第24話

 東京ダンジョンで2日間トレーニングを重ね、1人でゴブリンを狩って過ごした。

 あかりは案件で忙しそうだった。

 予備試験の当日を迎えると会場に到着した。


 100人を超える予備試験のメンバーが決められたラインの内部に立ち、地面は小さなクレーターが無数にあり足場が悪い。

 周りには無数のカメラが配置され、更に斜め上からドローンが飛んでいた。


 会場の横に岩がありその上に女性が杖を持って立っていた。

 そしてその横には大きなモニターが置かれている。 

 画面の向こうには学園風のコスプレをした女性が大きな会場にいる観客席を盛り上げる。


『みなさああん! 元気でやってるう?』

『『元気元気いいいいいい!』』


『私が着ている衣装と同じ劇場アニメ化が決定したグリグリのコスプレをした皆さんがちらほら見受けられます。劇場版グリグリ、みんなも見にこうね!』


『更に更にいい、サプライズ、グリグリと、大人気ゲームエンゲージクエストが、何とコラボが決定でえす!』

『『わあああああああああ!』』


 ゲームの宣伝動画が流れる。


『更にい、エンゲージクエストが大大大好きな人気冒険者、朝光あかりちゃんも着ているエンジェルホワイトドレス装備ノーマルバージョン4の発売が決定しました!』


 今度はあかりの映像が流れる。

 あかりが普段着ている装備がノーマル装備か。

 ノーマル装備の他にエンゲージバージョン、敗北バージョンの3種類が発売されるらしい。


 特に敗北バージョンはタイツがダメージジーンズのように穴が開いておりあかりが敗北バージョンを着ている映像が流れると会場が盛り上がった。

 でも、敗北バージョンの装備を着ているあかりが恥ずかしそうにしている。


『冒険者の皆さん! 可愛くておしゃれなエンゲージクエストの装備をぜひ買ってくださいね。エンゲージ装備の販売は会場に表示されたQRコードのサイトから買う事が出来ます! そして敗北バージョンの装備でもしっかりと防御フィールドは機能します。第四弾の装備も今までと同じで期間限定となっています。売り切れる前に買っちゃいましょう!』


『お待ちかねのAランク昇格試験が始まります! そして今日も予備試験の試験官を務めてくれるのは、Aランク冒険者になりたての美人魔法使い! 霜月涼音シモツキスズネさんです! 涼音さん、願いします』


「予備試験を行う涼音よ、2つ名は氷結の涼音よ、よろしくね」


 大きな岩の上に立った涼音さんが凛とした雰囲気で俺達を見下ろす。

 だが試験を受ける冒険者が涼音さんを煽る。


「氷の女王様ああああ!」

「氷結の涼音よ」


「氷の女王様あ!」

「氷・結・の・涼・音」


 氷の女王様って呼ばれたくないんだろうな。


「スカートの中が見えた!」

「な! 見えていないはずよ!」


 涼音さんがスカートを押さえた。 


「もっとスカートの中を見せてくれ!」

「見せません!」


 涼音さん、意外と煽り耐性が無いな。 

 反応がいいためか煽る人が多い。

 しかもモニターの向こうはかなり盛り上がっている。


 涼音さんが言い返している隙に死角にいる冒険者が風魔法を使った。

 涼音さんのスカートがぶわっと舞い上がりパンツが見えた。


「ふぇ?」


 涼音さんが拳を握り締めて震えた。


「誰?」

「女王様! しっかり詳しく言わないと何が言いたいのか分かりません!」

「風魔法でスカートめくりをしたのは誰!?」


 1人の男が俺を指差した。


「ち、ちが! 俺じゃない!」

「ふ、ふふふふ」


 涼音さんが怖い笑顔を作った。


「確かに、誰かは分からないわね。でも、全員覚悟しなさい! 氷魔法でお仕置きしてあげるわ!」


 選手が更に煽った。


「氷の女王様のお仕置きだあ! カモーン!」

「はあ、はあ、女王様あ、氷の鞭をくださーい!!」

「氷の鞭なんてありません!」


「魔法を使うとパンツが見えるな!」

「名案だ! どんどん撃ってください! 氷の女王様!」

「見せません! もう見せないわ!」


『さあ、毎年恒例のマウントプロレス! 盛り上がってまいりました!』


 会場のお姉さんはセクハラ発言を笑いと勢いで無き者にしようとしている。

 俺はピーン来た。

 この配信のコメントをチェックする。


:予備試験の最終日はいつも涼音様のドMファンが集まる

:あいつら、あんなに煽って受かる気無いだろ

:予備試験最終日の難易度だけはベリーハード。特に今期はやばいだろ


:てかさ、予備試験の最終日にやっべえ奴を集めて他の予備試験をすんなり進める目的じゃないの?

:それもあるだろうね

:あ、氷の女王様が重を睨んだ

:あの見下ろす表情、好きだわ


 俺はコメントを見て急いで上を見上げた。


「ふ、ふふふ、舐められたものね。私が杖を掲げているというのにスマホで遊んでいるの? ねえ、天才高校生冒険者の岩田重君?」

「誤解です!」


「まさか重君まで私を挑発してくるとは思わなかったわ。とてもショックよ、君は真面目そうに見えていたのに」

「挑発してません!」


「でも試験開始の直前にスマホで遊んでいるなんて、私の話を聞いてた?」

「ち、違うんです!」


:氷の女王様が今までで1番女王様をしてる

:挑発トラップ簡単に乗ってしまう涼音が可愛すぎる

:流石重さん、変化球な挑発、素晴らしいです

:高度な挑発だな


「さて、始めましょう。合格の条件は私の魔法攻撃が終わるまでラインから出ず、立っている事よ。アイスブリザード!」


 上を見上げると水色の冷気が空を覆って雲を形成する。

 そして上から魔力を帯びた氷のつぶてが皆を狙って降り注いだ。 

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