答え合わせだぜ! 世界創生
「
「当然だ。ニュートラル……染まらなかった者は外部からの魂の混入でしか発生しないのだから」
……ニュートラル。それが俺のようなどの種族でもない者なら、他所の世界の魂が混ざると土地の影響を受けずに生まれてきてしまうってことか。……良いぞ、生き残れるか怪しいが、色々知るチャンスだ。
「で、この世界の主さんなんだよな? ちょっと悪趣味なんじゃないか? アリの巣に水入れるのが楽しいままで大人になっちゃったりしたんですかね?」
「楽しんでいるつもりはない。私にはそういった機能は用意されていないし、この世界のルールは我が目的のために効率化しているに過ぎない……が、アリの巣というのは良いたとえだ」
「どういう意味だ」
「この世界は200km四方の立方体でね。その外にある星や太陽もただの背景に過ぎない」
……それはなかなか絶妙な。車なんかがあれば狭いかもしれないが、徒歩しか移動手段がないなら適度な広さだ。
「で、それがアリの巣となんの関係が?」
「伝わらなかったかい? キミは我が創造主と同郷なのだろう? ほら、アリの観察キットに少し似ている、とは思わないかい?」
「……生憎、そういう教材に縁がない生まれだったもので」
言うほど似てないだろそれ。ってか、楽しんでないとか本当かよ。今のはこの世界の住民は蟻同然ですが? って発想がなきゃ出ない煽りじゃん。
「そうか。すまない。デリケートな例えだった。今後は家庭環境を連想させる話題は控えることにしよう」
「配慮だけ一丁前なのなんなん?」
なんだこいつ……結構ポンコツなのか……? というか、我が創造主と同郷って言ったか。ニュートラルなのに祝詞が使えるって時点で俺が日本語圏の人間だってのは看破されているんだろう。つまり、こいつは被造物で、作ったのは元日本人……あったんだ、普通の異世界転生……! 俺もそっちが良かったです(半ギレ)。
「じゃあ、その目的ってのはなんなんだ」
「力ある者を集めること。その為に、この世界の命には争ってもらう必要がある」
……たしかに、争わせることが目的なら、それは十分に達成されているだろう。それが力ある者を集めることにどう繋がるのかは分からないが。
「キミは悪趣味だと言うが、より効率的に争わせるための工夫を施した結果に過ぎない。そうだな……普通、人と人を争わせるにはどうすればいいと思う?」
「え……格差?」
古今東西、人類の争いには不平等があると思って出た言葉だったが、言ってからそれがこの世界には当てはまらないことに気づく。
「そうだとも。豊かさが限りあるからこそ、それを巡って人は争う……が、ここにはあるジレンマがあってね。その豊かさが限りあるが故に、争いのためにリソースを使っていけばやがて限界が来てしまう」
……ま、そりゃそうだ。お互い割に合わなくなっり、限界が来た時点で講和するのが戦争であって、万年戦争状態なんて物理的に無理だ。
「だから、この世界では人々が争う理由を別に用意し、争い続けるに足る十分な豊かさを用意した。……キミ、この世界で飢えたことはあるかい?」
「……ないね」
「当然だ。この世界は普通ではありえないほど簡単に食糧を確保できる。私がそうデザインしたからね。加えて病もない……いや、それは過言か。遺伝性のものや悪性腫瘍、生活習慣病に冒される可能性はあるだろうが……感染症の類いは排除してある。闘争以外にリソースを使う可能性のある人類の悩みの要因は排除してある」
「……」
なんだ、ハナビちゃんが特別健康優良児ってわけじゃなかったのか……って道理で農耕がないくせに定住しているわけだよ! 全シーズン採取と狩りだけで食糧を賄えるように設定されてたってことね!
「……用意した争う理由ってのは」
「因子。起源書とリンクした因子に染まった者は他の因子と反発し、排除しようとする。そういう本能を植え付けた。混じり者のようなバグにはこれがうまく機能しないようだがね」
「……反発。俺が苛烈な排除を受けないのは何の因子も持っていないから反発もしないってことか」
「そういうことになる」
本能。植え付けられた闘争の本能。シャーリーも言っていたそれに操られ、戦い続けるのがこの世界の人々。
「そこまでして……力ある者を集めるだったか? 集めてどうする? ってかそれがどう繋がるんだ」
「答えても良いがね……時間切れだ。あの滅びの一端が私の魔法を突破しようとしている」
そう言って、レフトオーバーは急激に距離を詰めてくる。思わず身構え、祝詞を口にしようとして、身体が強張る。
……今は、リュッケと繋がっていない。祝詞を使えば、存在力切れで……死ぬ。
俺がその考えに思い至って動けない間に、レフトオーバーは俺の頭に手を当てて、何か呟く。これは……こいつの魔法! それに気づいてレフトオーバーの手を振りほどこうとするが、既に何かされたらしくあっさりと手を離される。
クソ、何もかも後手後手だ。身体に異常は感じられないが、頭をいじられた……?
「何をした……!」
「応急処置だ。では、本来の仕事をするとしよう」
「今度は何を……!?」
そう言ったレフトオーバーは、俺から視線を外し、その視線の先には。
「……ハナビさん? ハナビさん! ──え、誰……?」
「争い続けさせる。その為に、一人の勝者も許容できない」
狙いは……シャーリーたち冥葬族……!
「《12》《254》《15》」
ただの数字の羅列。そうとしか聞こえなかったレフトオーバーの言葉は、祝詞として……俺がやったのと同じ黒い炎となって、冥葬族に降り注いだ。
【あとがき】
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