて試しました。できるようでした」
いやいやできるようでした。ってなによ!?今の薙ぎ払いで鉄砲撃ってた人真っ二つなんだけど!?
「ところで・・・彦太郎?あなたどうするの?後ろの幽霊船・・・カモフラージュネットっていう物で隠してるのだけど多分船も傷ついてると思うわよ?」
「相すまぬ。艶殿・・・相すまぬ」
艶が冷静に言ってるけど今思えば破断の刃圏に含まれてるよね。なんなら義弘さんの居る飯野城まで届く勢いの衝撃波に見えたよ!?
「ヒッヒィ〜〜!!!」「た、祟りじゃぁぁぁぁ!!!」
「おい!こら!待て!!」
シュッ
艶が伊地知って人の首に刃を向ける。
「私達に楯突く事がどうなる事か分かったかしら?その前に・・・」
艶は私の方を向き判断を仰ぐ目を向ける。多分あの褌を脱いだ小物の人の事だろう。腰を抜かして思うように逃げられていないようだ。
私は軽く頷いた。
「特別にあなたは固有技で終わらせてあげましょう」
「ま、待って!待ってください!死にたくない!」
「スパークショット!」
その刃は近付くだけで高音になり肉が溶ける技だ。それを躊躇なく相手の首に振り抜いた。
スパッ
高温過ぎて血すらもすぐに蒸発し砂のようになり刀に汚れは付かない。だが確実に斬られた者の血は黒刀の刃に吸い取られ糧になっただろうと思う。
「みくびった・・・。最早敵う相手ではない・・・斬れ」
私は躊躇せずこの伊地知って人を斬った。
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