第36話
二次試験の前日、昼食を終えると勝利さんがスマホを持ちながら部屋に来た。
「どうしました?」
「すぐに来てくれ」
ホテルのロビーに向かいながらスマホを見せる。
そして伸さんと優斗さんがBランクのみんなを連れてダンジョンで戦っている。
「ゴブリンキングが1体?」
「違う、8体倒している。そして今5体、いや、4体を相手に戦っている」
「数が、多い」
ある程度奥まで進んだのかもしれない。
だがゴブリンキングが複数体同時に出てくるのは異常だ。
元々、試験の際にゴブリンキングと遭遇した時点で異常だと言われていた。
「そうだ、ガッツもロビーにいる。来てくれ」
「分かりました」
ロビーに行くとカノンさんもいた。
「うわあ! 見るっす!」
「大部屋の中にゴブリンキングがわらわらと出てきやがった!」
カノンさんがテーブルに置いたパソコンの画面に注目する。
『く、流石に数が多すぎる。風爆を連撃するよ!』
『みんな下がれ! 衝撃に備えて耳を塞げ!』
伸さんが風爆を連発すると多くのゴブリンキングが魔石に変わった。
残ったゴブリンキングは優斗さんの大剣が仕留めていった。
「やった、いや、まずい!」
通路の奥からゴブリンキングが整列しながら出てきた。
嫌な予感がする。
そしてきれいに並ぶと後ろから更に強いモンスターが現れた。
「ゴブリン、エンペラー!」
ゴブリンエンペラーはAランク冒険者レベルの力を持つモンスターでゴブリンキングの見た目に黒い湯気のようなオーラをまとっている。
『風爆は後1回しか使えない。一気に行く』
『風爆を使った瞬間に撤退しろ!』
伸さんが風爆を使った瞬間に引率のBランク冒険者が通路から逃げ出した。
だが、伸さんと優斗さんが逃げ遅れてゴブリンキングに逃げ道を塞がれた。
そしてゴブリンエンペラーが剣を掲げる。
嫌な予感がした。
ゴブリンエンペラーが剣の切っ先を2人に向けて雄たけびを上げた。
『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!』
『『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!』』
ゴブリンキングが一斉に2人に向かって突撃する。
「カノンさん、涼音さんは?」
「魔力切れで休んでいるよ」
俺は頭をフル回転させた。
涼音さんは魔力切れ。
カノンさんは錬金術師だ、戦闘力でAランクになったわけじゃない。
ダンジョンに残った伸さんは魔力が切れた為かナイフを構えている。
優斗さんはすでに消耗している。
「このままでは、負ける」
「おい、重、何でただ見ている事を考えているんだ? 俺が助けに行く。それで解決だ!」
「おいらも行くっすよ!」
あかりが走って来た。
「私も行く、3分で着替えるから!」
「時間が無い! ガッツ、行くぞ!」
「俺も!」
「重はあかりさんを連れて来てくれ。俺がゴブリンエンペラーを倒してやるよ!」
「勝利! 早く!」
「分かってる! じゃあな!」
あかりが着替えて戻ってくると配信を始めた。
「あかり、おんぶするから」
「へ!? きゃ!」
俺はあかりを引き寄せておんぶした。
「今は緊急事態だ! 2人に追いつく!」
:重の目が変わった
:ゴブキンを撃破した時の目だ
:頼む、伸さんと優斗さんを助けてくれ!
俺は街を走り赤信号をジャンプして超えて車道を走る。
車を追い越してダンジョンの中まで最短距離で進んだ。
ダンジョンを進むとBランクの冒険者が走って逃げてくる。
「しょ、勝利とガッツが奥に行った! やめた方が良い! 皆殺されてしまう!」
「そ、そうだ! ゴブリンエンペラーがゴブリンキングを率いているんだ! 止められっこない!」
「あれはAランクでも無」
「時間が無い! 奥に進む!」
「待て! 死ぬぞ! 無理に決まっている!」
あかりをおんぶして走る。
そして、ゴブリンエンペラーのいる部屋にたどり着いた。
俺は絶句した。
ゴブリンキングの魔石が周囲にたくさん落ちていた。
伸さんの左手がだらんと垂れていて肩から血が出ている。
優斗さんは剣を構えてはいるが息が切れている、もう余裕はないだろう。
そして、勝利さんとガッツさんも血だらけだ。
ゴブリンキングが9体で4人を囲み4人は壁際におい詰められていた。
ゴブリンエンペラーが少し遠くでその様子を眺めている。
消耗した4人を逃がす事は難しいだろう。
「お守りを使おう」
俺は無言で収納魔法を使いあかりに貰った剣を握った。
「あかり! 優斗さんを癒してくれ! 俺が引き付ける!」
あかりを降ろすとゴブリンキングに向かって走った。
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