第10話
前に出てゴブリンを斬り倒していくと統制の取れたゴブリンが俺の死角に回り込んでくる。
俺は結局包囲されながら戦う事になった。
前にいるゴブリンを倒すと後ろにハイゴブリンがいた。
まずい!
ゴブリンより素早いハイゴブリンの剣を躱す為後ろに飛ぶが腕を浅く斬りつけられた。
そして飛んだ先にはゴブリンが待ち構えるように剣を構える。
「おりゃああ!」
斬られる前に剣で斬りつけてゴブリンを倒し、振り向きざまにハイゴブリンを斬り倒す。
だがその左右からゴブリンが一斉に迫り更に前後からもゴブリンが迫って来た。
ゴブリンキングに率いられたゴブリンは統率の取れた動きで明らかに強くなっていた。
バラバラではなくタイミングを合わせて一斉に全方向から襲い掛かって来る攻撃パターンに俺は全力で動くしかない状況に追い込まれた。
:これ、ヤバくね?
:重君が死んじゃう! 周りで見ている冒険者で助けに行って!
:冒険者が飛び込めば即死ぬ。無茶だ
:何で斬撃を使わないんだ!
:使わないんじゃない、使えないんだ。アレは消耗が激しい
:疲れれば押し切られて倒される、でも力を出さなければやられる
:今は微量のオーラを剣にまとわせて攻撃する事で省エネで戦っているけど状況は最悪だ
:ゴブリンキングの統制で動くゴブリン・傷が増えていく重・そして疲労、ゴブリンキングは重をなぶり殺しにする気か
:違う、重を確実に消耗させてここぞと思ったタイミングで飛び込んで来るだろう
:今重はいつ動くか分からないゴブリンキングにも気を配って更に消耗を早めている
:まずい、完全に包囲された!
「クイック!」
俺の体が光ると加速して一気にゴブリンを倒した。
「ふー! ふー! ふー! ふー!」
:クイックか、自分の時間を加速させる魔法だ! 大魔法じゃないけど習得が難しい
:おじいちゃんが得意だった魔法らしい
:だが、クイックを使う事は消耗する事とイコールだ
:重は追い詰められてクイックを使うしかなかったか
:そうだ
:稲田村にいる住民のスマホにアラートが鳴った、Aランクは来ないのか?
:距離的に間に合わないだろう。他のBランクも遠くにいる
後ろで見ていた冒険者の男が叫んだ。
「俺達で攻撃を仕掛けて援護しようぜ!」
「そうだ、少しでも重の負担を和らげる!」
「重! 俺達が攻撃を仕掛けたタイミングで逃げるぞ!」
「来るな! 死ぬぞ!」
「その前にお前が死んじまう!」
「まだいける!」
俺は剣を振って連続でゴブリンを倒した後棒立ちになった。
俺を包囲していたゴブリン達がにやりと笑った。
:重の脚が止まった!
:重の顔を見てみろ、さっきより痩せてないか?
:それはそうだろう、普通の人間ならあり得ないほどのカロリーを消耗しているんだ
:棒立ちはまずいだろ!
:重、逃げろ!
:重君、逃げて!
:あの包囲じゃ逃げられない
ゴブリンが一斉に飛び掛かって来た。
俺はその場からなるべく移動することなく最低限の踏み込みだけで剣を振った。
飛び掛かったゴブリンが一瞬で魔石に変わる。
倒しても次のゴブリンが斬りかかって来るがそれも魔石に変えた。
:カウンタースタイルか!
:無駄な動きが無くなった!
:走り回っていた時よりもゴブリンを倒すペースが上がっている!
:進化している! 重がこの闘いで進化しているんだ!
少しだけ、剣の振り方を掴んだ。
少しだけ、剣を振るゴブリンの動きが分かるようになった。
そのわずかな差が大きな成果に変わっていく。
「重君、ジャンプして!」
あかりさんの声がした。
俺はその声を聞いてジャンプし、更にハイゴブリンの頭を蹴って更に高く跳ねた。
あかりさんのビームが横なぎに放たれゴブリンをなぎ倒すように魔石に変えていった。
「こっちに走って!」
あかりさんの後ろに走ると右から左になぎ倒すようにビームが放たれた。
あかりさんの顔を一瞬見た。
あかりさんの体調が悪い。
無理をしてビームを撃っている事が分かった。
「ありがとうございます! もう大丈夫です!」
:大丈夫じゃないだろ
:へろへろな状態でゴブリンキングだけじゃなくハイゴブリンも残っている。
「もう一回!」
あかりさんが3発目のビームを放ち雑魚のほとんどを倒した。
更に俺に杖を向ける。
傷が回復していく。
あかりさんの回復が弱弱しい。
絞り出すように魔力を消費している。
もう、今の威力でビームは撃てないだろう。
回復もすぐに切れる。
僅か数秒ほどの休息、その時間で俺は息を整えた。
ゴブリンキングが剣を構えた。
残ったハイゴブリン4体も剣を構えた。
俺も前に出て剣を構える。
後5体を倒せば終わりだ!
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