気合いだ!気合い!

 時を同じく・・・ここは明の船内・・・現在全速力にて秋田県沖を航行中。


 「姐御!!気分が悪いです・・・」


 「バッキァロ〜!な〜にが気分が悪いだ!!そんな事でよく倭寇なぞと呼ばれていたな!?気合いだ気合い!」


 「姐御!」


 「なんだ!?」


 「この文字の発音はこれでーー」


 ドガンッッッ


 「あーしが今そんな暇に見えるか!?あーしは今できるだけ横揺れしないように操船してるのだ!!そもそもアイシュタインの飴を食べたのだろ!?」


 「・・・・・」


 「うん?まさか吐き出しやがったのか!?」


 「すいません。吐き出してはいません!紙にクルンデいます」


 ドガンッッッ


 「おめー今の発音はおかしいだろうが!!早く食え!見てみろ!リンを!リンは完璧に話が出来ているだろうが!」


 「おい!お前!言う事聞かないならサメの餌にしちまうよ!」


 「勘弁してくダサイ」


 「ゴチャゴチャ抜かすな!お前!名前はなんと言うのだ!?」


 「はい!俺はユーリャオリョンとーー」


 ドガンッッッ


 「長い!覚えにくい!日の本の人間は発音しにくい!お前は今日からリュウだ!覚えておけ!」


 「え!?リュウですか!?」


 「なんだ?嫌か?あーしはお前が1番見所があると思ったのだがな」


 「ハイ!喜んで!!」


 「よぉ〜し!特別にお前はあーしが作る刀を渡してやろう!」



 

 「彦太郎?これはどうするわけ?どう落とし前つけるのかしら?」


 「艶!そんな言い方やめて!これから仲間になるのだから仲良くして!」


 「いや・・・相すまぬ」


 カモフラージュネットを外して船を見たけど明らかに船の先端が折れている。元から幽霊船と名の通りボロボロだが本当の意味で壊れてしまっている。沈没こそしていないがいつ沈没してもおかしくないようだ。


 ちなみに、倒した人達は彦太郎の特殊能力?ゲームでも見た事ない技で杉の木の養分となった。まさかあんなファンタジー全開な事が起こるとは・・・


 

 〜私が伊地知って人を斬った時〜


 「斬ってしまった・・・あれだけ自分で怒りに任せて殺したりはしないと思ってたのに・・・」


 「美幸様?あれはしょうがないと思いますわよ?明らかに攻撃されそうだったではないですか!」


 「うむ。我も遅かれ早かれ何かしらの攻撃はされていたと思う。闇に堕ちた仲間を我は見て来たが美幸様の目は堕ちていない」


 闇に堕ちた仲間!?そんな設定あったっけ!?


 「まあ私もやってしまった!!とは思うけどもう一度同じ事が起こっても同じような結末になると思う。木崎原で私の居た時代の倫理観は関係ないと分かっている」


 「そうですか。ならば良いかと」


 「ってかこの亡き骸どうしよっか・・・放置するのはまずいよね・・・」


 「もし・・・良いならば我が始末しますが?」


 「いいけどどうするの?」


 「ありがとうございます。では・・・」


 ゴボゴボゴボゴボゴボゴボゴボゴボゴボゴボ


 「な、なに!?木の根っこ!?」


 「我の本体の養分となり仁比娵(にいよめ)先輩の養分として分け与えます」


 「先輩!?誰!?初めて聞いたよ?」


 「我の本体より更に上に登った場所に居る先輩です。およそ7000年という悠久の時を生きております。静かに過ごすのが好きなようで我がたまに陽の光から養分を分けていました」


 縄文杉の事!?ゲームでは縄文杉は神木的な意味だけだったと思うけど・・・あ、いや意味がないからと私が説明すら見てなかっただけなのかな!?あるにはあったけどそんな裏設定があったのかも・・・。


 「じゃあその仁比娵さんだっけ?その方も連れてくる?」


 「いえ。先輩は大人しくしてもらいましょう。先輩はこの地そのもの。無闇に外に出るわけにはいかないのです」


 「そうなんだ。じゃあたまにお供物でもしよっか!彦太郎!このお酒を渡しておいて!」


 「分かりました。今は眠っているので前に置いておきます」


 〜現在〜


 「本当に綺麗になったね。彦太郎!ありがとう!」


 「美幸様、喜んでおりますが帰れるのですか?」


 「あぁぁぁ〜そうだった!!船をどうにかしないと・・・」


 私はどうにかしないとと、思いつつ艶は彦太郎を叩いて、彦太郎は下を向いている。小さな小舟はあるけどさすがに危ないし・・・。


 すると急に風が吹いた。風の音は強いが肌に当たる風圧は優しい。そしてその風に気配を感じた。


 「だれ!?」


 「美幸様、仁比娵先輩です」


 彦太郎は頭を下げ後ろの方へ向いた。


 「其方がこの酒を備えた人間かえ?」


 「え!?あ、はい!そうです・・・お口に合いませんでしたか!?」


 私はなんていう言葉を言ってるのだろかと自分でも思う。この仁比娵さんは見た目は人間の女性。若くも見えるし年老いたようにも見える。ただ一つ分かるのは絶対に手を出してはいけないという事だ。


 「ほほほ。良きかな。このような酒を飲んだのは久しぶりゆえな?目が覚めてしもうた。彦太郎であろう?その姿は」


 「はっ。美幸様に幻体ではなく本物の体をいただきました。念話にて伝えた通り、この彦太郎の存在理由を知りました。故に、我はこの地を暫し離れます」


 さっきまで彦太郎の横に居るかと思えば、気付けば私の横に居た。


 「其方は美幸と申すのか。妾は仁比娵。この地の守り神と言われておる者じゃ。久しく外の世界に出ておらなんだ」


 「そ、そうなのですね・・・」


 「ふふふ。鼓動が早く鳴っておるな?誠、小気味よい人間の女子じゃ!妾が以前起きていた時と随分変わっておるようじゃな?それは船か?」


 「は、はい!船です!」


 「あの船で海原に出ると死ぬぞ?竜骨が折れておる」


 「そうであります!仁比娵様!実はこの彦太郎が自分の技で壊したのですわよ!」


 「つ、艶殿!?その言い方はーー」


 「ほほほ!!!実に面白い!」


 仁比娵さんがそう言うと突風が吹き、それはいつしか竜巻になり船を巻き上げた。


 「あっ!ちょ!!仁比娵様!?あれがなければーー」


 「静かにしなさい?妾は今、機嫌が良い!その礼じゃ!」


 シュゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 ザッパァァァァァ〜〜〜〜ン!!



 巻き上げられた船が落ちてきて水飛沫が上がる。


 「ほほほ!これで良い!妾の一部を使い、彦太郎の一部で補強した!どんな荒波にも立ち向かうであろう!良き哉!」


 幽霊船となっていた船は見るからに新艇と思うような傷一つない船となっていた。


 「仁比娵様!!ありがとうございます!!助かりました!!!」


 「ほほほ。彦太郎に外の世界を見せてやってちょうだい。そしてたまには妾に先のような酒を持って来ておくれ。達者でな」


 仁比娵さんはそう言うと風に乗り消えていった。


 「ハァー ハァー ハァー ハァー」


 「美幸様大丈夫ですの?」


 「艶ごめん・・・実は凄くビビってた・・・」


 「美幸様すみません。あれが仁比娵先輩です。我なんぞ足元にも及ばぬお方です」


 「いやいいの。それより船も直ったし帰ろっか!」


 「「はい!!」」


 私は竹島に向かいながら考えた。ゲームでこのイベントはなかった。むしろこの彦太郎は門番という事で出会うとすぐに戦っていたけど仲良くなるって選択肢を入れると今のようなイベントが起こるのだろうか。


 それに2人には言わなかったけど・・・インベントリーに【CH-47チヌーク】と【ハーベスタ】【ブルドーザー】【耕運機】が入っているんだけど・・・。


 全部ゲームでは課金ガチャでしか手に入らない物ばかりなんだけど!?

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