屋久島前の拠点地
私達は今、加治木の港から、桜島を横目に見ながら鹿児島湾を抜けるところだ。
左には鹿児島半島が見える。波はここら辺は穏やかだが外洋はどうだろうか。無線がないため電話で真白に聞く事にする。
「もしもーし?真白?そっちの船の調子はどう?」
『動いている!アネゴ!動いてマスヨ!!っるせぇ〜!!こっちは美幸っちと電話なんだ!!静かにしやがれ!!あぁ〜!わりぃ〜!わりぃ〜!船の調子は申し分ないぜ!なんせあーしが改造した船だからな!』
電話の後ろから明の男達の歓声が聞こえる。余程エンジン?ではないけど動く船が珍しいみたいだ。まぁ私でもこの時代にそんな船があれば驚くけど。
「外洋にも耐えられそう?」
『あぁ!問題ないさ!何回言わせるのだ!てめーら!静かにしやがれ!!おい!リン!!こいつらを黙らせろ!!アネゴオマカセクダサイ』
またもや電話の後ろから喜ぶ声が聞こえる・・・しかもいつのまにかリンさんまで真白の事を姐御と呼んでるし。
「美幸様?何かあるといけませんので屋久島に入る前に拠点確保してはいかがでしょうか?竹島なんかよさそうに思います」
リズが言ったのはこのまま屋久島に行ってもいいが拠点を構え、朝から屋久島に向かい夜にはまた竹島に戻る。その次の日に隠岐島に向かうのがいいのではないかとの事。
「けどそのまま行ってもいいんじゃない?」
「こちらをご覧ください」
リズに見せられたものはスパイバードカメラからの映像だ。
「この島の形は・・・種子島かな?」
「はい。見ての通り船の往来が多いと思います。この船は明や南蛮の船も混じっているでしょう。そしてこの船は幽霊船・・・無闇に走らせると要らぬ争いになりかねないと思いますが?」
「さすがリズ!分かったよ!もしもーし?真白聞こえてる?」
『あぁ!聞こえてるよ!』
「一度、拠点とまではいかないけど休憩できるように竹島に向かう。構わない?」
『了解したぜ!!野郎ども!帆を張れ!!竹島に向かうぞ!!アネゴ・・・帆はアネゴが・・・黙れ!!帆を張るんだよ!帆を!!』
あっちの船は真白を中心なのね・・・。しかも改造して外した帆を、明の人達に向かって帆を張れ!はないだろうと思う。
竹島に近付いて行くとどんどん大型船の往来が多くなる。
琉球や明、南蛮、シャムの船など色々な国籍の船なんだろうと思う。時折り近付いて来そうな船も見えたが、無用な交流、争いなどしたくないためスピードを上げて巻いたりしている。
直線距離で進むなら3時間もしない内に到着するはずがどんどん船に追いかけられるので竹島に到着するのに6時間も掛かってしまった。
道中、真白にやたらと相手を沈めようとか海の藻屑にしてしまおう!と言われたがそれら全部を拒否し、今に至る。島津家を飛び出しさっそく戦闘するとか義弘さんもビックリのバトルジャンキーじゃない!?
竹島に到着する前に事前に調査はしてある。住民は100名も居ない。
島は竹林が広がっている島だ。むしろ竹林ではなく竹森と言っても過言ではないと思う。とにかく竹がかなり多い島だ。
タケノコ掘りなんかすれば楽しいかもしれない。
島には港らしき港なんてない。接岸しようもんにも岩礁帯で近付けそうもない。ただ、島の南側に岩礁帯ではあるが砂浜地帯が見られるためそちらに向かう事にした。
島から700メートル程のところに錨を下ろし、船が流されないように気をつける。後はインベントリーに入っている、小舟に乗り換えるだけだ。
電話で真白と話していたが、明の乗組員達は真白が言うには弛んでいるらしい。
『美幸っち?この明の男どもをあーしに預けてくれないか?なーに、北海道の神の子池の水をあーし等で汲みに行くのさ』
「え!?真白達が行ってくれるなら助かるのは助かるけど、リンさん達は大丈夫なの!?」
『リンはあーしが面倒見るから大丈夫。問題は男どもだ。体力が有り余っているようだし、外洋で航行技術を教えるのもちょうどいい!』
「何日で戻ってこれる?」
『4日!4日には戻ってくる!その時には見間違えてしまうくらいの水兵に育ててみせる!ついでに、もっと滑らかに話せるように勉学も教える』
「分かった。真白に任せるよ。インベントリーの権限も譲渡しておいたから好きにアイテムは使ってね?くれぐれも戦ったりしないように!誰も怪我させないように!」
『任された!!おーい!おめー等!!喜べ!特別任務だ!!はいッ!!アネゴヨロコンデッ!!!』
なんかまた電話の後ろの方で男の人の声が聞こえたけど違う意味に聞こえるんだけど・・・。
「美幸様。私が美幸様とリズ様を御守りするけどよろしくて!?」
「え!?あ、うん。艶?お願いね!とりあえず聞いてたと思うけど、神の子池の水は真白に任せる事になったよ。私達は一泊この島で泊まらせてもらい、明日の早朝に屋久島に向かおう」
「了解です!」「はい」
島に入ると本当に竹森しかない島だ。
「艶?自然破壊にならない範囲で場所を確保してくれる?」
「分かりましたわ!」
この地に小さ目だが家を出そうと思う。私は1日でも風呂に入らないのは嫌いだ。
そして、2分もしない内に艶が竹を切り、平に土まで滑してくれて【100トンハンマー】で土を固めてくれた。
「おつかれ!!それくらいでいいよ!」
「こんなの他愛もない事ですわ!」
このお嬢様言葉もどうにかしたい。
そして、整地してくれた場所に【スターハウス】を取り出した。このスターハウスとは星の豆粒程の光をエネルギーに変えて家を快適に過ごせる家だ。
何故スターハウスかと言うと、見た目は現代の普通の家だが、夜になると星の力を吸収しどんどん成長していく家なのだ。その成長に終わりはない。と運営が謳ったものだから私もガチャを回して当てた一つだ。
だが家が成長したところで何が変わるのか分からないのだ。何故かと言うと、夜しか成長できる光を吸収できない癖に、物凄く成長スピードが遅すぎるのだ。
星がよく見える信濃でこの家を出していたが毎夜毎夜ゲーム内時間の約2年程、星の光に当てていたがまったく成長しないのだ。最早バグかと思い、プレイヤーからかなり文句が出ていたが運営は・・・仕様です。と答えたのだ。
そこでさすがの私もギブアップ。4000円も使って当てた家はインベントリーの肥やしになっていたのだ。
「ここ竹島も星空が綺麗に見えそうだからもしかすれば成長するかな?」
「美幸様?そう言ってまったく変わらない家でしょう?私は夜ご飯とお風呂の用意をしておきます。艶?せっかくだからこの地の魚や貝を使い夕食を作ります。捕獲してきなさい」
「はいはーい!リズ様!私が魚獲りの妙技を見せますわよ!」
「ただの1日なのに凝った物作らなくてもいいよ?」
「いいえ。作らせてください。私にできる事はこれくらいしかありません」
「そんな事言わなくていいよ!私はリズを大切に思ってるよ!」
序列をつけるわけではないが私はやはり1番はリズだ。戦闘なんてできなくていい。リズには私の帰る場所に常に居てほしい。そう思う。
艶が漁?に出て間も無い頃に外でボーっとしていたら1人のお婆さんがやって来た。身体は痩せて着ている和服も汚れ破れていて顔も凄く疲れたようなお婆さんだ。
「どうか・・・どうか少し手をお貸しいただけませぬか・・・」
「あ、はい!よければ家の中へどうぞ!どこか具合が良くないように見えます。治療しましょう」
「いいえ・・・私は捨てられた者・・・最後に大好きな海で果てたいと・・・お手数ですが運んでいただきますよう・・・」
パタン
お婆さんはそう言うと倒れ込んだ。
「ちょっと!リズ!!急いでポッド用意して!!」
「は、はい!」
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