リディアの目標

 「えぇ〜!?なんで薩摩に向かったのよ!?」


 「だって、九州で5000人をたった10人で防いだって聞いたから向かうのは必然でしょう?」


 「いやいや5000人を防いだ!?そんな大規模な戦ってあったっけ!?」


 「情報のまま言えば、女のような男って言ってたわよ?あーしはてっきり美幸ちゃんの事かと思ってたんだけど?」


 「は!?2000人なら私だけど、5000人はいくら連射銃でも防ぎきれないでしょ!?」


 「ははは!面白い!こりゃ傑作だ!」


 「誰!?」


 「声が漏れてたからな?聞かせてもらったぜ?どうみてもお前の事だろう?男勝りとはこの事だ!尾張の兵にも見習わせてやりたいくらいだ!」


 「紹介するわよぉ?織田信長様の弟の織田信治さんだよぉ」


 「おい!セバスチャン!別に兄者の弟と言わなくてもいいだろ!?俺は俺だ!普段は野府城に居るのだが、いかんせん大橋の家が快適でな?好き勝手しているのだ」


 うん!?織田信治!?まさか宇佐山城の戦いで死ぬ人だったはずだけど暁君が助けたのかな!?って事は森可成も生きてる?


 「あぁ〜!美幸?多分思ってる通りだ!森の旦那も元気にしてるぞ!」


 「佐助ごめん。ありがとう。えっと・・・信治様、如月三左衛門美幸と申します。こっちはリディア、てるちゃんです」


 「ほうほう。南蛮の女のようだな?あっ、差別的な意味じゃないぞ!?良い意味だぞ!?綺麗な髪の毛だな?」


 「信治様?あまり他の女に触れると、すずに怒られますよ?今は暁様に着いて行っているけど報告するのは俺なんすよ?」


 「喜助!今のは違う!いやらしい意味ではない!」


 「お姉ちゃん・・・」


 「てるちゃん?大丈夫よ!みんないい人だから!」


 「あら?お嬢ちゃんはどうしたのかな?」


 「セバスチャン?久しぶりに会っていきなりで申し訳ないんだけど、この子を育ててくれないかな?朝倉方の子なんだけど関所でね?色々あって・・・助けたの。私が引き取ってもいいけど、悔しいけど隠岐よりこちらの方が発展しているし、親族がまだ敦賀に居るみたいなの」


 「そうだったのね?お嬢ちゃん?自分から名前を言いなさい?」


 「井川村のてるといいます!」


 「は〜い!立派ね!佐助!あなたもこの子を見習いなさい!何が宵闇より現れしよ!馬鹿じゃないかしら?」


 「ちょ!セバスチャン!あれは昔の事だ!掘り返さないでくれ!!」


 「はい!はーい!ここで皆さんに贈り物でーす!!」


 私達が和やかに昔話しているとリディアがいきなりみんなに木箱を渡しだした。


 「これは何かしら?リディア嬢?」


 「へへへ!これはわっちが作ったーー」


 「あっ、大事な事言うの忘れてた!この子・・・リディアなんだけどアラクネだからね!」


 「「「えぇぇぇ〜〜!?」」」


 「あらくね?なんだそりゃ?」


 まぁ信治さんは知るわけないよね。



 パンッ パンッ パンッ パンッ


 パシュ パシュ パシュ パシュ


 「本当だ!銃弾を通さないぞ!?」


 「おぉ〜りゃっ!!!」


 ズシャンッ


 シュルッ


 「なんだと!?セバスチャンに誂えてもらった剣だぞ!?」


 私は今、家の裏手?庭?でリディアが作った服の強度を確かめている。もちろん、木に服を着せてだ。


 「わっちが作った服は最強さ!!」


 「本当に凄いわねぇ。あーしが作る召物より強度が高いし軽いし、柔軟性もある。負けたわぁ」


 みんなに渡した木箱の中は服だ。ざっくりリディアが見ただけで速攻で作ったらしい。どこで作ったのかは分からなかったが。


 「わっちは今はここ岐阜に負けてるかもしれないけど隠岐も負けてないの!美幸ちゃんも凄い人なの!だから・・・信治様だっけ?お城に登らせてほしいの!」


 「リディア!?なに言ってるの?」


 「美幸ちゃんは黙っててほしいな!私が美幸ちゃんを1番にしてあげる!」


 「兄者に会いたいのか?」


 「もちのろんよ!!」


 「しょうがない。兄者にも服を用意してあげろ。それを口実に段取りしてやろう」



 「ほう?その方が大橋と同郷の者か?九州に居ると聞いたが?」


 「は、はい!色々あり九州から出ました!」


 信治さんに言うと信長さんはすぐに会ってくれたけど・・・他にはいないオーラを持った人のように思う。畏怖で人を従わすような人だ。正直私は少し苦手かも・・・。


 「今どこを拠点にしているのだ?」


 「はい。隠岐島というところです」


 「ふむふむ。確か黒曜石や海産物が豊富だと河尻や愚息に伝えたそうだな?なんでも貿易をしたいとな?」


 「はい。ですが、どうやら品を間違えたと思います。ですので、これらに変更します」


 私がそう言ってインベントリーを調べようと動くと、小姓の人達が刀を構える素振りをしたが信長さんは手でそれを制した。


 よく訓練されていると感心する。


 「失礼しました。まずはこちらをご覧ください」


 「うん?なんじゃ?」


 「暁く・・・大橋様もまだ出していないのではないでしょうか。これは【ラストエリクサー】という物です」


 ラストエリクサー・・・一度だけ若返る事のできる薬だ。怪我や病気など治るわけではなく、純粋に若返る事のできる薬だ。瓶に入っているが、その瓶の下の方にダイヤル式の数字が書いてある。それに合わせるとその年齢まで若返るのだ。


 ただ、縛りもある。最高でも20年分しか若返る事はできない。そして逆に歳を取る事はできない。ゲーム内ではそれなりに配布されたりイベントで貰えたりした物だが1キャラを若返らせて操作するより、能力を保持したまま新たにキャラが作成できるようになったためまったく使われる事のないアイテムだ。


 暁君も要らないといって私に何個も送りつけてきたアイテムだ。かれこれ1000個以上はあるのではないだろうか?


 「らすと・・・えぇい!言いにくい!これは何ができるのだ?酒か?」


 「いえ。試しましょう。長生きしてほしい方とか居ませんか?今現在、歳のいった方で」


 「うん?歳のいった?うむ。遠藤!簗田を呼べ!四郎左衛門だ!」


 「はっ!」


 簗田四郎左衛門政綱かな?確か織田信秀の時代より仕えた人で信長さんの信頼も厚かった人だったかな?


 「はて?はて?ワシを呼ぶとは何事ですかな?」


 「来たか。いや、ワシの客人の如月だ。なんでも若返る事のできる薬があるそうだ。飲んでみぬか?」


 「・・・・毒ですかな?ワシが何をしたかは分かりませぬが要らぬと申すなら切腹にしていただきたいのじゃが・・・」


 「馬鹿を申すでない!ワシがお主を毒殺なぞするわけがなかろう!?ワシはお主にはいつまでも働いてもらいたいから言っておるのだ!」


 「この老体にまだ働いてほしいと申しますか・・・。ではその薬とやらはワシが飲みましょう」


 怪しむ事もしないなんて余程信長さんのこと信頼しているのかな?まぁとにかくちょうどいい人がいたみたいね。

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