第25話
降り注ぐアイスブリザードを見て思った。
余裕で避けられる。
だが周りを見ると被弾している人もいる。
「あああああああ! 女王様アアア!!」
「もっとだ! バッチ来い! おっふぉおおおお!」
「もう少しでパンツが見え、ぐっふぉ!」
やっぱり、問題無い。
余裕で回避できる。
この勝負、貰った!
その瞬間、殺気を感じた。
涼音さんが俺に杖を向けた。
「アイスショット!」
「ちょ! 何で俺だけ!」
氷のつぶてが俺を狙い連続で発射された。
その攻撃を何とか回避する!
「じゅ、重がこっちに来るぞ!」
「お、おい、こっちに来るな、ぐっふぉ!」
「みんな! 重から離れろ! 来るぞおおお!」
「おかし、おかしい!」
「黙りなさい! せっかく予備試験を免除されたのになんで受けてるの!? なんで弱い鉄の剣で試験に挑んでいるの!? 勝負は戦う前の準備から始まっているの! 真面目にやりなさい!」
「真面目にやってます!」
「スマホを見てたじゃない!」
「誤解です!」
上からはアイスブリザードが無差別にみんなを狙う。
そして斜め上からは氷のつぶてが俺だけを狙い続ける。
「おかし、うお! おかしいでしょ!」
「問題無いわ! 試験を盛り上げる為に重君は多少厳しめに攻撃していい事になっているの! 運営から言われているの!」
「これ多少ですか! がっつり集中攻撃、うお! あっぶね!」
「問題無いわ。私の攻撃如き、スマホを見ながらでも避けられるんでしょう!?」
「ちょ、ま! い、怒りの根っこは風魔法を使った人です!」
「パンツの事を蒸し返すのはやめなさいよ!」
:すげえ、全弾回避してる
:やっぱ風爆の伸が言った通り、基礎の化け物だな
:基礎のステップだけで全部躱すの凄すぎ!
:重は間違ったことを言ってないんだけど会話が噛み合ってない
:女王様が怒っている時は黙っている方が良いんだよなあ
:多分、氷の女王様も天才って言われているから、ライバル意識が元々あったんだろうな。同じ推薦を受けてAランクになったわけだし
:重の1歳上で歳も近い。重じゃない選手がスマホを見ていても目につかなかったんだろう
:でも、今回の試験は他の選手が意図的に重のヘイトを上げようとしてるように見える
:エースを潰しておきたい思惑があるのかな?
:ウケ狙いにも見える
:ウケ狙いっぽく見るようにした上で重を潰そうとしているように見えた
:どっちでもいいじゃん、今回も予備試験の最後は盛り上がってる
:クックック、予備試験はしょせん準備運動、雑魚を間引く目的に過ぎない
:その通りなんだよなあ。重が狙われすぎているのは確かだ、でもここで落ちるんなら出直した方が良い
:涼音ちゃん、重を攻撃しすぎじゃない?
:面白いからいいだろ
:そうじゃなくて、今回の予備試験はアイスブリザードを3回受けて立っているのが突破条件だよね?
:何を当たり前のことを
:いや、だから、涼音ちゃんの魔力が無くなって他の人の試験にならなくなっちゃうでしょ?
:あ!
:今回の予備試験はただでさえ合格者が多い
:予定では予備試験で試験を受ける選手を100人以下に減らす予定だった、でも今回はただでさえ合格者がすでに100人を超えてる
:今日も合格者が多い、これどうすんの? 予備試験で100人を切るまで間引く予定だったよね?
「はあ、はあ、魔力が、切れたわ」
:今日の予備試験は20人くらいしか倒れてない
:合計200人近くが予備試験に受かった
:だからどうすんの?
:今から発表があるんだろ?
モニターから観客の声が聞こえる。
『おいおい! 予備試験の突破者が多すぎる!』
『残り過ぎだろ! どうするんですか!?』
『はーい、静かにしてくださーい! 今日101名の挑戦者に対して71名が予備試験を突破しました。これまで予備試験を突破した合計人数が191名です。運営の計画では予備試験で人数を100人以下まで選別する予定でしたが倍近くの合格者が出ちゃいました。その事について運営の決定を読み上げますね!』
コスプレお姉さんが紙を取り出した。
『読み上げます! 審議の結果このまま本試験に移行した場合昇格試験の日程に大きな狂いが生じて予算が枯渇する可能性が高いと判断しました。よって明日191人合同で再度選別試験を行う、との事です。すっごく簡単に言うと、本試験の人が多くなっちゃうとお金がかかるので明日またテストをしちゃいまーす!』
『『わあああああああああ!』』
盛り上がってる。
思ったより好評なのか。
『明日の試験内容は当日のお楽しみです! 会場は変わらず同じ場所で行います。寝坊はメ! だぞ!』
こうして俺は明日の試験に挑む事となった。
【伸視点】
夜になり優斗と2人で話をする。
「やられた」
「何がだ? 重君は合格しただろう」
「そっちじゃない。明日は選手の休養日だった」
「……そういう事か」
「そ、明日の試験、重が受かっても連戦を強いられる。これは政府が仕掛けた消耗戦だ」
「お祭りの雰囲気を醸し出して押し通された、か」
Aランクへの昇格試験は子供も多く見ている。
そして政府としても将来の冒険者を育てる方針でもある。
昇格試験は子供が見ても分かるようなシンプルなルール作りにする事を運営も公言している。
それは厳格さを排除して薄っぺらくする事でもある。
よく見ればおかしい状況だ。
今日試験を受けたメンバー、特に集中攻撃を受けた重は不利だ。
だが『子供が分かるシンプルなルールにしている』それか『運営の都合上休養日を削らなければ予算が足りなくなる』で突っぱねられるだろう。
運営の脆弱性を逆手に取られた。
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