兵のモラルの違い

 「なんだ?それならそうと早く言えばいいのに。敦賀で船を放置するのはまずいよな」


 「それこそだよ!ツェッペリンがあるなら送迎してほしかったくらいだよ!けどまぁ、偵察も兼ねてね?」


 「そうだったな。けど金ヶ崎は朝倉一門の朝倉景恒が城主だろう?史実でも織田に屈して開城したっけ?」


 「そうだね。けど、多少は頑張ってもらわないと私の武を見せられないからね」


 「まぁ、本当にもし危なくなれば言ってくれ!」


 「大丈夫だよ!もてる最大戦力で戦うから!」


 私の作戦はだいたいこうだ。


 ゲームでは相手の戦力が分からない。まぁこれは現実でもそうだけど。それをNPCの者や忍者を使い情報を収集して、戦力を決める。


 これは本来の常道の戦いだ。だが、このゲームはオンラインがメインだ。戦闘機が飛び交う戦国時代・・・。それこそ、NPCが1万人居ても相手が対空装備がなければ1人でも勝ってしまう。


 だが、圧倒的な武力で相手を屈服させると、攻めた土地の領民やなんかが逃げてしまい、恐怖度合いのパラメータが上がってしまい税収が落ちるという欠点があった。


 だから私は奇襲作戦で相手の士気を下げる事を得意としているけど・・・


 「へぇ〜?ならわっちは戦わなくていいの?」


 「う〜ん。本来の私の戦いじゃないけど、今回は海から攻め込み、敦賀の町を制圧。てるちゃんのお婆ちゃんを1番に探す。その町の人の保護をリディアにお願いしたい」


 「保護ってなにすればいいの?」


 「まぁ、簡単に煮炊きかな?服作りが好きなんでしょ?みんなに作ってあげればどう?多分、新品の服着てる人なんてそうそう居ないと思うから喜ばれると思うよ?」


 「やったぁ〜!任されたし!」


 「私は、金ヶ崎、天筒山に攻め込むから。海から上がり、出番はあるか分からないけど戦車も使うし、ステルス迷彩着て城内を撹乱する」


 「了解しましたぁ〜」


 私達は既に敦賀に入っているが誰が見てもここはもうダメだと思う。領民は居る。普通に居るけど明らかに顔が沈んでいる。


 干上がらす作戦だと聞いている。多分、流通が上手く行っていないのだろう。商人なんかは既に国外脱出してる感じだと思う。敦賀商人、近江商人なんかはこの時代では日の本一と言われるレベルだしね。


 堺にでも行っているのだろうか。例の関所を目前にそう思った。けど、まぁやはり関所は関所。新しい兵の人が居た。


 「何者か?」


 「旅人です」


 「身を改めさせてもらうぞ。まずは大小だけ預からせてもらう」


 別に怪しい物はリディアも私も持っていない。ちなみに、帰りは【韋駄天】と呼ばれる靴を履いていた。この韋駄天という靴は速度が10倍にまで上がる装備だ。軽く小走りでも常人の全力疾走より早く動ける靴だ。


 そのまま突破してもよかったが目視はされてしまうから、攻め込む前に変に構えられないように素直に関所を通る事にした。なんなら、この前みたいに色欲のような男が居たら殺す予定だ。


 トン トン トン トン


 女が身を調べる・・・ということなんかなくて男の人が服の上から触っている。だがやはり・・・手つきがいやらしい。


 股のところを何回も触ってきている。


 「うむ。怪しい物は持っていないようだな。後ろを向いて裾を上げろ」


 「は!?なんで!?今、十分に調べたではありませんか!?」


 「いいから黙って言う事を聞け!尻に何か隠しているかもしれないだろうが!」


 どうやってお尻に隠すのよ。


 「う、うむ・・・良い尻だ・・」


 この男もだめだ。


 「リディア!突破!」


 「アイアイサー!」


 私は渡した刀を素早く奪い、抜刀した。関所には見えるだけで5人の男が居たが私は2人を瞬時に制圧。というか、右手を斬り落とした。


 リディアは糸を使い、同じく右手を切断させたみたいだ。


 「いってぇ〜!!」


 「本当に朝倉の兵は馬鹿しか居ないの?いつ、有事が起こるか分からない時期にこんな事ばかりするのって本当に馬鹿を超えて阿保のすることだ。リディア!放っておこう。行こう」


 またもや人を斬ってしまった。けど、これだけ騒いでも全然人が来ない。一乗谷に集結させているからだろうか?まぁこっちにしては好都合だ。


 素早くカモフラージュネットを退けて隠岐に帰る事にした。来週・・・来週にはここは私達が制圧する。


 

 「えぇ〜!?拠点を大和に移すのですか!?我々は!?」


 「だから!本格的に移すわけじゃないって!」


 私は全速力で隠岐に戻った。戻るとすぐにみんなに集まってもらい事の顛末を伝えた。


 1番に反応したのは村の男衆の1人、竹蔵さんだ。


 地頭のような、この辺一帯を纏めてくれている人だ。


 「美幸様?私も参加したほうがよろしいですか?」


 「松さん達はここに居てくれる?戦は少数精鋭で行う。リディア?状況を伝えてくれる?」


 「はいはーい!まずは美幸ちゃんの知り合いには出会えたよ!そして織田の殿様にも会って………」


 そこから始まるのか・・・長い長い説明だ・・・。


 

 「だから、彦太郎と真白ちゃんと艶ちゃんも戦はするけど、あまり物を壊したりしないでほしいの!」


 長かった・・・。軽く前説明だけで30分近くは話していたよ。なんでカレーや焼き鳥の味なんかの説明も入ったのだろう・・・。


 「では、ワシ達はこのまま置いてきぼりですかぃ!?」


 「ううん。違うよ?私達が敦賀を制圧するから、情勢が落ち着いたら連れに来るから本土に行きたいなら連れてってあげますよ!」


 「いや、そういう事じゃない!ワシ達は足手纏いか!?こんなに施されてばかりで何も恩返しができやしない!」


 そう言うのは、隣村・・・私のドクターハウスを出してあるところから徒歩40分程離れた南の集落の村長の幸次郎さんだ。


 「いや、幸次郎さん!?遊びに行くんじゃないんですよ!?何も戦働きなんて望んでないですしーー」


 「オレ達は歳こそ食っているが動ける!真白様やボラ様、ゴンズイ様に色々教えてもらったのです!」


 「そうです!オラのこの動きを見てくだせ〜!」


 シュッ シュッ シュッ シュッ


 シュンッ シュンッ シュンッ


 「「「おぉ〜!」」」


 「その動きは・・・まさか・・・飛ぶ斬撃!?」


 「ふふふ。そうさ!美幸っちには悪いが筋がいいからな!幸次郎含め、この場に集まった各村の男達は、ハオユーやリンに混ざって鍛錬してたのさ!まだあーし達には程遠いが、そんじゃそこらの猛者にも放てない一撃を放つぜ!」


 「けど!けど!!戦なんだよ!?死ぬかもしれないのよ!?」


 「それこそ本望です!ワシは生まれて42年・・・この島から出た事がねぇ〜。大和がどんな国なのかこの目で見てみたい!」


 「アッシもです!ひもじい思いをして暮らしていたが今じゃ美幸様のおかげでひもじいどころか、太ってきたくらいですじゃ!」


 「俺も」 「俺も!」「オラも!」「私もです!」


 「美幸様が島に来てから生活が変わりました。米も育てられだしました!真水も湧き出しました!養殖もでき、漁も効率よくできました!」


 「そうです!それに、まだ成果は見えませんが真珠?なる物もそろそろ取れる時期です!リズ様に病院なる場所で病気を治してもらう事もできました!」


 「オラ達は・・・美幸様に着いて行きたいです!役に立ちたいです!」


 「みんな・・・」


 私はただ漠然と思った事をしていただけだ。だが、ここがゲームの中の世界だとしても私は隠岐の人達が本当に好きだ。こんなにも私を慕ってくれている・・・なんとか報いてあげたいと思っていたけど、それはこの島の人達も一緒みたい・・・。


 思わず私は嬉しくて涙を流してしまった。


 「よっしゃぁ〜!決定だ!おめーら!あーしが作った防具、武器、全てを美幸号に乗せな!!」


 は!?美幸号!?なにそれ!?

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