勝ったな! 作戦開始
「……で、肝心の作戦は?」
「警戒されているのは私の方だ。私は正面から攻め込む。想定通りであれば魔獣など私の相手ではないからね」
「俺は?」
「キミは伏兵かつサブプランだ。可能な限り悟られずに標的に近づき、接近したところでクリムサイズ=ザラ=グラエールと交代。相手の器は人間。彼女の力に及ぶはずもない。上手くいけばそれだけで終わる」
俺の行動の理想としては、隠密ムーブで標的に近づいて、そこからザラさんにワンパンしてもらうってルートか。なるほどな……たしかに、初見で本気のザラさんをぶつければそれだけで勝てそうに思える。
「ただし、敵は界喰みにどんな力を与えられているか不明だ。隠密そのものが不可能だった場合は私の合流を待ってくれ。交代も日に一度しかできないのだろう? 不意打ちが不可能だと判明した場合、致命的な状況を除き温存して欲しい。合流してから確実に行く」
「おぉ……まともだ……」
やっぱり界喰みの部分が未知数なのが気になるが、かなりいい線行ってる作戦のように思う。うーん、なんかレフバーちゃんも自信ありそうだし、これは勝ったな! 暗殺プランだと折角貰った銃が活かせなさそうなのが寂しいくらいだぜ! ガハハ!
―――――――――――――
その者が、少女の姿を象った世界の支配者がその領域に踏み込んだ時、支配を外れた創獣族の領域にひしめき合っていた魔獣たちが一斉に牙を剥く。捕虜を使って作成された魔獣、創獣族を使って作成された魔獣、そのいずれもが界喰みの力で多様な強化を施され、この世界の闘争を勝ち抜くためにしてはやり過ぎなほどに凶悪な軍勢に仕上がっていた。
その全ては、内側から今度こそレフトオーバーという存在を抹殺するため。自らの存在を認識し、あまつさえ害そうとする存在を界喰みは許さないが故。レフトオーバーがテリトリーに踏み込んだ瞬間に魔獣たちが襲いかかったのは必然のことだ。
「ふむ」
だがしかし、この程度のことであれば未だレフトオーバーの勝算を揺るがすほどのことではなかった。なぜレフトオーバーは以前界喰みに敗走したのか。それは準備が万全でなかったからに他ならない。祝詞を“外"でも十全に使えるようにする準備さえ整っていれば、レフトオーバーが負けることはなかった。祝詞とは、レフトオーバーが界喰みを滅する為に開発した兵器なのだから。
「囁け喚け囀れ叫べ謳え」
そして、先の戦いと今では状況が違う。レフトオーバーが理想とする戦法を、この世界の中でなら十全に用いることができる。
「
魔獣の猛攻を退却しつつ躱す最中、レフトオーバーが行使したのはレフトオーバーの世界における魔法。詠唱を補助するだけの、蓄音機の役割を果たすだけの、そんな魔法が大量に展開される。極めてシンプルな魔法だが、この世界においてかつ、レフトオーバーが使う場合のみ、この魔法は必殺と言って差し支えない凶悪なものとなっていた。
「《12》《209》《17》《11》《180》《8》《3》《267》《19》《2》《208》《4》《8》《241》《34》《29》《192》《4》《26》《200》《2》《20》《219》《10》《17》《214》《19》《4》《190》《4》《5》《213》《13》《9》《256》《22》《30》《211》《10》《12》《209》《17》《11》《180》《8》《3》《267》《19》《2》《208》《4》《8》《241》《34》《29》《192》《4》《26》《200》《2》《20》《219》《10》《17》《214》《19》《4》《190》《4》《5》《213》《13》《9》《256》《22》《30》《211》《10》《12》《209》《17》《11》《180》《8》《3》《267》《19》《2》《208》《4》《8》《241》《34》《29》《192》《4》《26》《200》《2》《20》《219》《10》《17》《214》《19》《4》《190》《4》《5》《213》《13》《9》《256》《22》《30》《211》《10》」
炎が、雷が、風が、水が、氷が、緑が、光が、影が、瘴気が、音が。召喚された人形が、亡者が、ドローンが、怪獣が、魔獣をなぎ払い、打ち砕き、踏み潰し、焼き払い、尽くを滅ぼしていく。そんな一方的な光景を目にして、自らの目論見通りであることを確認したレフトオーバーは、歩みを進めていく。
この世界の中でなら、レフトオーバーは乗っ取られた《いのちのまぜもの》やハナビに奪われた《冥閻の利鎌》以外の祝詞を、第十階梯を除いて制限なく使用できる。それを詠唱補助魔法によって絶え間なく同時に使用すること。それがレフトオーバーの結論戦法であり、それに界喰みに力を与えられているに過ぎない創獣族の巫女に為す術がないのは当然の話だった。
―――――――――――――
レフバーちゃんが魔獣をボッコボコにしながら進軍している様子を観測した俺は、思わず疑問が口をついた。
「……いや、俺いる?」
ハナビは訝しんだ。
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