ドクターハウス
大広間に集められた私達・・・だが義弘さんは激怒である。
「なんたる事だ!!黒木ッッ!!!これはどういうことだ!?何故兵がここで寝ておるのだ!?」
「返す返すの物言いにて遠矢を諌めましたが、どうしても如月殿が出す酒を飲みたいと言い張り・・・」
「ひ、卑怯だぞ!黒木!!貴様も昨夜は楽しんでいたではないか!?」
確かに私もこれは卑怯だと思う。率先してたのは遠矢さんだけど黒木さんも飲んでた記憶がある。
「チッ。おいを抜いて如月が出した酒を飲むなどとは・・・おいは下々の兵を労い、薩摩兵児だけではなく伊藤や相良の兵も燃やして光巌上人にお願いし供養してもらってたものを・・・」
そんな凄いことしてたの!?戦は強いし、敵に情けはかけるし、人望は厚いしリアルチートとは義弘さんの事よね。暁君が居ればすぐに召し抱えたいとか言いそうよね〜。
「如月ッ!!!」
「は、はい!」
「おいにも酒を出してくれ!皆が飲んだ酒をワシも飲む!さすれば同じ事であるッ!!」
いや同じ事ってどういった意味よ!?そんなにお酒好きなのかな!?
「遠矢様達に溢れんばかりにお出ししたのでそちらからお飲みくださいますよう・・・」
「うん?あれか?すまん!全部飲んでしまった」
「は!?全部飲んだ!?あれだけあったお酒をですか!?量にすれば軽く100リットルくらいは全部であったはずですよ!?」
私はあまりの驚きで未来の単位で答えてしまった。
「ひゃくなんちゃらがどのくらいかは分からないがすまん。飲んでしまったのだ・・・」
「遠矢!ぬしゃ〜舐めてるのか!?少しばかり捨て奸ば成功させ、おいが戻るまで保てたのを褒めてやろうと思っていたものを・・・おいも、ひゃくなんとかと言うのは分からぬが如月が驚くぐらいど!相当だろうよ!この落とし前はどうつけてくれる!?」
いやいや酒如きで義弘さん怖すぎるよ!?私胃が痛いんだけど・・・。
「申し訳ございませぬ。弁明の余地もござりません!斯くなる上はこの腹掻っ捌いてーー」
「ストップストップ!!!嫌よ!なんでお酒なんかで切腹なのよ!?義弘様も!!酒ならまだまだありますので!!」
私はありったけのお酒・・・酎ハイから始まりブランデーや泡盛、ワイン、シャンパン、ビール、清酒、焼酎、ウォッカやテキーラまで色々出した。
そもそもさっきまで談笑してたのに死と隣り合わせっておかしいでしょ!?
「ふむふむ。見た事ない物ばかりだ。それより入れ物のビードロが中々に雅ではないか!黒木!まだ城に兵が帰って来ているだろう!泥を洗い流し、足軽頭以上の者を登城させよ!」
「はっ!」
良かった・・・なんとか切腹させずに済んだよ・・・。朝から疲れた。
「先に言っておく事がある。如月三左衛門!大儀であった!其方が男の格好しておる事は敢えて言わぬ。おいは女だろうが評価するところはちゃんとする男だ」
「あ、ありがとうございます」
「酔う前に確約しておこう。其方がここ日向や薩摩に居を構えるならばおいが兄者に申し立てしておこう。断る事となればおいは兄者とも一戦交える所存だ。それ程までにおいは其方がほしい」
「え!?そこまでの事はしてませんよ!?」
「分かっておらぬようだ。捨て奸とは我が身を犠牲にする必殺の作戦である。だが其方はそれを覆した。究極の捨て奸である!兄者は立場があるからそうとは言えぬが、おいは身分はあまり気にしておらぬ」
「はい。私も軍関係では致し方ありませんが、平時にはあまり気にしません」
「うむ。互いに合う事もあるな。で、だ。希望はあるか?」
どうしよう・・・幽霊船で尾張に行く事もできるけど帰る家は必要よね?暁君を驚かせてやりたいってのもあるし・・・。それにここは屋久島にも近いからもしかすれば、世界樹の涙が作れるかもしれない。
けどあれには錬成炉がいるからな・・・私が持ってる錬成炉はレベルが低いからな・・・。
「もしよろしければ家を'出したい'です」
「うん?建てて欲しいではなく出したいとな?」
「はい。私は皆様の想像を超える物を多数持っております。それは戦に役立つ物から平時に役立つ便利な物までです。その中に家があります」
ちなみに私の家・・・名前を【ドクターハウス】という。何でこんな名前にしたかというと、暁君の最高レベルの錬成炉で作った物を勝手に私のアカウントに贈り付けて私の物にしたからだ。
これは暁君にも許しを貰ってしてる事だった。そしてその作った物が、簡単に言えば倉庫。その倉庫は中に飛行機や船、戦車や銃など色々修理するのに必要な物資を入れておく役目を担っていた。
暁君は戦闘狂だからプレイヤーの領地に襲いに行ったりしてたけど私は本当に内政が好きだったから倉庫として使わせてあげる代わりに錬成炉で色々作り自分の物にしていたのだ。
そして、暁君はすぐに戦闘ロボットAIを欲しがってたけど私は、お家ロボットAIしか持っていない。そりゃたまには他プレイヤーが私の家に襲いに来たりもしたけど幾度となく撃退したしね。まあ暁君の戦闘ロボットの佐助君を借りてだけど。
それで傷ついた私のロボットを治す病院を作ったら暁君が『ドクターハウスだな』と言って、この名前が気に入ったから私もそう呼んでいる。
「ほ〜う?いずれ拝見してみたいものだ。ならば土地をやれば良いのか?どこか希望の地はあるか?さすがに清水城周辺は無理だぞ?あそこは兄者の直轄地でもある」
「え!?いやいや、私はここ飯野城の付近で構いません!なんなら少し離れてるくらいの方がいいです!」
「そうか。ならば三の丸城下はまだ整地されていない。あそこを其方の地としてよい」
「はい!ありがとうございます!それでどのくらいいただけるのですか?」
「うん?だから三の丸の城下だ」
「はい。その城下のどのくらいですか?」
「分かっておらんようだな。全てだ!」
「はっ!?はい〜!?!?」
私は今、三の丸城下という所に来ている。
あっ、ちなみにあの後各々が集まり、色々取り決めをしていた。まず私の紹介をして正式に家臣となったと言ってもらった。私は黒木さんの下で良いと言ったが、独立した如月家として雇うとの事。
そして相良を追い返し、伊藤を追い返し、なんなら伊藤家はもう再起不能だろうと言えるまで名のある将を討ち取ったと。
そしてこのまま日向から伊藤を追い出そうと考えていると。伊集院さんや遠矢さん、黒木さん、有馬さん、赤塚さんと名だたる将皆が好戦意見。そしてその意見を義弘さんも肯定。現、島津家16代当主 島津義久に上奏するとの事となった。
ただ、この軍議?話し合い?は酒が入っている事もありそう堅苦しい事はなかったが私は挨拶もそこそこに、皆に一杯ずつお酌をして退席した。
そして罰として皆と酒が飲めなかったのは・・・
「クッ・・・こんな事ならば昨夜我慢しておけばよかった・・・。如月?まだ酒はあるのだろう!?」
「だから!もう終わりです!遠矢様は飲み過ぎです!あまり飲み過ぎると折角拾った命が肝硬変とか肝臓癌になってしまいますよ!?」
「なんぞ病気か?酒と戦で死ぬるは本望よ!がははは!」
私はだめだこりゃと思い、酒の話を終わらせた。そして案内された三の丸の城下・・・・見渡す限り森だ。一応獣道的なところはある。何軒か言葉悪いが隙間風が吹きそうな家は建っている。
「遠矢様?ここ全部私にくれるんですか!?」
「うん?殿はそう言っていたではないか?酒飲む前だし、ほらこれ!書状にも記しておるから間違いないぞ?良かったな!1戦でワシを抜いたではないか!この!この!この!」
「痛い!痛い!虐めないでください!もう!」
「お、おうすまぬ。如月と話していると女という事を忘れてしまうのだ。許せ」
だからなんで忘れるかな〜!?おかしいでしょ!?
「ってか、これどのくらいの広さなんですか?」
「そうだな・・・10町くらいあるんじゃないか?」
10町!?そんなに大きいの!?確か1町が3000坪だったような・・・30000坪!?!?そんなに治められるの!?私が!?
「よぉ〜し!とりあえず案内したからな?お!そういえば、正次郎だったかの女が心配していたぞ?ワシに頭下げて如月の居場所聞いてきたから城下で待っておれと言い少しばかりだが駄賃を渡してやったから汁粉屋にでも居るんじゃないか?行ってやれよ?じゃあな!」
いやいや何でもっと早くに言ってくれないかな!?しかも汁粉屋に居るんじゃないか?って何でそんなアバウトなのよ!?そんなので出会えるわけないじゃん!!?
遠矢さんは城に戻り、私はとりあえず自分の領土?領地?の事は後回しにして本丸の城下を探す。こんなの出会えるわけないじゃん!と内心思っていたが・・・
「あ!如月様!!!?」
そう。簡単に出会えた。いやぁ〜昔の人達って凄いね?少し往来の多い飯野城、城下の汁粉と書かれている暖簾がある店の前に居る人に聞けば『おう!正次郎の嫁だろ?中に居るぞ!』とすぐに教えてくれたのだ。
今日はまだ解散命令が出て1日目という事もあり、城の甲冑や槍なんかを返却してる人達で多いため知ってる人が多かったそうな。
いやぁ〜本当に昔の人は凄い。私ゃ夜まで探さないといけないと思ってたのに。
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