私は私のやりたいようにする

 私は今、女の園に居るのではないだろうか。暁君なら多分喜びそうなところよね。


 「ねぇ!?続きは!?早く!早く!」


 「え!?あ、そして未来でゲームと呼ばれるものの世界がここなのです!そして私は未来では調理師になりたいため専門の学舎に通う女です!」


 「まぁ!?未来では女性も学ぶ事ができるのですか!?」


 「はい。好きなだけ勉強し、色々な場所に旅行に行ったり、海を渡り外国に行ったりできます。あ、お代わりどうぞ」


 久しぶりのガールズトークだ。名のある武将の奥さんが勢揃いだ。木脇祐昌、伊集院久信さんの奥さんなんかも居る。


 そして今は私が出したグラタンやパエリヤ、皆大好きショートケーキを頬張りながら話に華を咲かせている。私の境遇や未来の事を隠す事なく話しているが、どうもこの女性達も外の世界が気になるらしく色々聞いてくる。


 「では南蛮の服を仕立ててくれる商店も多くあるのですか!?」


 「まぁ、そうなりますかね?服屋なんて数えきれないくらいありますよ!」


 「其方は・・・女の身でそのような活躍をし、帰りたいと思わないのかえ?」


 そう聞いてくるのは義弘さんの奥さん、広瀬さんだ。


 「私はとある男性を追ってこの世界に来ました。その人に会うまでは・・・」


 「その者とは夫婦か何かなの?」


 次に聞いてきたのは伊集院さんの奥さん、春さんだ。


 「いえ。ただの知り合いです。なんでしょう・・・何故か無性に会いたいと思っております。私の事を唯一知ってる人ですので」


 「その者はいずこに?」


 「多分・・・尾張国・・・もしくは美濃辺りに居るかと思います」


 「それはどこかしら?」


 私はインベントリーから地図を出し現在地から色々教えた。まあ驚く驚く。こんな形の地形なのかや、何故分かるのかとかだ。


 私はそっと【スパイバードカメラ】を取り出しタブレットを皆に見せて、オートモードで飛ばした。


 今ふと思ったけど木崎原の時にこの鳥型カメラ出しておけばよかったかもしれないね。忘れていたよ・・・。


 「なななに!?これは!?」


 「ここが皆さんが居る三の丸です。このように空から見下ろすとこの地図のような地形になるのですよ」


 皆が驚き、恐れ、見張りの人達なんかも食い入る様に見てるけど誰1人として食べ物を手放す人がいない。余程運営が作った?ご飯が美味しいのかな!?


 「お酒もありますけど飲みますか?」


 「お酒!?いる!いる!」


 やはりここでも広瀬さん。キャピキャピ系だ。


 私は梅酒や酎ハイを出し皆に飲み方を教える。


 「何から何まで桃源郷とはこの事ではないかえ!?」


 「広瀬様のおっしゃる通りでございます!!」


 

 珍しくこの日は私も飲んだ。この世界は元はゲーム。だけど間違いなく皆今を生きている。どう転ぶか分からない歴史。私は私のやりたいようにする。どうせ暁君も色々使って無茶してるだろうし。暁君の信長好きは凄かったしね。


 それに暁君も島津家に対しては『漢の中の漢』と好印象だったからいつか九州に出張ってくるはず・・・。暁君にも負けないくらい発展させてみせよう!




 「あなた女なんでしょう?本当の名前はなんていうの?」


 「美幸と言います!」


 「美幸・・・良い名前だね!これから私達は友達よ!」


 こんな自由奔放ぽい人が義弘さんの奥さんか・・・。まるで身分の高い人には見えない。けど、話してみるととても良い人ばかりだ。得体の知れない私を二つ返事で皆信用してくれている。絶対に裏切ってはいけない人達だ。



 気付けば私は三の丸奥の間にて眠っていた。凄く大きい打掛を掛けられ眠っていた。


 物凄く豪華な打掛だった。赤色と黒をベースとして金糸で百合?らしき花を刺繍された打掛だ。


 隣では広瀬さんが眠っていた。まさか横で寝るなんて思わなかった。


 私は静かに打掛を広瀬さんに掛けて奥の間を後にする。

 

 唯一この中で目を覚ましていたのは見張りの女性2人だけだ。まさか徹夜だったのだろうか。


 「如月様、昨夜はありがとうございました。人生で1番楽しかったです」


 「いえいえ。また皆で女子会でもしましょう!広瀬様や春様にもよろしくお伝えください。後、これもお渡しください。湯浴みの時髪を濡らして、これを付けると綺麗に洗える物です。その後、これを付けて洗い流すと艶々の髪になるとお伝えください」


 「なんですかこれは!?雅な入れ物・・・」


 確かになんでシャンプートリートメントが瓶の入れ物なのか私も気になる。運営がここまで拘るなんて・・・。


 「髪の毛に良い薬ですよ。では失礼します」


 私は元居た本丸に向かい歩き出したが、まさかの伊織さんが座っていた。


 「え!?伊織さん!?何故ここに!?」


 「お戻りになられましたか。ずっと待っていました」


 「嘘!?戻って下さいって伝えましたよね!?」


 「はい。けど、気になって待ってたのですよ」


 かなり酷い事をしてしまった。


 そして、2人で本丸に向かいながら色々広瀬さんの事や昨夜の出来事を話した。


 「なら、奥方様と仲良くなられたのですか?」


 「まあ友達だよ!と言われました。ははは・・・」


 「友達ですか・・・それは良き事で」



 「開門ッ!!殿のお帰りだッッ!!!」


 本丸に到着前に第一の門の兵の人が血相変えて叫んだ。まさかこんな早朝に帰って来たの!?



 「皆の者!待たせーー」


 「あ、あぁ!殿!お帰りなさいませ!」


 「遠矢?お前深酒でもしたのか?集まりが悪いぞ?」


 「へ?」


 「へ?ではない!なんたる事だ!まさか、おいを抜いて深酒をしたのかと聞いておる!!」


 

 私は遠目から見ていたが怒るところはそこ!?ってのが正直な感想だ。


 「あの者は目が覚めたのか?例の捨て奸を志願した者の奥方を着けておったと思うが?」


 「如月!?おーい!如月!?はっ!?如月はどこへ行った!?昨夜から今朝までずっと一緒に飲んでいたはずだぞ!?」


 いやいや遠矢さんは飲みすぎて記憶があやふやなんじゃない?私は早々に退出したよ!?


 「私はここです。お帰りなさいませ」


 「ほうほう。加減は良いようだな。其方が用意したあの陣は小さいが中々だ!楽に伊藤を追い返した!」


 「ありがとうございます」


 「おいは未だ其方の事を分かってはおらぬ。一度ゆるりと語り合いたい。今宵にどうだ?」


 「義弘さまぁぁぁぁぁ!!!!」


 「お、おう!広瀬か!他愛ないか!?」


 私は見てはいけないものを見た気がした。けど、城の皆は普通な感じだ。私のイメージでは女が一歩引いて男の帰りを待つってイメージだったけど、皆の前でこんなハグしてチュウをする武将が居るのだろうか・・・。


 「あっ!美幸ちゃん!昨日はありがとう!義弘さま!?この美幸ちゃんは凄く良い子なのです!厚遇して雇ってあげて欲しいのです!!」


 「そうか。広瀬は既に知り合っていたのか。それを踏まえ一度話をせねばな。黒木!皆を集めよ!軍議を開く!其方も来るか?」


 「え!?あ、はい!行きます!」

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