第7話

「お兄ちゃん、反省してる!?」

「……はい」


 俺は萌の前で床に正座をしながら早朝配信をしていた。

 風呂上がりに俺の呪いが手足から胸にまで達していることがばれたのだ。

 

 ダンジョンに長い間入ると手足の末端から呪いのまだらが広がり酷くなると胸や腹にまで呪いのまだらが侵食する。

 そこまで行くと能力が大きく弱体すると言われている為普通は休みを挟んでダンジョンに入る。

 だが俺はトレーニングも含めてダンジョンで行う為呪いが酷くなっていた。


 能力の弱体は感じる、だが死ぬわけではない。


「お兄ちゃん! シャツをめくって見せて」


 俺は無言で腹を出しドローンに向けた。


「コメントを見て!」


 萌がスマホを俺の顔に持って来る。


「うわあ、コメントがよく見える」

「全部見て」

「……はい」


 シャツをめくって胸と腹を見せた。


:呪いが体の芯まで行ってる!

:今すぐ病院に行けって! 

:ドクターストップ


:こんなに酷くなっているのにダンジョンに入るのはおかしい

:Bランクなら金はあるだろ? 何でここまで悪化させた?

:重、お前しばらくダンジョンに入るな


「お兄ちゃん、しばらくダンジョン禁止ね」

「でも、休めば治るから」

「お兄ちゃん分かってない! 分かってないよ! そう言っていつも休まないよね? それに……」


 萌の説教が続いた。

 これは話が長くなる。



 ◇



 説教が終わると萌が俺の代わりに連絡をして学校をしばらく休む事になった。

 萌は大げさだな。


 俺は萌の監視を受ける事になり学校もダンジョンを休む事になった。

 稲田村のダンジョン前にあるカメラから俺がダンジョンに入っている事がバレれば注意を受ける徹底ぶりだ。

 その間俺はスマホを見て冒険者の動きを勉強し誰もいない場所で型を繰り返した。




【あかり視点】


 私は冒険者の才能があった。

 でも、性格は冒険者に向いていなかった。


 回復魔法を使えるレアな光属性の魔法が使えた。

 回復魔法を使える人間は重宝される、みんなを治療出来て最初は嬉しかった。


 Bランクになると配信をする為のドローンを支給されて配信をしないと厳しく注意を受ける。

 ただのBランク冒険者なのにチャンネル登録者数が100万人をこえるとは思っていなかった。


 武具や回復ポーションを販売するメーカーとの宣伝のお仕事も増え、大学に通う事が出来なくなった。

  私は国から指定された地域に行ってモンスターを倒したり、けが人を治す役目を受け、そして20才になった。


 ダンジョンと病院、空いた時間はホテルで籠ってゲームをする生活。


 そんな時に知り合ったのが始めての彼氏だった。

 実際に会った事は無いけどオンラインで毎日話をした。

 彼氏がいる事を隠したまま配信は出来ない。

 批判を覚悟でダンジョン配信で彼氏がいる事を言うと炎上してそれから私への悪口が酷くなった。


 しばらく批判が続いて彼氏に振られた。

 そして酔ったままダンジョン配信を始めてしまった。

 今考えると何であんなことをしたのか分からない。

 そしてまた炎上した。


 友達とオンラインで話をすると病院に行くように言われた。

 私がいつもと違うらしい。

 おかしいらしい。


 お医者さんが短く言った。


「ウツです」

「……え?」

「無理をせず休んでください。お薬をお出しますのでしばらくの間ゆっくりしましょう」


 それから私はホテルに引き籠った。

 いつもノートパソコンの前に座ってただゲームをして過ごす。


 なんで、冒険者になっちゃったんだろ?

 普通の方が良かった。

 冒険者になっていなければ病む事も叩かれる事も無かったかもしれない。

 今頃は大学で楽しくみんなと生活していたかもしれない。


 最初は冒険者になればみんなを助けられると思っていた。

 もちろん励ましのコメントもたくさん貰った。

 でもどうしても、批判をするコメントに目がいってしまう。


 冒険者、


 辞めようかな。


 ウツになった今なら、


 辞められる。


 治療をしても、ダンジョンに入っても、みんなを助けている実感が湧かない。

 まるで怒られる為に配信をしているように感じる。


 自由になりたい。


 そして大学で皆とおしゃべりをして普通の生活を送りたい。




 あとがき

 暗い話に見えますが章の終わりはハッピーエンド。

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