隠岐島に到着

 隠岐島・・・現在の島根県に属する島だ。


 島前は「島前三島」と呼ばれる知夫里島(知夫村)、中ノ島(海士町)、西ノ島(西ノ島町)から構成される群島である。これに対し、島後は1島(隠岐の島町)のみである。島後の面積は約242 km2。


 何かのテレビの特集で言ってた記憶がある。私達一行はその島の眼前に居る。


 「美幸っち!?どこに上陸するつもりだ?」


 電話にて真白から連絡が入る。いきなり本島に行くのではなくまずは、島前の西ノ島に行く事にした。現在の別府港と呼ばれる場所にある見付島に船を着ける事にする。


 何故ここにしたかというと、中ノ島と知夫里島に挟まれ海流が比較的穏やかだからだ。


 私達が船で近付くと島の人達が集まり始めた。さてこれからやる事がいっぱいだ。家を建てないといけないし、場所も島民達に配慮して貰わないといけないし。


 「何しに来た?お前達は誰だ?」


 「美幸様、お下がりください」


 「彦太郎!待って。私が言う」


 相手は着てる服こそボロだが腰には立派な刀をぶら下げている。多分、島の有力者の人かそれとも・・・


 「私は如月三左衛門美幸。この島を拠点にするためやってきた」


 この如月三左衛門美幸・・・私はもう性別を偽る事をやめようと思い、今は自己紹介する時はこのように言っている。前右府?あれは黒歴史だ!なかった事にしたい!


 「この島を拠点!?この島を何の島かと分かっての事か?この島は先の時代、後鳥羽上皇が崩御された地である」


 「そんな事くらい知ってますよ。あなたが誰かは存じ上げません。争うつもりもありません。見た感じまばらに家々が並んでいるだけだしょう?余ってる場所を貰いたい。ただそれだけです」


 「そうか。何もない島だ。ゆるりと過ごすがよい」


 え!?それだけ!?てっきり一悶着あるかと思ったんだけど!?


 「美幸様?どうしますか?」


 「う〜ん。あの人が誰かは分からないけどゆるりと過ごせって言ってくれたし遠慮なく私達は私達でしよっか?」


 「よっしゃ〜!者共ッ!!!あーしが今からこの辺一帯を平地にする!!!お前等は海に潜り今日の晩御飯のおかずを取ってこい!」


 また、真白が無茶言ってるよ・・・。


 「はっ!姐御喜んでッ!!!」

 

 明の船員・・・あの人は確かゴンズイさんだったかな?パシリみたいだわ。

 

 まぁとにかく場所は難なく確保できた!まばらにある家々の人に挨拶でも行こうかな!




 〜岡崎城モデル ノイシュヴァンシュタイン〜


 「もう、帰られるのか!?もそっとゆっくりしても良いのではないのか!?」


 「そうは言ってもですね・・・浅井、朝倉、本願寺の連中を駆逐したと言っても向こうは向こうで激戦だったみたいですからね」


 「いやだがまだ甲斐を落としたわけではない!其方は上杉殿を信頼しておるようだが・・・」


 「大丈夫ですよ。上杉様は信頼できますよ。小雪?上杉様なら大丈夫だよな?」


 「(クスッ)徳川様が焦らなくとも、もし仮に上杉様が今一度来ようともこの城は落ちませんよ。暁様が出した城ですよ?」


 「いやそうだが・・・」


 「私達は徳川様にだけ城を出すわけにはいけないのですよ。安土山に世界で1番の城を作らないといけないのです!ですよね?暁様?」


 「そうなんですよ。織田様からも手が空いているなら残党狩りに戦車を出せってせっつかれているのです」


 「大橋殿!?帰ると聞いたが誠か!?」


 「北条様にも聞かれましたか・・・はい。そろそろ戻らないといけないのですよ」


 「で、ではワシの娘を連れてってくれないか!?其方は政略結婚は好まぬと聞いておる。だがワシとしてもだな・・・」


 まぁ北条さんの思う事は分かる。繋がりが書面だけじゃこの世界の人は不安なんだよな。


 「小雪はどう思う?」


 「私は構いませんよ。暁様は小田原が好きなようですしね」


 「そうですね・・・。オレは難しいかもしれませんが小雪や家の人達と同じ生活を保証致します。本人が戻りたいと言えばいつでも送る事も約束しましょう。それでいいなら・・・」


 「誠か!?よし!大道寺!!直ぐに文を送れ!!美咲を連れて来るのだ!!」


 美咲・・・誰だ?そんな人居たっけな?


 「クスッ。恐らく氏康様の6女の史実では北条夫人の事ですよ。武田家が風前の灯なため歴史が変わったのでしょうね」


 「そっか。あの人なら確か名前が後世に伝わってなかったから初耳になるな。美咲さんっていうんだな」


 「よし!なら数日はまだ岡崎に居るのだろう!?」


 「徳川様!安心してください!ツェッペリンにて私が迎えに行きますので今日には経ちますよ!」


 戦が終わり、ぬるま湯に浸かりすぎたか。上杉が間に入りとりあえず2年間は勝頼も織田のいう通りにする事となったし。信長さんはオレに『甘いッ!!』『手温いッ!』と言っていたが名目上は、元服した信忠さんが総大将だ。


 でもまぁオレもよくあの信長さんを言い包められたな。


 甲斐までの道のり、甲斐から春日山城までの道のりの整備からだ。定期便や飛脚を送ろうにもあんな4回の山越えを毎回飛脚の人達にさせるのは申し訳ないからな。いくら氷があると言っても新鮮な魚やなんかも腐ってしまうしな。


 それにしてももう半年も経つのか・・・。戦が懐かしく思ってしまうな。もうここら辺は戦がなくなるだろうな。


 「おっと・・・失礼しますよっと」


 「勘助か?珍しいな?どうした?」


 「いや、アッシの配下の者を九州に遠征させて南蛮の物を参考までに仕入れようかと思ってたのですがね?」


 「九州!?また遠いところまで・・・それで何か欲しい物でもあったのか?金が足りないとかか?」


 「いやいや銭は余りまくってるくらいですよ。ただ・・・面白い事を聞きましてね?どうも島津家と伊藤家、大友家が小競り合いを起こしたそうですよ。それを男の顔をした女が少人数で5000を超える敵を釘付けにし、島津義弘殿が敵を木っ端微塵に壊滅させたとか聞きましてね?」


 男みたいな女?誰だ?


 「誰だ?知らんな。もしかして他のプレイヤー!?」


 「その節もあるかと思いましてね?ただ忽然とその者は消えたと配下から聞きましてね」


 男なら如月かと思うけど女?誰だ?薩摩は魔境でバトルジャンキーが多い地域だからな。野良の後世に名前が残らなかった奴という線もある。一応、これから西に向かうけど要警戒だな。


 「勘助!情報収集も頼むぞ!」


 「お任せを!では、あっしは蝦夷に向かいましょうか」


 「は!?北海道!?アイヌになにかするのか!?」


 「いやいやホッケの開きを食べたくはありませんか?」


 いや勘助の事だ。何か企んでいるな。





 〜隠岐島〜


 「ふぅ〜!結構出揃ったね!!彦太郎!大丈夫!?」


 「は!大丈夫です!」


 島に到着して1ヶ月が過ぎた。現代と遜色ない港を作り、活動範囲は島全体になった。リディアと私はまず近所の人達に挨拶を兼ねて回りまくっている。無償で服や米、果物を渡しているのだ。


 当初は真白が作った物だったが今はリンさんも含め、この地で栽培し取れた食材を広めるために無償で渡している。


 誰かがこの街を見れば畿内より発展していると驚くだろう。


 森の方や山の方は真白が旧約聖書に出て来るソドムとゴモラみたいに木を切り倒し燃やしていたが彦太郎が『今後は木がいくらでも必要だ。木を育てるのには年月が掛かる』と言ったので縄文杉の化身さんからもらったハーベスタで明の人達が切り拓いてくれている。


 横の島も中ノ島とも定期連絡をしている。ちなみに最初出迎えてくれた人は、その中ノ島の・・・後鳥羽上皇が所謂、承久の乱を起こした時最後まで後鳥羽上皇の矛となり戦い、流罪となった西面武士と呼ばれる人の関係筋の子孫の人だそうだ。


 私達を最初に出迎えた西面武士の山田重信さんって方は先祖の働きを誇りに思っているらしく、今でも後鳥羽上皇が生活をしていたとされる源福寺や御火葬塚を毎日掃除し、管理しているらしい。今でも自らを西面武士と自ら謳っているから敢えて私は何も言わなかった。


 そしてこの人・・・聞けば中々質素な生活らしく、身につけていた刀なんかも先祖の刀みたいで大事に使っているそうだ。真白にお願いして研いであげたのだがそこから仲良くなり交流もある。


 そんな私達だが中ノ島へは隣で、目と鼻の先だが行ってはいない。勝手に西ノ島に上陸して好き勝手してるのだから私達が中ノ島へ行き勘違いされてもいけないからだ。力ずくで全島私の物にしようと思えば5時間あればできる。


 だがそれはしない。何でもかんでも戦で、暴力で片付けるのはよくないがただ・・・


 「美幸っち!今日も一隻片付けて来たぞ!だが貧乏船だ!ちょびっとの銭しか積んでなかった!」


 明の船が少し来ている。南蛮船も居る。だが彼らが友好か?と聞かれるとそんな事はない。中には純粋に補給しに寄りたい船も居るかもしれないが今はまだそんな余裕はない。


 「大姐御!外浜の領民の引っ越しも終わりやしたぜ!さぁ!俺を叩いてください!」


 「いやいやリュウさんありがとう!けど叩かないよ!」


 まずは島の人達の家も全部提供している。元倭寇の人達は本当に良く働く。けどこの性格をどうにかしてほしいと思う今日この頃・・・。

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