遠征準備

 今、島津さんはメディカルポットに入っている。何もないだろうが念の為だ。


 「な、なんだがむず痒いのう・・・」


 「さすがの島津様でも見知らぬものは怖いですよね。ですが安心してください。体の隅々まで悪いところがあれば治療致しますので」


 ちなみに先に上井さんをポッドに乗せて診察したが、逆流性食道炎を患っていたので治してあげた。


 そして島津さん・・・島津さんはさすが歴戦の猛者と言える気がする。大きな怪我や病気はないが肩や足首など多分昔骨折したのか、骨の小さな破片が残ってある感じだった。


 普段の生活に支障があるのかないのかは分からないがスキャンして取り省く事にした。


 プシュ〜〜〜〜〜〜〜


 「はい!お疲れ様でした!島津様は身体の一部分に骨が欠けてあったようですので治療しておきました」


 「なに!?そうなの・・・か!?いや確かに腕が回る!!治った・・・のか!?」


 「はい。いつ、どのようにして怪我をされたかは分かりませんが問題ないかと思います!」


 「これは素晴らしい!!!若き頃のような体の軽さではないか!!如月!!よくやってくれた!!!これほど嬉しい事はない!!」


 「はい。喜んでもらい、こちらこそありがとうございます」


 やはり何かしら違和感とかあったみたいね。けど治ってよかった!!よし!もっと驚かせよう!!


 それから私自慢のお風呂に案内した。大浴場、サウナまであるお風呂だ。外に作った大理石の露天風呂まである。ここで、疲れを癒し最後はリズが作ったバニラアイスだ!


 「心が洗われるとはこの事だろうと思う。志布志にも湯が出るところがある。だがそれをこのように家に引き込むとは思ってもみなかった」


 まぁどういう原理かは私にも分からない。ゲームの時みたいに使えるのだから使わないと損だと思う。私は女だから遠慮したけど、男同士2人で長風呂をしたようだ。


 「お疲れ様でした。最後にこれをどうぞ。甘いバニラアイスになります!」


 「なに!?冷たいだと!?」


 「はい。冷たい甘味みたいな物と思っていただけると良いかと」


 「良い!これは美味い!皆にも食わせてやりたいくらいだ!!」


 「殿!?」 「殿はおりまするか!?」


 島津さん上井さんが真白が作ったアラクネの糸でできた伸びる素材の和服を着てバニラアイスを頬張っていると、外から大声で島津さんを呼ぶ声が聞こえた。


 「あの声は・・・新納か?如月、すまぬ。出口はどこだ?」


 「こちらになります」


 そう言い外に案内した。途中、真白とすれ違い上井さんにこれまた女物の服を数点渡していた。紙に着方まで書いている、喋り方には到底似合わないことまでしている。


 「上井の旦那!!あーしが作った服はどうだい?」


 「え!?だ、旦那!?」


 「あっ!上井様!真白はこういう誰にでも話し方が変わらないので御勘弁ください!」


 「あ、いやおいは構わないが・・・それにこの服は着心地も良く素晴らしい。真白殿?ありがとう」


 「いいさ!いいさ!これらも持って帰っておくれ!城の女連中も喜ぶと思うぜ!!また何か欲しい物あれば言ってくれよな?キャハッハッハッ!」


 うん。上井さんは少し引いているな。この時代の女性は物静かなのが当たり前だ。それをあの現代のギャルのような口調・・・テンション・・・まぁ真白の旦那になる人は居ないだろうと思う。


 「辱い。ちゃんとおいが責任を持ちお渡しさせていただく」


 そんなやり取りをしていると新納さんが呼びに来た理由が分かった。


 「はぁ!?こんな夜更けに兄者が城に参っただと!?何故だ!?明日ではなかったのか!?おいどんはこれからこの如月邸にて今一度、さうなとやらで一杯引っ掛けようと思っておったのに・・・グヌヌヌ・・・」


 私は正直そこ!?と思った。まあ別にサウナにいくら入ろうがお酒も好きなだけ飲んでもいいけどそんなに楽しんでくれるなら感情をもっと表に出してくれればいいのにと思う。


 「島津様?ここに来ればいつでも楽しめるように、リズや真白に伝えておきます。なのでどうか・・・」


 「うむ。相すまぬ。上井!!戻るぞ!!」


 「は、はい!」


 上井さんは両手いっぱいにお土産を抱えて帰っていった。


 さて・・・私は本格的に遠征の準備に入ろう。まずは屋久島に行きスギの葉。北海道に行き神の子の水。帰りに少し・・・尾張に寄ってみようかな?


 「リズ?正次郎さん達はどうしてる?」


 「はい。地下の方でお休みしています。どうも娯楽の方はまだイマイチ分かっていないようでして今は自由に遊んでもらっています」


 「ふ〜ん。まっ、好きなように過ごしてもらおうかな?世界樹の涙を作ろうと思ってるの。暫く留守にするからリズにドクターハウスを任せてもいい?」


 「はい。留守はお任せください。この大きな土地の活用はどうされますか?」


 「う〜ん。ところどころ民家があるのよね?明日にでも挨拶するから【スパイバードカメラ】をオートモードで飛ばしてここらへん一帯の地図を作ってくれる?」


 「はい!分かりました!久しぶりに1からの内政ですね!私は楽しみで仕方ありません!!」


 「そうよね〜。本当に1からは久しぶりよね。リズ!一緒に頑張ろう!」


 「はい!頑張ります!艶!美幸様をちゃんとお守りするのよ!!」


 「任せなさい!武であたいの右に出る者は居ないわよ!」


 やっぱ艶のこの話し方は苦手だ。


 次の日さっそく挨拶回りに出掛けようとしてる時に遠矢さんが家にやって来た。


 「おう!おはようさん!」


 「あ、おはようございます!朝からどうしましたか!?」


 時刻は時計台で朝の6時。私は、ゲーム内ではなかった栄養ドリンクを昨夜、真白に飲まされて寝たのだがびっくりするくらい寝覚めがいい。


 疲れなんかも全てないように思う。だからなのか、朝の5時には目が覚めて朝風呂、リズが作ってくれたモーニングトーストを食べて準備していたのだ。


 「いや、俺も本格的に如月に組み込まれそうなのだ。昨夜大殿と殿が話し合いをしていてな?大殿も是非如月に会いたいと言っていたぞ?」


 「無理!無理!無理!私なんか会うほどの者なんかじゃないから!」


 「いやそれは無理だと思うぞ?正式に島津家の家臣となるのだろう?しかも殿が家老にしてやりたいと言っておったからな。家老となる者を大殿が知らぬ相手とはいかんだろう?」


 「えぇ〜!?家老!?そんな・・・」


 「嫌なのか?」


 「いや、別に嫌って事はないですけど、私こんな出立ですが女ですよ!?しかも、新参も新参!!他国出身ですよ!?」


 「それに関しては殿は気にしないお方だ。まっ、正式にまた言われると思うから覚悟しておけよ?それで今からどこか遠乗りにでも行くのか?」


 「いえ、実はこの地に数軒ですが民家がありますので挨拶回りをしようかと思いました」


 「おっ!殊勝な事だ!女子2人で行くのは危ないだろう?俺が護衛してやろう」


 「ありがとうございます!こちらは女ですけど私の護衛の艶と申します!」


 「如月様の護衛の艶と申します。よろしくお願い致します」


 「ほう?南蛮者かと思いきや日の本の言葉を話すか。如月を見て俺は見た目で判断しない事にしたのだ。お主は中々やるな?絶妙な立ち位置だな」


 なんか2人でバチバチしてるけど仲良くしてほしいんだけど!!


 そんなこんなで始まった領内?視察である。まずは1番遠い、ここから7キロ程先にある川内川と呼ばれる川の近くに居る老夫婦の人達だ。

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