神の子池のアラクネ

 「美幸様・・・ま、まだでしょうか!?」


 「もう少しだから頑張って!」


 竹島まで後、10分くらいだ。なんならもう見えている。声を震わせているのは彦太郎だ。


 なんと彦太郎・・・泳げないらしく海が苦手と言っていた。確かにゲームでも水属性が弱点だったよね。こういう意味だったんだ。


 「彦太郎!情け無いですわよ!!あなたは如月軍初の男武将になるのですわよ!!」


 そういえば確かに男の仲間は初めてだ。まぁ過剰戦力のような気がしないわけでもない。


 そうこうしてる内に竹島に戻って来た。


 「「「お帰りなさいませ!美幸様」」」


 「あれ!?松さん!竹さん!梅さん!」


 出迎えてくれたのは例の3人だ。


 「美幸様、お疲れ様です。お召し物に付いている血は・・・いえ何でもございません。お風呂を沸かしております。お先にどうぞ」


 「あ、うん。リズごめん!ありがとう!仕事増やしてごめんね」


 「いえ。構いません」


 リズは戦闘やいざこざの事をあまり聞いてくる子ではない。アンドロイドではあるが戦闘はできないからかな?けど、普通の女の子のように見える。


 「先に紹介するよ!彦太郎君です!仲間になりました!」


 「我は彦太郎と申す。よろしく頼み申す」


 「松と申します」「竹と申します」「梅と申します」


 うん。まさに松竹梅だな。いや、失礼すぎか・・・。


 私がお風呂に入っていると、リズが入ってきた。


 「お背中お流し致します」


 「え?いいよ!大丈夫だよ!」


 「遠慮しないでください」


 リズが私と話したそうにしてるのが分かり背中を流してもらう事にした。まず聞かれたのはやはり彦太郎の事だ。どこの誰か、何があったのかをちゃんと言った。


 そして、血の相手だ。私はありのままの事を伝えた。


 「では、美幸様はお怪我はされてないのですね?」


 「うん。大丈夫だよ。艶も居るし、彦太郎も相当強いと思うよ!なんなら彦太郎1人で全国制覇できる勢いじゃないかな?」


 「それを言うなら日本統一ですよ」


 「いやまぁ、そうとも言うね!ってか聞いて!聞いて!彦太郎を仲間にして、縄文杉の化身?さんにお酒のお供物したんだけど色々貰えたんだよ!」


 だいたいガチャでしか手に入らない物は私は暁君に寄生して使わせて貰ってた卑怯者だけど持ってないアイテムばかりで実に嬉しい。暁君ですら持っていない耕運機やハーベスタなんかはかなり素敵だと思う。


 隠岐では誰が治めているか分からないけど私が貰おう!ちゃんと話し合いでだ!


 「ハーベスタが手に入ったのなら木々の伐採から皮剥きまですぐにできますね!」


 「そうだね!耕運機もあるし、田打ちや田植えなんかもすぐにできるよ!」


 「クスッ!良かったです!私も頑張ってよかったです!」


 「あの3人の事でしょう?違和感なく話できているね!アラビア数字やなんかも完璧なんでしょ?」


 「はい!問題ないかと思います」


 どんな教え方したのかは分からないがリズが断言するのは珍しい。よし。これで今できる事はしたよ!今日は彦太郎や3人の顔合わせって事だし、少しパーティーでもしようか!!





 〜蝦夷地〜


 「姐御!ここが神の子池という場所でしょうか!?」


 「バッキャロー!何回も説明したじゃないか!ここが神の子池だ!てめーら!気合いを入れろ!!」


 「リン頭領!?何故気合いを入れる必要が!?」


 「私に聞くな!直接、真白様に聞け!」


 「よぉ〜し!おめーら!20リットルポリタンクを持ったか!?1人二つだ!右手と左手に持ったな!?それを持ち、網走まで走って行くぞ!」


 「姐御!網走とはどちらでございますか!?」


 ドガンッッ


 「貴様名前は!?」


 「はっ!リュウグオーー」


 「長い!貴様は今日からポッポだ!」


 「え!?ポッポですか!?その意味は!?」


 「あん?そんなの決まってるだろ!鳩ポッポみたいな顔してるからだ!文句あるか?」


 「いえ!ございません!」


 「ならばよし!お前もあーしが作る刀を渡してやろう!者共ッッ!!気合いだ気合い!全力で走れッッ!!!!」


 「真白様!」


 「リンどうした!?」


 「いえ、あちらに見慣れぬ人の身体くらいありそうな蜘蛛がおりますが!?」


 「なに!?どこだ!?」


 あれは!?アラクネか!?アラクネは臆病なはず!何故ここに居るのだ!?


 「リン!先に行け!ここはあーしに任せろ!」


 「お気をつけて」


 よーし。ここは逃げられないように慎重に事を運ぼう。美幸っちが喜んでくれるはずだ!


 「どうしたんだい?迷ったのかい?」


 「甘い物がほしぃ・・・」


 なに!?甘い物だと!?何だ!?何が欲しいのだ!?


 「甘い物とは食べ物か!?」


 「チョコレート・・・」


 「よし!チョコレートか!食え!山程食え!!」


 ガラガラガラ


 よーし。これだけ出せばいいだろう!


 「もっと・・・・」


 はっ!?此奴舐めてるのか!?200個は出したのだぞ!?もう食べやがったのか!?インベントリーに入ってる物は使っていいと美幸っちが言ってくれたがさすがにもう出せないぞ!?


 チッ。あーしが錬成で作るか!?食い物は作った事ないが・・・。カカオは・・・よし。あるな!砂糖に、ミルクに・・・。


 ヒュイーーーン ピンポーン


 「よし!できたぞ!あーし特製のこの世界にない特別なチョコレートだ!食え!!」


 「おかわり・・・」


 此奴・・・クッ・・・こうなりゃどちらが勝つか勝負だ!!


 「こら!アラクネ!私が作るチョコレート全部食べてみせよ!どちらが先に力尽きるか勝負だ!!」




 「よっしゃぁ〜!!俺が1番だ!!姐御!!リュウ!このリュウが1番ですよ!!さぁ!叩いてください!ご褒美の鞭打ちを!!って・・・あれ!?」


 「お前は何を言っているのだ?どう見ても俺が1番だろうが!ご褒美の姐御の足踏みは俺だからな!」


 「なっ!?足踏みだと!?姐御の素足での踏み付け御褒美をお前がか!?許せん!!」


 「お前らは少しだまれ!」


 ゴツン ゴツン


 「「リン頭領・・・」」


 「美幸様に言ってまた斬られたいか?」


 「あ、いえ・・・いやでも・・・あれはあれでそそられる・・・」


 ゴツンッッ!!


 「変態が!真白様は後で来られる!少し待っていろ!」


 この明の船員・・・元は倭寇のメンバーだが、真白が錬成で作ったとある薬を飲み、アインシュタインの飴を食べて驚異的な頭脳を持ち、驚異的な身体能力を授かった。だがその副作用としてみんなドMとなってしまった。


 美幸がこの事を知るのはもう少し後の事だ。

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